9.海岸堤防マネジメントシステム
1)背景
2005年8月に発生したハリケーンカトリーナの高潮災害を受けて,国土交通省が設置した「ゼロメートル地帯の高潮対策検討会」の提言において、推進すべき施策として、関係機関が共同で危機管理計画をとりまとめるとともに、被害形態を推定し対策のコスト、実現可能性、事業スピード等を時間軸に照らして検証し、大規模浸水を想定した被害最小化対策を行っていくことを挙げています。
またあわせて、我が国の海岸保全施設の多くは築造から40年程度経過し、今後老朽化した施設の機能低下が危惧されており早急な対応が望まれます。
現在の高潮防護の水準や将来の自然災害の傾向等を考えれば、今後の高潮対策は、これまでの高潮計画に沿って堤防整備等のハード対策により浸水防止に万全の対策を講じることに最も重点を置くものの、不測の事態に備えたリスクマネジメント対応のセーフティネットとして施設現状を想定した被害最小化対策を講じることが不可欠であると考えます。そのためには上記のような問題点等を考慮し、施設現状を適切に把握するとともに老朽化に対応した維持管理を行うことで既存施設を効率的に使用していくことが重要となると考えました(=アセットマネジメント)。
アセットマネジメントを行っていく上で、構造物の生涯費用ともいえるライフサイクルコスト(LCC)を検討し、維持管理の最適化を目指すライフサイクルマネジメント(LCM)を行っていく必要があります。
これらの問題を解決し適切な海岸管理に資するためのツール開発を目指し、海岸堤防マネジメントシステムを構築しました。

システム構成
2)機能
施設点検結果をデータベースに入力し,施設の老朽化及び沈下等の機能低下の程度を取入れ、システム上で検索することができ、これにより優先整備箇所を抽出できます。また機能低下の程度が大きい箇所に高潮が来襲した場合のレベル湛水法による浸水計算、被害額算定機能も構築しており表示を行うことができます。また、試みに波浪や海底地盤変動に対する堤防の耐力算定が出来るツールと連動できるようにしています。

施設状況抽出イメージ

操作画面

LCM点検結果入力画面

浸水計算結果画面

浸水域表示
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