国土交通省 国土技術政策総合研究所
河川研究部 水害研究室

主な研究課題


【流域治水の推進方策の研究】
防災まちづくりのための減災対策の現場適用の支援

国土交通省では、治水の考え方を流域治水に転換し、河川区域内で河川管理者が事業主体となる河川事業によるハード対策に加え、流域内(河川区域以外)のあらゆる関係者が実施主体となる様々な「減災対策」やそれらを含んだ防災まちづくりも推進することとしている(参照:水災害リスクを踏まえた防災まちづくりのガイドライン※)。  
減災対策の現場での適応には、地域の現在の浸水の危険性(現況ハザード特性)と減災対策の効果について、関係者との共有が必要となる。しかし、現況ハザード特性や減災対策の設計手法、効果の評価手法・示し方が未確立である。
そこで数値解析により、まず氾濫ブロックの現況ハザード特性を整理する。次に現況ハザード特性に応じて、各種減災対策を適用し、ハザード特性の変化(=対策の効果)を整理する。地形特性の異なる様々な氾濫ブロックにて、現況ハザード特性と対策の効果を整理することで、現況ハザード特性や対策の効果の評価手法、設計手法を標準化し、手法の確立を目指す。
加えて、現況ハザード特性や対策の効果について、認識共有や減災対策の合意形成等のため、市町村や関係機関、一般住民等に対して、その意義や効果が分かりやすいような減災対策の効果の示し方について、検討する。
(多段階の浸水想定区域図・施設整備後の浸水想定図・内外水統合型浸水ハザード情報図
(参照:水災害リスクを踏まえた防災まちづくりガイドライン※ p.34-37)、3次元動画、VR等)

https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/content/001406429.pdf




本川と支川、内水氾濫を統合したハザード情報図の作成手法の検討
現在公表されている浸水ハザード情報図は、原則として大河川・中小河川・下水道等の管理者別に作成・提供されており、それぞれが対象としている降雨規模等が異なることから、防災まちづくりの検討や、避難検討等で必要となる場所ごとの浸水ハザード情報を得るうえで十分とは言えない場合がある。このため、大中小河川・内水氾濫を統合した「内外水統合型浸水ハザード情報図」の作成・提供を検討する必要がある。
内外水統合型浸水ハザード情報図の作成に当たっては、流域の様々な主体が検討・実施する防災・減災対策に必要とされる情報とすることが重要である。例えば、洪水時の避難場所、避難ルートの検討等においては、生起確率は低いかもしれないが最悪の浸水シナリオに基づく浸水ハザード情報が必要ある。一方、比較的生起確率の高い浸水事象による資産被害の防止・軽減対策としての個別建物における止水板設置、盛土嵩上げ等の検討においては、平均的な浸水シナリオに基づく浸水ハザード情報が合わせて必要である。また、内水氾濫が大河川等の氾濫に先行して発生するような場合の避難検討等においては浸水範囲・浸水深の時間的な変化を示す等、必要に応じた工夫が求められる。
このように、地域の特性や目標の設定に応じた工夫を図りながら、内外水を統合したハザード情報図の作成を全国で推進するため、必要な検討を進める。

内外水統合型浸水ハザード情報図

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【合理的かつ効率的な水害リスク情報作成技術】
中小河川における水害リスク情報空白域の解消へ向けて

これまでに経験したことのないような豪雨・洪水が頻発する中、全国の河川で激甚な水害被害が続発している。
河川流下能力を超える洪水時の沿川地域における氾濫被害防止・軽減対策の推進に必要な水害リスク(ハザード)情報は多くの中小河川において提供されておらず、水害リスク(ハザード)情報空白域の解消が課題である。
河川測量や経年的な水位観測等の基礎的なデータ取得を行っていない中小河川においても水害リスク(ハザード)情報を作成できるよう、本研究では航空レーザ測量データを用いた水害リスク(ハザード)情報の作成手法を研究している。
また、中小河川は土砂・洪水氾濫が発生しうる中山間地域を流下する場合があるため、水理実験によって高濃度の細粒土砂の堆積メカニズムと堆積に伴う水位上昇量を評価し、水害リスク(ハザード)情報へ反映させる研究も合わせて行っている。

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【都市浸水対策】
浸水予測情報を活用した都市浸水対策の研究

これまでに経験したことのないような規模の集中豪雨などにより水災害が頻発している。
特に人口・資産の集中や地下の高度利用等が進む都市部では浸水被害が甚大となり、下水道や河川の整備が重要であるが、施設整備規模を超える豪雨が頻発している現状においては、浸水発生時の被害防止・軽減対策を実施していくことが重要である。
本研究は、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(第I期:H26~30)にて開発した浸水予測システム*を活用し、都市域の水害の防止・軽減を目的に浸水予測情報を活用した浸水被害防止・軽減方策について研究を進めているものである。
*実測・予測雨量、河川水位データ等を10分ごと(一部5分ごと)に受信し、河川、下水道、地表面の水の流れを一体的に計算し、1時間先までの予測浸水範囲、浸水深等をデータ受信後10分以内に配信するシステム。

浸水予測システムの概要図

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【地域における減災対策の促進】
氾濫被害軽減のための水防活動への支援

近年、毎年のように施設規模を超える洪水によって人的被害を伴う激甚な水災害が発生しており、水防団や自治体の水防活動による減災対策が重要である。地域のなかで水防団は、水防工法で堤防を守るだけでなく、内水対応や避難誘導など多様な役割が期待されている。
水害時には水防団員の活躍が報道される一方、地域によっては水防団員数の減少や、地域外に通勤するサラリーマン団員の増加など、活動体制の制約や地域と水防活動に対する精通度の低下が指摘されており、より効果的で安全な水防活動を支援する仕組みの構築が必要である。
本研究では、地域の浸水リスク・人的被害リスクの高い地点を見える化したマップ作成や、水防活動の状況、河川水位、浸水状況等をリアルタイムで情報共有できるシステム構築など、地域の水防活動を支援するための方策を研究している。

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水害研究室スタッフ


役職 氏名 担当業務
室長 井上 清敬 総括
主任研究官 武内 慶了 水防活動支援技術
土砂・洪水氾濫ハザード評価
人的被害防止方策
研究官 山本 哲也 リアルタイム浸水把握・予測
研究官 中村 賢人 小規模河川氾濫推定図
中小河川治水安全度評価システム
研究官 櫻田 歩夢 氾濫シナリオ別ハザード情報図
治水経済
地震・洪水の複合災害対策
研究員 海老原 友基 水防活動支援技術
橋梁周辺の氾濫流特性分析
海外調査助手 中山 桂 海外事例調査
総務助手 篠田 昌子 総務