各研究分野

成熟型社会に対応した土地利用制限・用途規制のあり方

 都市における人口・産業動向の変化や既成市街地の成熟への対応や、集約型都市の形成という政策課題を支援するため、市街地の拡大局面における用途・形態の純化を基本とする市街地を実現するための立地規制から、市街地の成熟・縮退局面において市街地内での用途・形態の一定の混在を認めた計画・規制への見直しが必要だと考えており、これを支援するための研究に取り組んでいます。都市の活力と暮らしやすい生活環境の両立という問題に対して、土地利用制限や建築用途規制の合理的運用等に係わる研究を行っています。

市街地環境に配慮した用途規制の合理化に向けた技術開発

 わが国では、あるべき市街地像の実現のため都市計画に定められた用途地域毎に建物用途規制(用途地域における建築禁止用途に加え、一定の用途に対する原動機の出力基準や面積基準等)が運用されています。しかし、用途地域によっては、地域活性化等に寄与し得る建築物であっても、建物用途規制に適合せず、立地(新築、増築、用途変更)を断念するケースも見受けられます。

 本研究では、地域の状況に応じて禁止用途の立地を認める緩和手法や特例許可の制度(都市計画法:特別用途地区、地区計画、建築基準法:法第48条ただし書許可、…等)の運用円滑化のため、市街地環境に配慮した用途規制の合理化について検討を行い、①平成30年6月改正建築基準法で導入された法第48条ただし書許可に係る手続の合理化(建築審査会同意の不要化)の基準原案の作成、②地方公共団体及び申請者双方に向けた建物用途規制緩和手法の運用実態に関する解説書の刊行、等を行いました。

新技術・新産業の立地評定技術の開発

 市街地における産業用途の立地規制は、都市計画法と建築基準法の用途地域制度がベースとなっており、特に工場に該当するものづくり産業については、使用する機器の原動機の出力や貯蔵する危険物の量等によって、一律的な規定で規制がされており、技術革新が必ずしも反映されていません。建築基準法のただし書に基づく例外許可も、新技術や新産業を対象とするには地方公共団体に高度な技術的知見が必要となり、一部の特別な用途を除きほとんど行われていません。このため、多種多様な新技術・新産業の出現に対して、都市環境確保と両立させる適切な措置をとらせつつ、コンパクト化する市街地の中における立地を円滑に受け容れていくための、行政審査における技術的方途(立地評定技術)を確立するための研究を実施しました。

都市計画・まちづくりの性能基準化に関する研究

 新技術や新業態が次々と誕生する現代において、都市計画は時代の変化への対応と環境の保持のスマートなバランスを求められています。その中で、用途地域制度は行政による都市環境の管理の基本をなす制度ですが、必ずしもフレキシブルな対応ができていません。そのため、都市の活力と暮らしやすい生活環境の両立という問題に対して、行政が行う技術的審査を発展させる方向での研究を行いました。例えば、「用途の条件付き許可:判定チェックシート(案)」を公表しています。

北米のゾーニングにおける特例的許可制度に関する研究

 日本と同様のゾーニングによる土地利用規制を採用している、米国とカナダの諸都市における特例的許可制度について、科研費補助金等を受けて現地での実態調査を行いました。ここではその内容について、都市計画学会学術講演会で発表したスライドを紹介いたします(論文中の見解は研究者個人のもので所属組織を代表したものではありません)。