研究成果概要


国総研資料 第 96 号

【資 料 名】 空港整備による国民経済への波及効果の定量分析−応用一般均衡モデルによるアプローチ−

【概   要】   空港整備事業は,直接的に空港容量拡張や施設機能の質的向上などの効果をもたらし, その結果として航空機運航の効率化,安全性や確実性の向上等,様々な形で航空輸送サービスの発展に寄与する。 このことは,航空輸送産業のアウトプットである輸送サービスにおける質的向上を意味し,また航空輸送サービス供給 における生産技術効率性向上とも同義である。さらに,空港における処理能力拡大によって,運航頻度増加が期待され ,利用者にとっての実質的な交通費用低下をもたらすことも考えられる。航空輸送サービスは,様々な産業の生産活動 ににおいて中間投入として利用するため,輸送サービスの改善は航空輸送産業のみならず,あらゆる産業に対して生産 システムの改善をもたらす。したがって,空港整備により,産業活動の連関を通じた波及効果,さらには産業基盤の拡大 という効果が生じると考えられる。一方,我が国の空港整備事業の財源は空港整備特別会計であるが,その絶対額の 制約により事業の進行自体が制約を受けていることも事実である。特に,用地費等に莫大な費用を要する羽田空港再拡 張や関西空港二期などの事業では,そのことが顕著となる。これらの大都市圏空港における空港整備の遅れは,日本全 体として見た航空輸送サービスにおけるボトルネックとなり,著しく国益を損ねる危険性を孕んでいる。空港整備特別会計 における一般財源の占める割合は小さく,大半は航空利用者により負担されている。すなわち,航空輸送サービスの直 接利用者のみが過度の負担を強いられ,空港整備によって発生する金銭的外部効果を亭受する主体によるフリーライド が発生している可能性が高い。このような問題を受け,空港整備における財源負担のあり方を検討するためには,空港整 備効果として顕在化する産業活性化などの間接的影響を把握することが望まれる。また,空港整備による需要誘発効果 を正確に把握するには,こうした間接効果が相乗的に航空需要を増加させるプロセスを明示的に考慮する必要がある。本 稿は,空港整備財源のあり方を検討するための第一歩として,国民経済における産業活動期間の連関をモデル化した応 用一般均衡分析アプローチにより,空港整備による国民経済への効果について定量分析を可能とする枠組みを構築した。 さらに,空港整備による航空輸送産業における生産性向上と航空輸送時間短縮を想定し,航空需要への影響と経済効果 についての定量分析を行った。

【担当研究室】 空港計画研究室

【執 筆 者】 石倉智樹,丹生清輝,杉村佳寿



表 紙 23KB
中 扉 122KB
目 次 22KB
本 文 933KB
奥 付 15KB


全 文 1,094KB