研究成果概要


国総研資料 第 143 号

【資 料 名】 ペイメント・カードCVMの推定精度 −三河湾の干潟・浅場造成を事例として−

【概   要】 干潟や浅場のように市場の存在しない財の便益を計測する代表的な手法にCVM(Contingent Valuation Method:仮想評価法)がある。CVMには,回答の方法により自由回答方式,付値ゲーム方式,ペイメントカード方式,レファレンダム方式がある。このなかではレファレンダム方式が最もバイアスが少ないとされるが,統計的な推定精度を確保するために多くのサンプルを必要とするため,実務においてはむしろペイメントカードが好まれる場合がかなりある。このため,ペイメントカード方式のCVMについて,使用の際の利便性を向上させることを狙いとして,統計的な推定精度の特性を,三河湾における干潟・浅場造成に対する支払意志を調査した結果を用いて分析した。Logitモデルを仮定した場合にどのような効用関数があてはまりが良いかを調べた結果,Logit型が最も当てはまりが良いということが分かった。しかし,実質的には,対数線形型はLogit型と比較して支払意志額中央値の推定値および関数の適合性の双方において違いがほとんどみられなかったため,実務上は対数線形型で十分である。得られた支払可能最大金額の頻度分布の形状から,回答金額を選ぶ際の選択肢として最も多用されるのは1×10n円および5×10n円(第1レベルの金額群)で,次に多く使われるのは2×10n円,3×10n円および6×10n円(第2レベルの金額群)であることが推察された。提示額を利用度の高い金額群に集約した場合に得られる頻度分布が,理論分布型と良く一致したことが,その妥当性を裏付けている。支払意志額の推定における確率母関数を密度関数で与え,よく行われている分布関数による推定方法と算出値を比較した。結果,両者の推定値の間に明確な差異は見られなかった。ただし,推定精度については大きく異なる結果を得たため,修正した方法による場合のサンプル数と推定誤差の関係式を求めた。

【担当研究室】 沿岸域システム研究室

【執 筆 者】 鈴木武



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中 扉 101KB
目 次 21KB
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