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本プロジェクトにおける治水安全度評価は、一級水系において都道府県が管理する河川延長のうち山間地等を除く区間を対象とし、全国統一の効率的かつ簡素な手法(※1)により安全度の相対比較に足る必要最低限の精度を得ることを目指して実施したものです。このため、それぞれの河川の特性に応じた他の手法により安全度評価を行った場合においては、結果に差異が生じることがあります。
評価の手順は以下のとおりです。
- 評価河川を選定後、航空レーザ測量を実施し三次元地形データ(本プロジェクトでは"LPデータ"という)を取得
- LPデータを基に河川の横断形状を得て、必要に応じ堤防高や河床高の修正
- 評価河川の流域面積や流路延長などの流量諸量をデータベースに入力
- アメダス観測所の降雨強度と3.の流域諸量から発生確率(1/10、1/30等)に対応する雨量を用いて合理式により流量を算定
- 2.で得られた河川形状と4.の流量などのデータを基に発生確率に対応する水位を計算
- 2.で得られたLPデータの堤防高から余裕高を引いた高さと5.で計算した確率規模別の計算水位を比較し、その区間の安全度を評価
※1 「効率的かつ簡素な手法」とは
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河道断面は基本的に、LPデータより得られた地形データ(オリジナルデータ)から自動フィルタリング手法によりグラウンドデータを抽出し、作成したTIN(不整三角形モデル)データを用いて作成したものです。
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但しLP計測誤差の影響が大きく、簡易的な修正が可能な断面については、「中小河川評価システム」上にて断面の確認と修正を行っています。
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ダム湖等の水深の大きい貯水区間を除き基本100mピッチで測線を設定しています。
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流出計算式は、合理式を採用しています。
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流量計算地点は、支川合流地点としています。
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流域面積や流路長のデータは、今回のプロジェクトのために国土技術政策総合研究所が独自に算出しました。
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流出係数fは、山地0.7、平地0.8とし、それぞれの面積を河川現況調査より得て加重平均した値としています。
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降雨強度rは、(独)土木研究所が開発した「アメダス確率降雨計算プログラム」より算出しています。
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洪水到達時間は、クラーヘン式を基本として採用しています。
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水位計算には一次元単断面不等流計算を採用しています。
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出発水位は確率規模別の等流水位を基本としています。
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粗度係数は、中小規模の河川において粗度係数が実測値等から詳細に検討されている58河川を対象にした場合の平均的な合成粗度係数n=0.033を採用しています。
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「評価高=現況天端高-確率規模別流量に応じた余裕高」としています(ただし、背後地盤高の方が高い場合は、評価高を背後地盤高としています。)
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100mピッチの評価結果をLPデータの精度や評価結果の見やすさを考慮して500mピッチで表示することを基本としています。
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LPデータは、広域な範囲の標高値を短期間で取得できる長所がありますが、樹木等の上部の高さを捕らえてしまうこと、水面下の標高は取得できないこと、またLPデータ自体の精度(±15cm)等、河道断面図設定の際に誤差の要因となる特性があります。このような特性を踏まえ、河道断面図作成にあたっては、樹木の高さのデータをフィルタリングにより除外する等、実際の断面に近付けるための作業を行っています。
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合理式は洪水の貯留を見込まない河川で広く用いられている手法ですが、他にも貯留関数法、単位図法などの流量計算手法があり、一般には河川の特性に応じて使い分けられています。
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粗度係数は河川水の流れやすさを示す係数であり、通常は河床材料等を勘案して河川毎に設定されるものです。
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潮位の影響を大きく受ける区間等、河川の特性により今回の手法による評価が困難な区間が一部に存在します。このような場合は、評価の対象外とするか、過去に他の手法で評価を行っている場合にはその結果を採用している場合があります。
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