【概 要】 |
地球温暖化への対応が喫緊の課題であり,我が国の温室効果ガス排出量の約2割を占める運輸部門についても,自動車の省エネ化や,交通流の円滑化,物流の効率化などの各種の対応が実施されている.2005年には,省エネ法が改正され輸送分野にもエネルギー消費を削減する努力目標の設定がされたほか,目標値との過不足分の温室効果ガスを取引する排出量取引制度も自主参加型であるものの国内で始まっている.さらに,2012年10月からは,温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例が適用されるなどしている.
このような状況のなか,海上輸送に関しても,自動車輸送よりもエネルギー効率の良い鉄道や内航海運などの輸送機関を活用するモーダルシフトの推進や,省エネ船の開発,港湾における荷役機械の省エネ化,船舶への陸上電力供給などが既に進められているが,温室効果ガスの排出量取引や温暖化対策のための税のグリーン化などが今後さらに進めば,単にコストや時間だけではなく温室効果ガスの排出量やそれに関わる費用等を意識した輸送機関や経路選択が行われ,港湾貨物の流動にも変化が起こることが想定される.
よって,本分析では,今後の港湾物流に関わる施策の検討などの基礎資料とするために,我が国の海上ユニットロード輸送に焦点をあて,温室効果ガスの排出抑制等への取り組みなどの状況についてその動向を分析するとともに,海上ユニットロード貨物輸送に関わる長距離輸送ならびに中距離輸送のそれぞれについて機関選択モデルを構築し,輸送手段ごとのCO2 排出量の違いが,今後の温室効果ガス抑制施策や炭素税等の課税価格によってどのように各輸送機関の選択に影響するかを定量的に分析した. |