研究成果概要

国総研資料 第 1340 号


【資 料 名】 高層建築物の地震後の火災安全対策技術の開発
【概   要】

 大都市には多数の高層建築物が存在し、比較的大きな地震による力がこれらに作用する可能性が 高まっている。過去の地震被害に関する調査から、一般的な耐火建築物である高層建築物においては地震直後に火災発生確率が高まることから、 火災の拡大を防止する防火区画の性能維持や火災感知警報設備・スプリンクラー設備等の防災設備の機能維持が地震直後の火災安全性に重要となる。 しかしながら、これらの防災設備を含めた部材全体が地震時に破損する等の挙動に関する技術的な情報は乏しいため、地震直後の火災安全に対する戦略を 単に概念的な領域にとどめ、実効性のある火災安全確保戦術の確立を困難にしている。 したがって、これらの技術情報を系統的に蓄積し、地震後の高層建築物の火災安全性を確立することが急務となっている。
 これまでに国土技術政策総合研究所では、事項立て研究「高層建築物の地震後の火災安全対策技術の開発」(平成21~23 年度)を実施した。 本研究では、中程度以上の地震動(概ね震度5 強を超える地震)に対して、火災安全に必要となる耐火構造・防火設備等の挙動に関する 技術的な情報を実験により蓄積し、地震後の火災安全性に関する明確な技術基準がない概ね10階を超える高層建築物について、 その直後の継続使用を可能とするために必要な対策技術及び、地震直後の継続使用及び避難のための判断基準を明示した緊急点検・避難指針を作成した。
 その後、2012 年に東京都においてLCP (Life Continuity Performance) 住宅として、地震後に生活を継続しやすい共同住宅の登録・閲覧制度が開始され、 他の都市においても同様な制度が設けられている。しかし、これらは、もっぱら使用継続に重点が置かれ、防火の観点について十 分に考慮はされていないため、 本書は、事項立て研究の成果とそれ以降の関連する情報をとりまとめて紹介するものである。
 本研究の成果を活用することにより、大地震時に激甚被害地域周辺において多数存在する、 中程度の損傷を受けた高層建築物に対して、その直後から火災を想定しながら継続的に利用できる可能性を高めることで、 当該建築物利用者の生活の質の向上を達成し、併せて被災地域全体の地震後復旧の円滑化等に資する。

【担当研究室】 建築研究部
【執 筆 者】 成瀬友宏、鈴木淳一、河野守(東京理科大学)、北後明彦(神戸大学)、
高橋済(アイエヌジー(株))、花井英枝((株)竹中工務店)、近藤史郎(*清水建設(株))、村田明子*


研究資料全文

全 文

11,860KB
 

表 紙

中 扉

目 次

1. はじめに
1.1 研究の背景
1.2 研究の目的
1.3 本研究の概要
2. 地震直後の緊急点検・対応計画作成に関する課題と調査の対象
2.1 地震後火災の出火原因からみて対策を要する主な建築物用途
2.2 地震後の一時避難からみて必要な対策
2.3 防火管理者・防災管理者について
2.4 本研究で作成する地震直後の緊急点検・対応計画に関する対象について
2.5 本研究で実施する地震直後の緊急点検・対応計画に関する建築物の構造について
3. 地震直後の避難・火災安全計画に関する調査
3.1 地震時の共同住宅における住民対応・火災からの安全確保に関する文献調査
3.2 地震時の商業施設における対応状況に関する文献調査
3.3 高層建築物の避難計画の問題点と今後の対策
3.4 高層共同住宅における避難マニュアル・制度の整備状況
3.5 平成23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震による被害状況調査
3.6 防火区画構成部材の地震被害低減のための対策手法の調査
4. 高層建築物の地震後の防耐火性能に関する調査
4.1 地震後の架構の耐火性能に関する既往の知見
4.2 地震後の防火区画等の防耐火性能に関する既往の知見
4.3 防火設備等の耐震安全性に関する既往の知見
4.4 地震被害を受けた建築物構造部分の火災安全性に関する実験的検討
4.5 地震被害を受けた防火区画の火災安全性に関する実験的検討
5. 地震直後の緊急点検・対応計画について
5.1 概要
5.2 地震後に時系列に行う点検の目的と必要とされる防火性能
5.3 地震後火災に対する構造部材の耐火性能
5.4 地震後火災に対する防火区画の耐火性能
6. おわりに
6.1 本研究で得られた成果
6.2 今後の課題
参考文献
付録1 マンションの防災設備等の被害状況と点検・復旧状況に関するアンケート用紙
付録2 ヒアリング結果
奥付