【資 料 名】 |
米国における空港整備事業制度と21世紀に向けた空港整備に関する議論 |
【概 要】 | 日本における空港整備を取り巻く状況は近年特に厳しく,公共事業抑制論が世論とし
ての確固たる地位を固めていくなか,中央政府の内部監査機関である総務省行政評価局,外部監査機関である会計検査院により,
過去の空港整備における需要予測値と実績値との乖離等について指摘されたことは空港整備に対する批判に追い打ちをかける形と
なった。しかしそれと同時に,一部の空港の容量限界がボトルネックとなり今後の日本の航空輸送の発展ひいては日本経済への影
響も含めて,空港整備の必要性を肯定する意見も一方では存在する。整備を仮定すると,ボトルネックを解消し得るような空港整備に
は,海上での建設を伴う大規模投資が必要となることは必然であり,現状スキームでは資金調達が極めて困難な状況にあると言わざ
るを得ない。これまでは変則的な資金調達スキームを採用することにより同様の問題を解決してきたが,羽田空港の沖合展開事業の
借入金については現在でも元利償還中であるためこれ以上の借入金は将来世代への負担を増すことになり,また初期投資に伴う支
払利息により財務状況が悪いことを鑑みれば,関西空港と同じスキームでの資金調達は検討を要する。すなわちこれまでの資金調達
スキームをそのまま踏襲する訳にはいかず,明確な資金調達方法は用意されていない。以上のように日本の空港整備事業制度は大
規模投資の必要性が高まったときに資金調達ができない等の大きな課題を抱えており,現状の事業制度の見直しに対する検討が必
要な時期に差し掛かっている。幸か不幸か,日本における航空行政あるいは航空分野の研究は欧米諸国に比べ遅れていると言われ
ている。したがって,欧米諸国の実態を参考にすることは検討に際し大きな価値が存在すると考えられる。航空先進国である米国では,
1990年代後半から21世紀に向けた戦略として空港整備のあり方や民営化について様々な議論がなされている。本稿では,資金調達
面を中心とした米国の空港整備事業制度の特徴を踏まえた上で,近年なされた議論とその結果とも言えるFAIR21の立法化について整
理し,もって今後の我が国の空港整備事業制度の検討に資することを目的とする。 |
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