研究成果概要

国総研研究報告 第 77 号


【資 料 名】 2024年能登半島地震津波における飯田港の短周期波の再現:分散性評価および数値モデル選定の重要性
【概   要】

 浅海域を伝播する津波では,津波先端部が短周期の複数の波に分裂(ソリトン分裂)しながら段波形状を示す波状段波が生じる場合がある. 波状段波は防波堤に衝撃的な津波波力を作用させうるため,波状段波の発生判定と入力波形の適切な設定は,耐津波設計上重要である.
 2024 年1 月1 日に発生した能登半島地震津波では,石川県珠洲市の飯田港に到来する短周期波の映像記録が残されている. この短周期波がソリトン分裂による波状段波であると裏付けられる物理的根拠は示されておらず,海底地すべり起因の短周期波である可能性は否定できない. そこで,本研究では,この短周期波を含む津波の伝播過程を明らかにすることを目的として,海底地すべりは考慮せず, 複数の断層モデルと3 種類の計算条件(非分散,浅海域分散,全域分散)を用い,痕跡高,浸水域,映像記録,および映像記録から推定された港内水位時系列に基づく検証を行った. その結果,国土地理院の断層モデル gsi0115 による計算が,飯田港の津波挙動を最も良好に再現した.また,飯田港周辺で短周期波の出現が確認され, その生成過程や波形形状はソリトン分裂の特徴に一致していた.再現計算から,飯田港には東側からの第一波,南東側からソリトン分裂を伴って到達する短周期の第二波, ならびに複数のエッジ波が到達していたことが示され,特にエッジ波は複雑な浸水挙動に大きな影響を及ぼしていた. また,大水深域での分散性を考慮した全域分散モデルは,浅海域における短周期波の到達時刻ならびに空間的な波峰位置の再現性を向上させた. さらに,複数の指標による評価から,断層幅が狭い場合や波長が短い津波では大水深域での分散性が短周期波の再現に重要となること, ならびに先行する引き波が非線形性を増大させて分裂を促進することが示された.これらの知見は,波状段波やそれに伴う衝撃的な津波波力を適切に評価するためには, 局所的な地形条件のみならず,断層幅,波源域や伝播経路上の水深などに基づく分散性の事前評価と,それに応じた数値モデルの選定が重要であることを示唆する.

【担当研究室】 港湾・沿岸海洋研究部
【執 筆 者】 千田 優、高川 智博(*港湾空港技術研究所)、鈴木 高二朗*、鶴田 修己*


研究報告全文

全 文

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目 次

1. はじめに

1.1 耐津波設計における波状段波の評価と本研究の位置づけ
1.2 本研究で取り扱う主要用語の説明
1.3 2024年能登半島地震津波における飯田港の被害と未解明の課題
1.4 本研究の目的

2. 数値モデルおよび計算条件

2.1 数値モデルの概要
2.2 計算領域
2.3 計算ケースの設定
2.4 津波初期波源
2.5 計算結果の検証用データ

3. 断層モデルの評価

3.1 痕跡データとの比較
3.2 浸水域との比較
3.3 港内津波波形との比較
3.4 映像記録との比較

4. 飯田港に到達した津波の詳細解析

4.1 津波伝播浸水過程
4.2 大水深域における分散効果の影響

5. 考察

6. 結論

6.1 本研究で明らかになった飯田港における津波挙動
6.2 大水深域分散と数値モデル選定への示唆
6.3 耐津波設計への貢献可能性と今後の課題

謝辞

参考文献