【資 料 名】 |
粒度分布および化学組成からみた東京湾の底質分布 |
【概 要】 |
港湾において,土砂堆積や底泥輸送は,航路等の基本的港湾機能の維持の視点だけでなく,水質汚濁の要因の把握や生物生息の基盤の確保など,環境の視点からも適切な管理が必要である.そこで本研究では,それらに資するため,著者らによって開発された化学組成を用いた底泥輸送の推定手法を用いて,東京湾の広域の底泥の分布図を作成することを目的とする.そして,それらの図から底泥の分布および輸送の特徴について考察した.
本検討には湾内449地点の底泥を利用した.各底泥に対して粒度分布および化学組成を分析した.化学組成に関しては,63mm以下のシルト成分と,63mm以上の砂成分に分画して分析された.粒度分布はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置によって分析され,エントロピー法によってグループ化された.化学組成は波長分散型蛍光X線装置によって分析され,k-means法を用いてグループ化された.
粒度分布によるグループ化によって,粒度分布に基づいた底泥分布図が作成された.東京湾の中央部より北側の殆どの水域では,シルト・粘土分が卓越した底泥だった.このことは,東京湾の広域において,有機物や有害化学物質が蓄積し易い環境であることを示した.また,シルト成分および砂成分の化学組成によるグループ化によって,化学組成に基づくシルト成分および砂成分の底泥分布図が作成された.この図から東京湾の主要河川からのシルト成分および砂成分の分布範囲および輸送経路が推測された.これらの図および主要河川からの底泥の分布範囲は,今後の東京湾の底泥の管理を環境の視点から適切に実施する上で重要な基礎情報となる. |
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