研究成果資料


国総研資料 第 809 号

【資 料 名】 内湾に分布する魚類の生息場と生活史に基づく類型

【概   要】  沿岸域の生態系を本格的に回復させるためには,部分的に最適であることを目指した干潟や構造物の断面形状を検討することに加え,水域全体として最適であることを目指した生物生息場の空間配置のデザインを検討することが重要である.この考えでは,生態系ネットワークや生物の生活史に伴う移動に代表されるような水域全体に渡る生物の移動を考慮することが重要となる.そこで本研究では,内湾域の水域全体の生息場のデザインに関する第一段階として,東京湾沿岸域で生息の確認された魚類を対象とし,生息場利用様式を明らかにし,各種魚類をこの様式に基づき類型化することを目的とする.  沿岸域に出現した魚類の生息場に関する文献情報を収集し,生息場を6タイプ(淡水域タイプ,干潟タイプ,砂浜タイプ,岩礁タイプ,深場タイプ,外海タイプ)に分類した.魚類の消長と生息場利用様式との関連性をロジスティック回帰分析を用いて調べた.  24科36種の魚類を生息場利用様式に基づき16種類の型に分けた. 1魚種の利用する生息場タイプ数は1から6までばらついたが,干潟タイプの生息場は多くの魚類に利用されており,重要な場であると考えられた.繁殖のために異なる生息場タイプへの移動を要する種がおり,魚の移動による生息場間ネットワークが種の存続のために重要であると考えられた.生息場をデザインする際は,利用する生息場タイプ数の少ない種に対しては微地形の積極的な導入が重要であることが示された,また,利用する生息場タイプ数の多い種に対しては空間ネットワークが重要であり,生活ステージに対して異なる空間移動形態を考慮することが重要であることが示された.

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 秋山吉寛,井芹絵里奈,岡田知也



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