研究成果概要


国総研資料 第 978 号

【資 料 名】 宮古湾における底質およびアマモ場の長期変遷‐震災後5年間の変化‐

【概   要】  東北地方太平洋沖地震によって発生した津波によって,三陸地方沿岸域の水環境は,干潟や藻場等の生物の生息基盤の消失等の多大な被害を受けた.著者らは,宮古湾において,生物の生息基盤の一つであるアマモ場の復元を目指し,アマモおよび底泥の復元過程の調査を,津波後から年1回の頻度で実施した.本資料では,まず,既往の研究から長期モニタリングの着眼点を抽出する.次に,津波後5年間のアマモ場および底質の変遷について,その着眼点に基づいて整理することを目的とする.
 既往の研究から,長期のモニタリングの着目点を次の4点とした.@湾奥南西側の赤前,金浜沖のアマモは着実に回復しているか?,A湾奥南東側の小堀沖の細粒分およびアマモ場は変化しているか?,B湾奥東側の小田ノ浜,葉ノ木浜,八ノ木浜,堀内沖に砂が供給されているか?C湾奥東側の小田ノ浜,葉ノ木浜,八ノ木浜,堀内沖におけるアマモとコンブ科・ホンダワラ科の割合は変化しているか?
 それぞれの着眼点に対する5年間のモニタリング結果は以下であった.@金浜沖では着実に回復していた.しかし釜ケ沢沖ではアマモ場の空間的な拡がりが遅かった.水深および濁りの問題があると思われた.Aシルト・粘土分に関して,小堀沖では,50% の高い値を維持し,小堀の北側の沖では,2016年には40% 以上になった.アマモの生育範囲は拡大し,アマモの被度得点は一定勾配で増加し続けていた.両水域ではアマモ場は今後も拡大することが期待されるが,底泥が今後も高いシルト・粘土分割合を維持するか,それとも砂化するかは現時点では推測できなかった.B砂は供給されていなかった.相対的に適正粒径よりも粗い成分の割合は減少していたが,それは適正粒径より細かいシルト・粘土分の割合の増大が要因であった.C葉ノ木浜,八ノ木浜,堀内沖では,コンブ科・ホンダワラ科が減少し,アマモが増大していた.しかしその要因は,当初の期待とは異なり,砂分の増大ではなく,シルト・粘土分の増大であった.

【担当研究室】 沿岸防災研究室

【執 筆 者】 岡田 知也,黒岩 寛,秋山 吉寛



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