研究成果概要


国総研資料 第 348 号

【資 料 名】 横浜市における住民の沿岸域管理への認知構造に関する基礎的研究

【概   要】  日本の沿岸域において現在,環境保護,自然災害軽減,沿岸域利用といった,様々な沿岸域の課題が生じている.そこで,望ましい沿岸域管理のあり方を様々 な視点(例えば,住民参加論,効用理論など)から研究し,政策代替案の形成を支援していくための基礎的データを収集・分析するべく,東京湾沿岸に位置する 横浜市金沢区沿岸域の住民を対象に「沿岸域管理に関するアンケート調査」を実施した.本研究では,沿岸域管理の枠組みについての仮説を提示し,それに基づ いて,①沿岸域のイメージと範囲,②沿岸域の現状はどうなっているか,③沿岸域管理の優先項目は何か,④参加型沿岸域管理に対してどのような期待があるの かを住民に尋ね,以下の結果を得た.
  ①住民の沿岸域のイメージは“散策や休憩のできる海浜公園・緑地”,“自然のままの砂浜”,“魚釣りなどができる磯や防波堤”,“自然のままの干潟”など で,その範囲は沿岸線からの1km以内と認知している回答者の割合が多い.
 ②“海の水質が良くなった”,“海面のゴミや油が少なくなった”,“砂浜のゴミが少なくなった”,“ 沿岸域の生き物が少なくなった”と感じた住民が多かったのに対し,“沿岸域の松林”,“沿岸域の海草”,“沿岸域の砂浜”,“堤防やブロックを含む沿岸域 の景観”,“沿岸域への接近性”などの項目については,“変わらない”と感じた住民が多かった.
 ③10年前と比較して“地震”と“台風”の発生頻度は多くなったが,“高波・津波”と“洪水”は少なくなったと感じる住民が多かった.また,今後自宅が 災害を受ける可能性は,“地震”と“台風”が“高波・津波”と“洪水”より高いと感じている.
  ④沿岸域での地域住民・企業の活動に関しては,漁業は少なくなり,水泳・水遊び,散策,自然観察,サーフィンなど水上スポーツなどの親水活動は盛んになっ たと感じた住民が多かった.また,釣りや野球・テニスなどのスポーツ,キャンプ,祭りや伝統行事,沿岸域のレストランでの飲食などは,以前と変わらないと 感じた住民が多かったが,工業や港湾工事などの産業活動に対しては,わからないと答えた割合が多かった.
 ⑤沿岸域管理のための政策は,全体的にはまず沿岸域環境保全,そして沿岸防災という順で沿岸域管理を望んでいる.これをコンジョイント分析手法を用いて 詳細に検討したところ,環境保全では“漂着ゴミ・油”と“松林・海草”,沿岸防災では“地震”,“高波・津波”と“洪水”,沿岸域利用では“港湾”, “サービス業”と“観光・娯楽業”という項目が重視されているという結果が得られた.また,年齢,性別,世帯年間収入,教育水準などが沿岸域管理の選好に 影響を与えることが確認された.
  ⑥沿岸域管理に対して,情報公開や参加型システムの確立への期待が強かった.そして,沿岸域についての議論に実際に参加してみたいと思っている住民はおよ そ回答者の3分の1を占めた.

【担当研究室】 沿岸域システム研究室

【執 筆 者】 ザイ 国方,鈴木 武



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中 扉 205KB
目 次 183KB
本 文 539KB
付 録 424KB
奥 付 59KB

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