各研究分野

これまでの研究

1.地方都市再生に向けたLRT活用方策に関する研究

研究期間 平成18~20年度

 地球環境問題への対応、高齢者のモビリティー確保の観点から、欧州において導入が進んでいるLRTが注目を集めており、日本でも導入に向けた検討が進んでいる。このうち、本研究においては、ドイツ等において既存の鉄道とLRTとの直通運転を行う手法に着目し、日本の地方都市を対象として、既存の鉄軌道ストック術、ハードウェア技術開発の方向性を検討することにより、既存公共交通機関の利便性向上、都市交通モビリティー向上を踏まえた地方都市の中心市街地活性化などの都市再生に資することを目的とする。

2.都市整備事業に対するベンチマーク手法適用方策に関する研究

研究期間 平成19~21年度

 アングロサクソン諸国を中心に、ニュー・パブリック・マネジメントが普及し、行政の業務改善に効果を上げている。本研究においては、都市整備事業を対象として、ニュー・パブリック・マネジメントの中核技術であるベンチマーク手法の適用を図るため、地区特性や課題の定量的分析手法の検討、成功・失敗事例の要因分析ツールの開発や事業地区間の比較を容易にするベンチマーク指標の選定などを行い、それらを体系化して、都市整備事業ベンチマーク手法としてとりまとめることを目的とする。

3.総合的なまちづくり事業制度の評価・改善に関する研究

研究期間 平成20~21年度

 平成16年度に創設された「まちづくり交付金事業」では、事業を実施する市町村が自ら目標及びそれを測定するための指針を設定し、事前・事後の事業評価を行うことが義務づけられている。平成20年度には本制度の政策レビューが実施され、平成21年度より国として特に推進すべき施策について支援が拡充された。対象施策の一つである中心市街地活性化は、多くの市町村で取り組まれてきた課題であるが、事業による目標達成のシナリオの明確化について課題が残されている。

 本研究の目的は、中心市街地活性化に関するいくつかの典型的なロジックモデル(事業から目標達成までのプロセスを明らかにする要因関係図及び目標を測定するための評価指標)を検討して、事前に市町村に提示することによって、目標達成に有効な施策が実施されるよう、市町村を支援する仕組みを提案することである。

 平成20年度は、評価の対象とする政策目標の体系化、目標別ロジックモデルの検討を行い、第一期事業地区で評価を試行した。

 平成21年度は、平成20年度までに終了した中心市街地活性化の取り組み実績がある全地区の事業計画を分析し、典型的なロジックモデルを検討した上で、一部の評価指標について実績値を収集した。

4.PT調査の改善と活用方策のあり方に関する研究

研究期間 平成20~23年度

 近年、人口減少等の社会経済環境の変化を背景に、都市政策・都市整備施策においては、集約型都市構造を実現するための施策郡を比較・評価して都市交通計画・都市計画に組み込むための政策検討に活用できるツールが求められている。また、PDCAサイクルに基づく都市交通施策の推進に資するモニタリング手法の開発等も求められている。そこで本研究は、人の動きを把握することにより、将来需要予測を行い都市圏交通計画の立案に利用されてきたパーソントリップ調査について、これら新たなニーズにも応えうる改善と活用方策のあり方を検討することを目的とする。

5.都市におけるエネルギー需要・供給者間の連携と温室効果ガス排出量取引に関する研究

研究期間 平成21~23年度

 京都議定書目標達成計画では、エネルギーの効率的な利用について都市政策での対応として「街区レベルや地区レベルでの面的な対策を導入することにより低炭素が他都市の構築を推進する」ことが求められている。しかし、主体が明確な個人による建物レベルの取組は進展しているが、複数主体が関与する街区レベルの取組については、未だ十分に進展していない。

 このため都市施設研究室では、土地利用密度の高い都市中心部の業務地区を対象として、街区単位で都市機能更新と併せてエネルギー構造改善を実施する方策について、技術的な要件や複数主体の合意形成手続き等の課題を踏まえた研究を実施する。最終的には、地方自治体等が活用可能な街区レベルのエネルギー構造改善方策の指針を作成することを目指している。(プロジェクト研究の一部)

