研究成果資料


国総研資料 第 752 号

【資 料 名】 宮古湾における底泥およびアマモのモニタリング結果(2012年10月)

【概   要】  東北地方太平洋沖地震によって発生した津波によって, 宮古湾の生態系は甚大な影響を受けた.著者らは,宮古湾において,生態系の基盤の一つであるアマモ場の復元を目指し,アマモおよび底泥の復元過程の調査を実施している.2012年2月に実施した第1回調査によって,宮古湾湾奥はアマモ復元の視点で底質条件により,3つの水域(Z1,Z2,Z3)に分けられた.Z3では,粗砂・礫成分からなる底泥の中に,アマモの育成に適した中砂からなる底泥が点在していた.しかし,その中砂からなる底泥の空間分布は,調査地点が少なかったため把握することができなかった.また,アマモの空間的な分布も得ていなかった.そこで,本調査(第2回調査)では,底泥の詳細な空間分布およびアマモの空間分布を得ることを目的とする.
 調査は2012年の10月に宮古湾で実施した.震災前にアマモが成育していた水域において,120地点で採泥を行った.各底泥に対して粒度分布を分析した.また,同じ水域でアマモの分布調査を実施した.さらに,アマモの種子等の輸送経路を,数値モデルを用いて検討した.数値モデルには3次元環境流体モデル(Fantom3D)を用いた.
 120 地点の底泥は,6グループに分けられた.各グループの空間分布は,湾奥の底泥の空間分布を明瞭に示した.Z3の海域においては,礫主体の底泥と中砂主体の底泥の分布の状況を示した.宮古港高浜地区の防波堤の背後および東側の海岸の岬の背後では,アマモが密生または疎生している地点があった.流れの計算結果と現存するアマモの分布を重ねると,現存するアマモの分布が流れの残差流の上流になっていた.このことは,現在アマモがまだ回復していない浜に,現存するアマモ場から種子等の移動が期待できることを意味する.
 本調査で得られた底泥およびアマモの空間分布データを,今後の底泥およびアマモの回復過程の初期データとし,長期的なアマモおよび底泥の回復過程をモニタリングしていきたいと考えている.

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 岡田 知也,丸谷 靖幸,中山 恵介,古川 恵太



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