都市緑化樹木のCO2固定量の算出

樹木は、光合成によって吸収した大気中の二酸化炭素(CO2)を体内にセルロースの形で固定することで大きく成長します。一方、樹木の幹・枝・根の乾燥重量の50%は炭素(C)の重さであり、それは全て大気中から光合成によって吸収したCO2由来であることが知られています。

このことから、樹木1本の幹・枝・根全体の乾燥重量を求めれば、その樹木が成長の過程で固定したCO2の量を推定することができます。さらに、同一樹種において樹齢の異なる複数の樹木を対象に樹木全体の乾燥重量と樹齢を計測し比較することにより、各樹木が1年間でどれだけ大きくなるか、さらには1年間にどれだけのCO2を固定するかを推定することができます。

国土技術政策総合研究所では、この考え方により年間のCO2固定量算定式を求めました。

具体的な方法については、こちらをクリックしてください。

方法

年間CO2固定量を計算してみましょう!

年間CO2固定量算定式を使って、身近な樹木が1年間に固定しているCO2の量を測定してみましょう!
調べたい樹木の地面から1.2mの位置の幹の直径(胸高直径)または樹齢を入力し、計算ボタンをクリックしてください。

全樹木
(クスノキ、シラカシ、マテバシイ、ケヤキ、イチョウ、プラタナス類、サクラ類のデータを用いて式を算出しました。)

胸高直径

cm

年間CO2固定量

kg/年

樹齢

cm

年間CO2固定量

kg/年

今回の算定式の作成に用いた樹木の範囲  

胸高直径:9~66cm  樹齢:9~52年

各樹種ごとの年間CO2固定量を調べたい場合はこちらをクリックしてください。

各樹種ごとの年間CO2固定量

背景

  • 現在、地球温暖化が大きな問題となっています。
  • 温室効果ガスの主要な構成要素であるCO2を削減すためには、
    ①排出量を減らす
    ②植物による吸収・固定量を増やす
    ことが必要です。
  • 温暖化対策の一つとして、都市部において②の吸収源対策を推進するためには都市緑化が重要な役割を担っています。

目的

  • 温暖化対策のうち、都市緑化の吸収源対策の効果を定量的に明らかにするため、樹木のCO2の固定量を把握する必要があります。(都市緑化にはその他にもヒートアイランドを緩和し、冷房の使用を減らすなどの効果もあります。)
  • 京都議定書の報告書等にも活用可能な算出手法の開発が求められています。
  • そのため、日本の樹木の生育特性を反映させた都市緑化樹木(都市で多く植栽されている樹木)のCO2固定量算定式を作成します。

方法

  • CO2固定量の算定対象 : 幹・枝・根(木質化することで長期間固定が継続する)
  • ①樹木の全生重を求める
  • 地上部(幹・枝)は伐倒し、全生重を測定します。

    地下部(根)は、根の伸長する範囲を掘り取り、全生重を測定します。

  • ②樹木の生乾重比を求める
  • 幹・枝・根からサンプルを採取し、生重を測定後、乾燥機で乾燥させ、乾重を測定します。
    サンプルの生乾重比から、木質部の全乾重を求めます。
  • ③胸高直径と木質部乾重の相対成長式
  • 一般に、樹木の各器官の重量(Y)と樹木の形状寸法(X)の間には、

    相対成長式 Y=aX ......式1
    (a,bは定数)

    が成り立つことが知られていることから、木質部全乾重と胸高直径のグラフの点の分布に近似する相対成長式を求めます。

  • ④胸高直径と樹齢の直線回帰式
  • 各樹木の調査した範囲での樹齢(X)と胸高直径(Y)の関係を調べると、ほぼ一定量増加していることから、

    直線回帰式 Y=cX+d.......式2
    (c,dは定数)

    を求めました。

  • ⑤年間木質部乾重成長算定式の作成
  • 年間木質部乾重成長量(Y)は、胸高直径(X)の場合の木質部乾重と、1年後の増加量(c)を加えた胸高直径(X+c)の場合の木質部乾重との差となることから、以下の算定式で表すことができます。
  • Y=a(X+c) -aX =a{(X+c) -X } .....式3
  • Y : 1年間の木質部乾重の成長量

    X : 胸高直径

    a,b:式1の相対成長式から得られる定数

    c : 式2の回帰式から得られる胸高直径の年間成長量

  • ⑥年間CO2固定量算定式の作成
  • 木質部の炭素(C)含有量は、乾燥重量の約50%です。
    →式3に50%を乗じることにより、年間の炭素固定量がわかります。
    CO2とCの分子量の比は、44:12です。
    →年間の炭素固定量に44/12を乗じることにより、 CO2の固定量に換算できます。
  • =年間のCO2固定量算定式
  • 例)全樹木
  • Y = 0.111 {(X+1.1)2.6173 - X2.6173}

    Y : 年間CO2固定量 (kg)

    X : 胸高直径 (cm)

参考文献

  • 松江正彦・長濱庸介・飯塚康雄・村田みゆき・藤原宣夫(2009)
  • 日本における都市緑化樹木のCO2固定量算定式,
  • 日本緑化工学会誌,35(2) : 318-324.

樹種ごとの年間CO2固定量を計算してみましょう!

年間CO2固定量算定式を使って、身近な樹木が1年間に固定しているCO2の量を測定してみましょう!
調べたい樹木の地面から1.2mの位置の幹の直径(胸高直径)または樹齢を入力し、計算ボタンをクリックしてください。

クスノキ

胸高直径

cm

年間CO2固定量

kg/年

樹齢

cm

年間CO2固定量

kg/年

今回の算定式の作成に用いた樹木の範囲  

胸高直径:15~51cm  樹齢:16~47年

シラカシ

胸高直径

cm

年間CO2固定量

kg/年

樹齢

cm

年間CO2固定量

kg/年

今回の算定式の作成に用いた樹木の範囲  

胸高直径:11~36cm  樹齢:13~31年

マテバシイ

胸高直径

cm

年間CO2固定量

kg/年

樹齢

cm

年間CO2固定量

kg/年

今回の算定式の作成に用いた樹木の範囲  

胸高直径:15~27cm  樹齢:15~31年

ケヤキ

胸高直径

cm

年間CO2固定量

kg/年

樹齢

cm

年間CO2固定量

kg/年

今回の算定式の作成に用いた樹木の範囲  

胸高直径:18~66cm  樹齢:18~52年

イチョウ

胸高直径

cm

年間CO2固定量

kg/年

樹齢

cm

年間CO2固定量

kg/年

今回の算定式の作成に用いた樹木の範囲  

胸高直径:9~59cm  樹齢:9~52年

プラタナス

胸高直径

cm

年間CO2固定量

kg/年

樹齢

cm

年間CO2固定量

kg/年

今回の算定式の作成に用いた樹木の範囲  

胸高直径:10~46cm  樹齢:13~43年