

What’s Fleld Sign ?
野外での野生動物の痕跡をフィールドサインといいます。ここで哺乳類のものを少し紹介します。
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糞 ‐ふん‐
大きさ、形、量、臭い、質感、見つけた場所、足跡などの他のクルーを使って総合的に糞の主を判断します。糞のあった場所の分布や数から、生息地利用の状況や個体数を推定するときもあります。また、糞そのものを調べることで、食べたものの他、性ホルモンのレベルから繁殖状態、 核内DNA が抽出できれば性別や血縁関係等も分かることがあります。
その他
けもの道、カモシカなどの角研ぎ跡、雪上の尿、クマ剥ぎ、寝た跡、掘った跡、新築に伴い捨てられたリスの古巣など、野生動物の生活の証がフィールドサインといえます。また、野外でそれらを見つける感性と、そこから何が分かるのか思いつく想像性を養うのにもフィールドサインは適しています。
食痕 ‐しょくこん‐
シカやカモシカやノウサギが枝を食べた跡やリスが落とした松の実の残骸やクルミの殻なども大切な情報になります。何を食べているかは勿論、場合によっては個体数の増減を知る手がかりにもなります。枝の食痕直径から食べた量を推定することもできます。
足跡 ‐あしあと‐
雪上トラッキングができるところでは、足跡は貴重なデータをくれます。また、泥の上や砂地にも足跡は見られますし、泥足でコンクリート上を歩いた跡も見かけます。変わったところでは、アスファルト上に濡れた足で歩いたタヌキの足跡を見たことがありますが、数分後には消えました。その主が走っているのか歩いているのか、行った方向や、重なっていればどっちが先に行ったかなと観ながら、色々想像して楽しいものです。
におい
マニアックなフィールドサインです。テンの匂いがした時見上げると木を駆け上がる姿を目撃したり、匂いがしたところに自動撮影装置を設置したら数日後に写真が撮れたことがあります。テンの匂いって?と聞かれると説明が難しいのですが、「スカンクのおならを一万倍薄めた」ようなものです(余計に分からないかも)。シカやイノシシの ヌタ湯では、酸っぱい汗のような匂いがする時があります。また、死体発見にも、鼻は有効です。
音 ‐おと‐
鳥に比べて哺乳類の声を聞くことは余りありませんが、発情期の雄シカの声は、風情ばかりでなくおよその成獣雄頭数などのデータも与えてくれます。リスが樹上でクルミを食べる音や、タヌキが藪を歩く足音、耳を澄ませば野外は生き物の音がいっぱいです。
毛 ‐け‐
有刺鉄線や枝に引っかかっているものや、シカなど換毛期や雄同士の戦いでどっさり落ちているときがあります。顕微鏡で見れば落とし主の種類が分かります。勿論、DNA採取にも使えるので、研究者にとっては貴重な「落とし物」です。北米ではオオヤマネコの毛を採取するとき、マタタビを使ってブラシ状のものにスリスリさせるとか。なんか可愛いですね。

核内DNAとは
細胞核の染色体に局在するデオキシリボ核酸のこと。対してミトコンドリアDNAは、核内DNAとは異なる固有のDNAで、母系にのみ遺伝する。
ヌタ湯とは
シカやイノシシが泥浴びをする場所。体外寄生虫を落とすことができる。
カモシカの角研ぎ跡:
写真提供 高柳敦氏

クマ剝ぎ:
写真提供 高柳敦氏
