1.砂浜の利用実態及び価値に関する調査
(1)海水浴の参加人口が減少傾向
砂浜を利用したレジャーとしては、海水浴を思い浮かべる人も多いと思いますが、最近では海水浴の参加人口が減少しつつあります(図-1)。
砂浜を抱える地域の活性化のためにも砂浜の利用を促進していく必要がありますが、そのために必要な養浜や利便施設等の整備資金を確保するうえでは、砂浜が有する利用上の価値を適切に評価できることが重要となります。
図-1 海水浴参加人口の推移
レジャー白書2017及び2022(公益財団法人日本生産性本部)をもとに作成
(2)砂浜へ何をしに行くのか
砂浜を訪れる目的は海水浴だけではありませんので、砂浜の利用価値を評価するには、海水浴以外の利用についても把握する必要があります。そこで砂浜の利用実態を把握するため、2017年12月〜2018年11月の期間に砂浜を訪問した計4,332人を対象にWEBアンケートを実施しました。
調査の結果、海水浴を目的とした訪問は全体の2割程度でしかなく、「散歩」が約27%、特に目的を有しない「気晴らし・なんとなく」が約17%にものぼることが分かりました(図-2)。散歩のような日常的な利用は直接お金が動くものではありませんが、砂浜に近いことが居住地の選択に影響することが考えられます。
図-2 砂浜訪問の主な目的(N=4,332)
(3)砂浜への交通手段
観光地などの経済的な価値を評価する方法の1つに旅行費用法があります。これは、その地を訪問するのに要した交通費などをもとに評価する方法ですので、訪問者がどのような交通機関を利用したかが重要となります。上記のWEBアンケートの際に交通手段についても調査しました。
調査の結果、砂浜訪問者の約77%が自動車を利用していることが分かりました(図-3)。約33%が高速道路を利用しており、比較的遠方からの訪問にも自動車が利用されていました。ただしこれはあくまでも全国の平均的な状況であることに注意が必要です。神奈川県の片瀬西浜海岸、鵠沼海岸では電車利用が40%にものぼっていました。
図-3 砂浜訪問の際に利用した主な交通手段(N=4,332)
(4)砂浜訪問者の出発地
各砂浜への訪問者がどこ地域から来ているかについては、上記調査の1次調査として約7万人を対象にしたWEBアンケートによって調べています。
神奈川県の砂浜の場合は、神奈川県内からの訪問が26.3%、次が埼玉県からの24.7%であり、関東地方・中部地方を中心にほぼ全国から来訪者がありました(図-4)。
これに対し、福井県の砂浜は県内からの訪問が44.9%、次が滋賀県からの12.4%であり、近畿地方・中部地方からの訪問が大部分でした(図-5)。利用促進を目的とした砂浜の整備をおこなう場合には、こうした地域による訪問者の違いも考慮することが重要となります。
図-4 神奈川県内の砂浜への訪問者の出発地内訳
図-5 福井県内の砂浜への訪問者の出発地内訳
(5)旅行費用法による価値の評価
旅行費用法では、各訪問者の居住地から目的値までの旅行費用と各砂浜への訪問頻度のデータをもとに、砂浜利用1回当たりの価値を算出し、これに例えば年間利用者数を掛け合わせることで、1年あたりの利用価値が算出されます。ここで扱う旅行費用は一般化交通費用と呼ばれ、運賃だけでなく、移動時間を貨幣価値に換算したものも考慮されます。
今回紹介したWEBアンケートの結果を使って旅行費用法による評価も試行しています。2023年6月に開催される第48回海洋開発シンポジウムにおいて発表予定ですので、詳細についてはまた後日、掲載いたします。
上記の(1)〜(4)までの調査内容の詳細は、下記の文献にてご確認いただけます。
砂浜訪問を目的とした旅行実態の調査
[土木技術資料,62-5,22-25,2020]
[2023年6月更新]
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