研究成果概要


国総研資料 第 688 号

【資 料 名】 宮古湾におけるアマモ復元の視点でみた底質状況

【概   要】  東北地方太平洋沖地震によって発生した津波によって,宮古湾の生態系は甚大な影響を受けた. 干潟・浅場は大きく地形変形し,藻場は消失した.地形,底質環境,藻場は,沿岸生態系の基盤であり,それらの復元なくして生態系の復元はあり得ない. そこで本研究では,今後の宮古湾のアマモ場の復元を目指し,アマモ場の復元のための初期の情報として底質の状況を把握することを目的とし, 調査および検討を行った.
 調査は,2012年の2月に宮古湾で実施した.震災前にアマモが成育していた26地点で採泥を行った.各底泥に対して,粒度分布,含水比および強熱減量を分析した. アマモの生育に対する底質条件で比較的に強い影響を及ぼす粒度分布を用いて,礫主体の2地点を除く24地点をグループ化した. グループ化にはエントロピー法を用いた.
 24 地点は,エントロピー法によって,7グループに分けられた.そして,それら7グループおよび礫主体の1グループは,アマモの生育の適性度という観点から,6グループに集約された. それぞれのグループは,水域毎に極めてきれいにまとまって分布していた.それぞれのグループは,粒度に関するアマモの生育条件を用いて,適性度が評価された. 次に,そのグループ化された粒度分布のアマモの生育に対する適性評価に基づいて,宮古湾の水域を次のように3つのゾーンにゾーニングした. Z1:現状でもアマモ生育に適した水域,Z2:現状ではシルト成分が適正よりも多い底泥の水域,およびZ3:粗砂・礫成分が適性よりも多い底泥の中に,中砂成分を適度に含んだ底泥が点在している水域. それぞれのゾーンに対して,今後のモニタリングの方向性を示した.今後は,本結果に基づいて,津波前の底質情報の収集,各ゾーンに適したモニタリング,および復元技術の検討を行っていく予定である.

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 岡田知也,吉田潤,上村了美,古川恵太



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