長持ち住宅の選び方

本ウェブサイトは、国土交通省 国土技術政策総合研究所の主催による産学官連携の共同研究の成果の一部です。

省エネと結露

省エネルギー性を高め、結露や躯体の劣化を未然に防ぎ、快適性を向上させる方法は?

省エネルギーだけではなく、結露や躯体の劣化を未然に防ぎ、快適に暮らすためには、高気密、高断熱が必要です。

開口部(窓、ドアなど)の断熱性の確保

住まいを高断熱にするためには、外皮(床、外壁、天井、屋根など)の断熱性能を良くするだけではなく、特に開口部の断熱性能を高めることが重要となります。日本の開口部の多くは、アルミが使用されていますが、熱を伝えやすい材質となっています。また、ガラス部分の断熱性も重要となります。

熱伝導率(λ)の測定例(値が小さいほど、熱を伝えにくい)
アルミニウム合金:200W/mK → アルミサッシ
PVC(塩化ビニル):0.17W/mK → 樹脂サッシ
ヒノキ、スギなど:0.12W/mK → 木製サッシ
※アルミと樹脂の複合サッシもあります。 
フロートガラス:1W/mK
複層ガラスやトリプルガラスの間にアルゴンガス等を充填させて、熱伝導率を低く抑えていることがあります。
空気(0℃):0.0241W/mK
アルゴンガス:0.0164W/mK

窓全体の断熱性能は、熱貫流率(Uw値)で把握することが出来ます。

参考

住宅全体の断熱性

住宅全体の断熱性能は、外皮平均熱貫流率(UA値)で把握することが出来ます。しかし、この値は計算値であり、施工時に隙間が多いと所定の断熱性能を発揮することが困難となり、結露の要因ともなり得ます。施工状態も確認して下さい。

気密・換気・通気の役割

「高気密」と聞くと、息苦しく耐久性が低くなると思われる方がいらっしゃいますが、「気密」、「通気」、「換気」は何れも重要な役割を担い、並行して機能する必要があり、何れかが欠けても住宅の耐久性に影響を及ぼすことが考えられます。「気密」は室内の水蒸気を換気部分以外の屋外側の外皮へ侵入させないようにして内部結露を防ぎ、躯体や下地材などの劣化を未然に防ぐ役割を担っています。

一方、「換気」は換気口から屋外の空気を床下、室内、小屋裏などへ取り入れたり、排出させたりするものです。

「通気」は通気層により壁内や屋根内などの湿気を排出したり、雨水の浸入を防止したりする役割があります。従って、換気が十分であれば、高気密の住宅であっても息苦しくなりませんし、住宅の耐久性を確保するために必要となります。気密性は、建設時や建設後、気密測定機を設置して、相当隙間面積(C値)を実測し、床面積1㎡当たりの隙間(㎠/㎡)により把握することが可能となります。C値は、小さい値ほど、気密性能が高くなります。しかし、気密性を計測する住宅会社は少ないのが現状です。気密性が高い場合、室内が計画通り換気され、カビや結露の原因となりやすいよどみを防ぐことも可能となります。高気密、高断熱は、施工時に隙間無く住宅全体をすっぽりと包み込むようにして、はじめて実現します。

■熱交換換気システム

夏季や冬季は室内を暖房や冷房などで空調しますが、外気をそのまま給気する換気システムでは、冬に寒く感じたり、空調に用いられたエネルギーが損なわれたりします。熱交換換気システムでは、室内に取り入れる空気と屋外へ排出する空気の熱を交換することにより、換気による冷暖房エネルギーの損失を少なくするものです。

■夏型結露

夏型結露は、室内をエアコンで冷房した際、夏季に水分を大量に含んだ屋外空気が温度の低い床下で水滴になる現象や、雨などにより水分を含んだ外装材が日射で焙られ水分を放出し外壁内で水滴となる現象です。

上記について検討し、適切に設計・施工することにより、以下の効果が考えられます

①人に優しい

冬季において、全館の温度環境を快適にすることにより、脱衣所・浴室などのヒートショックによる死亡事故が減少します。
(2011年、ヒートショックによる死亡者数は約17,000名、交通事故の死亡者数は4,611名であり、約3.7倍の死亡者数となります)
夏季、熱中症患者の発生は住宅内が最も多い(図1-8)ので、特に高齢者は,積極的なエアコンの使用が必要です。(省エネのためには、断熱性能を高くする必要)結露を防ぐことによりカビダニ腐朽菌の増加を抑制することが出来ます。

②家計に優しい

外壁の室内側へ気密シートなどを施すことにより、室内の湿気が壁内などへ流入するのを防ぎ、屋外側へ通気層を設けることにより、壁内の湿気が通気層へ排出されることが可能となり、結露のリスクを低減させることが出来ます。(天井・床下なども防湿が必要)
結露を原因とした木材の腐朽シロアリの被害や住宅の補修・改修費用を抑制できます。
また、断熱性能を高めることにより冷暖房費が抑制されます。
熱交換換気システムを設置した場合は、夏や冬など換気する際に奪われる熱を回収することが可能となります。設備投資の費用が増えますが、その後の冷暖房費は少なくなります。

