1998年3月に策定された「国土のグランドデザイン」の副題として「美しい国土の創造」が謳われた。それまでの全総は主として経済効率性の観点から書かれており、国土づくりに「美しさ」というコンセプトが入った点で画期的であった。
日本の国土における「美しさ」には物質的な基盤がある。それは、瑞穂の国といわれるように「きれいな水」である。その「きれいな水」に恵まれた「ガーデンアイランド」とも呼ぶべき日本の国土は、亜寒帯から亜熱帯まで広がる地球的生態系の縮図である。このため多様な自然環境に適応した生活スタイルは今後の地球社会に対するモデルになり得る。また、厳しく脆弱な環境において培われた国土づくりのノウハウを持つ技術者集団は世界の宮大工として、世界に貢献することが可能である。
欧米にキャッチアップする時代は終わった。
明治維新以来、東京の都市づくりは、欧米にキャッチアップするという明確な目的を持って行われてきたが、130年でその目的をほぼ達した。日本は、古来、首都を移すことによって旧来の文化を発展させてきた。今や、遷都をするべき時代が近づいている。
日本全国の県が県の壁を越える決意を持ち、ノウハウを持っている国と協力して、地域連携を図れば、血を流さないで日本の国の形が変わる。そのような時代の首都は、「森の国」である北海道・東北地方の入口に位置し、鎮守の森の思想を踏まえた、風土に馴染んだものとなることがふさわしい。
新しい国土づくりには、新しい知の体系が必要。
キャッチアップの時代に必要だった「洋学」の時代は終わった。新しい国づくりには新しい知の体系が必要となる。「国土学」、「地域学」など日本の地域の実態に即した学問が必要。国土技術政策総合研究所には、そのような研究をリードして貰いたい。
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