プロジェクト

郊外市街地における移動環境の向上に関する実験・検証

背景と課題

 全国の各都市において持続可能で低炭素の交通、地域社会の実現を推進している一方で、地方部の鉄道駅周辺の中心市街地等から離れた郊外市街地においては、路線バスの減便等、従来型の交通システム課題が深刻化しつつあります。高齢化が進む地域も多く、生活に身近な移動を支えるモビリティサービスを如何に維持・充実していくかが、課題となっています。

 こうした中、近年は少量で短距離輸送に適した中小型の電動低速モビリティ「グリーンスローモビリティ」等の新たなモビリティが広く展開・普及しつつあります。「サービス面で柔軟で安全な運行が可能なこと」、「環境にやさしく、まち・人に開かれたコミュニケーション装置」としてのメリットも相まって、トランスポーテーションギャップを埋め、身近な移動(ラストワンマイル等)を支える楽しい移動手段として、地域課題解決の可能性が広がっています。

身近な移動サービスに関する調査研究

 国総研都市施設研究室では、従来の公共交通ネットワークを補完する身近な移動サービスの充実による豊かで持続可能な環境都市の形成に資するため、公道を「①時速20km未満」で走ることができる「②電動車を利用」した「③小さな移動サービス」であるグリーンスローモビリティ(愛着を持って「グリスロ」とも呼ばれます。)を活用した都市内移動環境の向上に関する研究に取り組んでいます。

 実証運行の地元支援及び調査研究の実績として、神奈川県綾瀬市綾西地区における住民移動サービス「綾西くるりん号」(綾西みんなの足、2020年)、埼玉県日高市こま武蔵台団地における新たな住民移動サービスの提供(2021年)、茨城県つくば市小田地域における観光ガイドツアーの移動サービスの提供(2024年、2025年)等があります。

 2025年7月より、より多くの方々にグリスロの魅力を知っていただくため「グリスロカード」の作成・配布を行っています。


グリーンスローモビリティを活用したマイクロツーリズム

 郊外市街地においては、山河や植生など特有の自然景観、代々守り語り継がれてきた大小の歴史資源、人々の営みの中で形成されてきた文化やコミュニティなど、新旧の様々な魅力を備えた地域資源が存在します。

 また、コロナ禍を契機に、自宅からアクセスし易い近隣地域で小さな旅をする「マイクロツーリズム」が注目されています。

 当研究室では、グリスロを導入することで徒歩移動等の負担を軽減するとともに、ゆっくり移動する(オープンエアな車両も)グリスロの特性を活かして、見過ごされがちな小さな地域魅力の再発見や、まちや人々との交流促進など、移動体験そのものの質を向上することで、多くの方々が気軽にマイクロツーリズムを楽しめる環境を構築するための実証的な調査・研究に取り組んでいます。

 近年の取り組みとしては、茨城県つくば市の「筑波山麓秋祭り」で、小田地域における観光ガイドツアー「小田歴史探訪」におけるグリスロ導入への地元協力、地域活性化方策としての効果検証調査への技術支援を行っています。

地域魅力発信と連携した車両ロケーションシステムの導入検証

 現地フィールド(茨城県つくば市小田地域)を対象に、グリスロ車両ロケーションシステムを試験運用しています。Webデジタルマップ上で、車両のリアルタイムでの位置情報や運行ルート情報を把握できると同時に、地域資源、フォトスポット等の魅力情報等を発信することで、来訪者への情報発信や地元運行管理のためのツールとしての有効性を探っています。

 試行版は、以下のページからご覧いただけます(2025年10月~)

 ※現在、運行期間外のためデジタルマップのみの閲覧になります。