国総研資料 第 1170 号 |
【資 料 名】 | 港湾内外における船舶の走錨事故に関する基礎的分析 |
【概 要】 | 本資料では,過去の船舶に関する事故報告データ(運輸安全委員会船舶部門による約12年分の報告書) から,錨泊状態にあった船舶が走錨に至った走錨事故案件(全113件)を抽出し基礎的な分析を行った. 主な結果を以下に示す. 走錨事故の実態については,まず,事故発生時の錨泊状態については,単錨泊の事案がほとんど(95%) であり,空載状態のものが6割強(32/52件)を占めた.走錨時の圧流速度については,概ね0.5m/s~3m/s 程度であり,風速が大きい程,高い圧流速度となる傾向にあり,衝突時の船体の姿勢は約9割(39/46件) において船尾側からの衝突であった.また,旧海軍の錨鎖長式についても概ね整合的であった.さらに,台風襲来時の走錨事故の特徴として太平洋(本州・四国)に約6割が集中し,さらに,台風襲来時の走錨事故の約2/3の事案において風向が南寄り(南東~南西)の際に発生していた. 港湾区域の内外に着目した比較においては,10,000総トン以上の大型船や50総トン未満のプレジャーボート・漁船等の小型船では港湾区域外での錨泊が多く,それ以外の10,000総トン未満の一般商船では港湾区域内での錨泊が過半数を占めた.走錨後の乗揚・衝突対象については,港湾区域外の場合には浅場や岩場等の自然物への衝突が全体の75%と大半を占め,港湾区域内の場合は港湾等インフラ施設への衝突が約1/3を占めた. さらに,走錨による乗揚・衝突時の船体の損傷については,港湾等インフラ施設への乗揚・衝突に到る場合,比較的高い全損率(事故後の船体側の対応が判明したもののうち約36%(5/14件))を示すとともに,錨鎖を使用する一般商船等の比較的大きな船が自然物への乗揚・衝突に至っても全損率は比較的低く抑えられる傾向(約5%(1/19件))にあることが確認された.また,走錨後に船舶の衝突のあった港湾等インフラ施設の損傷で機能への影響が大規模であった事案( 2件)は,いずれも,施設の基本的な機能を維持するために不可欠な部位(護岸上の胸壁と橋桁)に船体が衝突した事案であり,その復旧が長期間に及んだ事案であった. |
【担当研究室】 | 管理調整部 |
【執 筆 者】 | 松田 茂,宮田 正史 |
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