③地球に優しい

省エネルギーにより地球の地下資源の減少の抑制へ対応できます。

  • 世界のエネルギー消費量の急増への対応
  • 化石燃料エネルギー資源の枯渇への対応

具体的な対策

①外皮(外壁,屋根など)に通気層を設けましょう。

壁内に通気層を設けることにより、壁内に流入した湿気や雨水を排出させることも可能になります。(夏季,外装からの日射熱を排出させる効果もあります)

サイディングなどの乾式外壁は、ほとんど通気構法が採用されています。

モルタルなどの湿式外壁は、直張り構法が多いですが、通気構法もありますので、通気構法も検討しましょう。
→ モルタル外壁通気構法の技術資料(参考資料)

防水対策としても効果があります。

②室内側に防湿層を設けましょう。

室内の湿った空気が壁内、床下、小屋裏へ流入すると、結露の要因となることがあります。

防湿層を設けることにより、室内で発生した水蒸気の壁内への流入量を抑制させることが可能となり、内部結露が発生しにくくなります。特に寒冷地で透湿抵抗の低い断熱材を使用する場合は、断熱材と一体となっていない別張りとなる防湿シートを設置することが推奨されます。

断熱気密の施工の基本は、外壁、天井、床下などを隙間なく連続して住宅全体を包むことです。誤った施工方法も見受けられますので、適切な断熱気密の施工方法は、こちらで確認しましょう。

気密性は、隙間相当面積(C値)の実測により把握することができ、低いほど気密性が高くなります。建設会社によっては、気密性(C値)に対する保証制度などがある場合があります。気密性の高低に関わらず、原則として居室には機械換気設備の設置やそれによる換気回数が法令により規定されていますので、高気密住宅であっても、室内の空気は清浄となり得ます。(24時間換気システムの電源は、切らないようにしましょう)気密性が低い場合、室内の換気が適切にコントロール出来ない場合があります。

不適切な例

③室内の温湿度環境を制御できるよう、適切な暖房機器などを選択しましょう。

厚生労働省の資料によると、空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなるので、適切な湿度(50~60%)を保つことが、予防上効果的なようです。

一方、室内の相対湿度が高すぎますと、住宅内の結露やカビの発生リスクが高くなります。

石油およびガスファンヒーター等(FF式を除く)の開放型暖房器具は、燃焼に伴って多量の排気ガス水蒸気を発生しますので、頻繁に換気が必要となります。因みに灯油1Lを燃焼させると、1.13kgの水蒸気が放出されるようです。

電気を使用するエアコンや床暖房機器は、一般的に水蒸気を発生させません。室内の温度、相対湿度、空気環境が適切となり、かつ、省エネルギー性が高くなるよう暖房機器の選択に注意しましょう。

結露が発生しやすい部屋は、温湿度計を設置し、外壁の内装が濡れていないかチェックしましょう。住まい方はこちらの79P~を参考として下さい。(住宅省エネルギー技術施工技術者講習テキスト)

暖房の範囲や時間を検討しましょう。

従来、日本の冬は、火鉢やこたつなどを囲んで、暖を採っていました。断熱性が低く、隙間だらけの住宅だったので、部屋全体を暖めることは困難であり、暖房面は暖かいが背中が寒く、我慢した生活でした。また、トイレ、脱衣室、浴室も寒く、ヒートショックも発生しやすい状態でした。

結露は、空気に含まれている水蒸気が露点以下の冷たい部分に触れて液水になる現象ですので、暖房している部屋の空気が暖房していない部屋へ移動し、露点温度より低く冷えたガラスなどに触れて結露が生じることがあります。また、断熱性能が低い住宅の場合、夜間など暖房を切ることにより、内装や壁内などの温度が外気の影響により下がり、露点温度以下に達して結露を生じることもあります。

このように部分間欠では、地域によっては結露が発生しやすい状況になることがあります。高気密・高断熱により、省エネルギー性を高め、住宅全体の温度差を時間的にも場所的にも少なくし、結露・カビ・ダニ・ ヒートショックなどの発生を防ぐことが重要となります。

外皮平均熱貫流率(UA)が低いものほど、住宅全体の断熱性が高くなります。各社の住宅の断熱性を比較する際は、UAで比較するのが有効です。断熱性を高めるには、断熱材だけではなく、開口部(窓やドア)の性能を高めることが重要となります。

⑤窓の配置や大きさなどに配慮しましょう。

春や秋など、屋外と室内の温湿度環境を比較して、屋外の環境の方が快適な季節や時間帯は、エアコンで温湿度を調整するよりも窓を開放した方が効率的で電気代も必要としません。室内の風通しが良くなるよう、窓の配置や大きさ、内部建具などに配慮しましょう。

⑥夏季の日差しについて検討しましょう。

深いけらばの出(外壁より屋根が突き出している長さ)、バルコニー、庇がある場合、太陽高度の高い夏の日射を避けることが可能となります。(防水上も著しい効果があります)

冬は太陽高度が低いので、これらにより日射が遮られることは少ないと思われます。オーニング、シェード、カーテン、すだれ、よしず、窓用フィルム、グリーンカーテンなども効果があります。

なお、冷房期(夏季)の平均日射熱取得率(ηA値、イーターエー)とは、建物の冷房期における日射熱の入りやすさをあらわすもので、ηA値が小さいほど、日射熱が遮蔽でき、冷房効率が高くなります。

【壁内の不具合事例】

壁内に水分が浸入して劣化した直張り構法の耐力壁。構造用合板、防水紙が劣化により剥がれ落ち、錆びた平ラスやモルタルが露出している。