2.人工リーフと傾斜堤に関する平成13年全国実態調査
(1) 目的
2000年に改正海岸法が施行され、「防護・環境・利用の調和」が海岸保全の目的となり、海岸保全施設の整備に当たっては、従来以上に環境や利用への配慮が重要となりました。
海岸保全施設に対する環境・利用上の主な批判として、離岸堤による景観悪化や、直立堤や消波工による海浜へのアクセス阻害が指摘されており、その対応として主に前者について人工リーフが、後者について緩傾斜堤(護岸含む)が設置もしくは計画されています。
一方、人工リーフや緩傾斜堤は、設計法が確立してからまだ20年あまりしか経過しておらず、施工実績を積み重ねていく中で被災事例や設計法の適応範囲について議論となることがあります。さらに、土木構造物の客観性を高め一層合理的な計画・設計のために技術基準に性能規定化が指向されている現状において、人工リーフや緩傾斜堤の性能を明確にすることが必要です。
そこで、研究、基準改正、造物開発の方向性を探るために、平成13年度に、国土交通省河川局海岸室は、河川局所管海岸事業において過去5年以内に完了もしくは実施中の人工リーフ、傾斜堤を対象とした全国アンケートを実施し、人工リーフ130件、傾斜堤138件の諸元を収集しました。
(2) アンケート結果
1) 人工リーフ
 人工リーフの諸元定義 |
 人工リーフの対象沖波波高 |
 人工リーフの対象波形勾配 |
 人工リーフの天端水深 |
 人工リーフの設置位置と砕波点 |
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人工リーフの形状
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人工リーフの天端被覆材料
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人工リーフの設置基数
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2) 傾斜堤
傾斜堤の採用理由
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傾斜堤の表のり勾配
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傾斜堤の表のり形式
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傾斜堤の法先標高
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(3) まとめ
アンケート結果をまとめ、以下のようなことがわかりました。
1)人工リーフは、換算沖波波高7m、波形勾配0.02〜0.04で砕波帯の内側に天端水深1〜2m、台形形状で天端がブロックにより被覆された連続堤として設置されていることが多い。
2)人工リーフの消波機能は、設置位置からすると砕波後に天端上を波が通過する時に生じるエネルギー逸散による効果が高い。
3)人工リーフにおいて環境との調和を推進する上で重要となる石材や既設消波ブロックの活用や効率化のための断面の改良が進んでいない。
4)傾斜堤は表のり勾配3割の階段形式が多く、近年完成もしくは進行中のもののほとんどがアクセス性を目的としている。
5)緩傾斜堤防ののり先が汀線付近となっていることが少なくない。緩傾斜堤の設置にあたっては、「利用」とともに「環境」へ配慮が重要であり、特に設置後の砂浜幅に留意する必要がある。
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