6.総合的なまちづくり事業制度の評価・改善に関する研究

研究期間 平成22~23年度

 平成22年度に創設された「社会資本整備総合交付金」は、旧まちづくり交付金と比べて事業実施主体や事業範囲、計画区域の設定等が異なっている。しかし、事業の実施にあたって、明確な目標の設定、適切な事業の選定、指標の適切な選定がされた計画づくりが必要とされ、そのため事前の計画書作成段階の検討内容が重要であることに変わりは無い。そこで本研究は、都市施設研究室が平成16年度のまちづくり交付金創設時より蓄積してきた都市再生整備計画書作成に関する知見を活かして、社会資本総合整備計画策定における課題を整理・分析し、自治体が行う計画作りと、計画を受領・審査する側の国の、双方にとって役に立つ知見を得ることを目的としている。

 平成22年度には、旧まちづくり交付金の後継である都市再生整備計画を主体とした社会資本総合整備計画策定における「(仮称)シナリオ作成の手引き(案)」を作成した。ただし、検証事例は旧まちづくり交付金事業地区に限定したものである。

 平成23年度には、旧まちづくり交付金(完了地区)の都市再生整備計画と、社会資本総合整備計画(市街地整備系)について、事業の計画手法は異なるが同様の目標、指標を設定している計画を抽出し、代表的な事例を調査し比較することによって、計画手法別の目標、指標、事業の関連性に関する相違点を把握した。

7.街路ネットワーク解析による賑わい歩行ルート診断手法に関する研究

 国土交通省では、地方都市の中心市街地における賑わい創出を推進しており、全国各地で都市再生整備計画等を用いて賑わい創出を目標とした計画が実施されている。

 このため当室では、都市再生整備計画において歩行者数の増大という目標(指標値)を設定した地区を事後的に調査した結果、エリア内歩行実態の把握・分析が不十分な状況が見られた。そこで、エリア内に来街した者を、特定の賑わい歩行ルートによる回遊行動に導き、当該ルートの賑わい(歩行者密度)と歩行者の立ち寄り歩行延長の増大を目標とする場合について、有効な歩行ルートの選定と改善策を検討する体系的な診断手法の検討に取り組んでいる。

8.アクセシビリティ指標による都市の公共交通利便性評価手法の開発

 国土交通省では、薄く広がる傾向を持つ自動車依存型の都市構造を、公共交通指向型へと転換し、集約型の都市構造を実現することを目指している。

 このため当室では、居住地および集客系施設の立地について、自動車と、それ以外の交通手段(公共交通、自転車、徒歩)によるアクセシビリティ(到達容易性)を対比的に評価することによって、望ましい公共交通指向型の都市構造に対する現状の姿を把握し、過度な自動車依存傾向を是正するための施策を評価する手法の検討に取り組んでいる。

9.都市交通調査におけるICTの活用に関する研究

 都市交通調査については、幅広い施策分析への利用促進や調査コスト縮減を含めた調査の効率化が求められているとともに、個人情報保護意識の高まりや調査回収率の低下、調査実施上の課題への対応が必要となっている。一方で、携帯電話等の利用拡大の結果、ICTを活用した人の移動に関する情報の取得・保有が、民間等の事業者を中心に進んでおり、その適切な取り扱いや利活用が求められている状況である。

 このため、当室では都市交通調査の高度化・効率化に向けて、ICTを活用して、従来の調査を補完・代替する手法の開発に取り組んでおり、特に都市交通調査の代表的な調査のひとつであるパーソントリップ調査について、携帯電話等を用いて民間事業者が保有しているデータ(ICTデータ)により、高度化・効率化するための研究を行っている。

10.WEBインターフェースを用いたパーソントリップ調査票の開発

 WEBインターフェースを用いた調査票は既に一部の調査においては実施されてきたが、質問紙と同様な画面を表示しているものが多く、記入の煩雑さが十分に解消されていなかった。そこで、国総研ではWEBの長所を活かしつつ、高齢者等のPC操作に不慣れな回答者も容易に入力が可能で過去の行動を想起しやすい調査票入力WEBインターフェースを開発した。このインターフェースの大きな特徴としては、滞在地の情報を所在地の文字入力のみならず地図上の指定も可能であること、入力内容の矛盾や入力漏れに対して随時メッセージを表示されることが挙げられる。