<河川部> |
河川研究室
●平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要
本研究は、粒径別の土砂について、生産・運搬・堆積といった水系スケールの動態を一貫して予測する手法について検討するものである。
10年度は、これらの一連の土砂動態のうち、細粒土砂の生産域から中流部に至る運搬プロセスを明らかにするため、涸沼川で洪水時に水系スケールの浮遊土砂観測を行い、その結果から、各支川流域(サブ流域)からの土砂供給のタイミングの違いが、下流部での流量〜浮遊砂量関係におけるヒステリシスや堆積環境に大きな影響を与えることを示唆した。
河床材料が砂〜細砂で構成される感潮河道区間(セグメント3)を対象として、1)上流からの土砂供給量の変化や河道変化(浚渫など人的作用も含む)によるセグメント3への堆積土砂量と周辺沿岸への供給土砂量のバランスの変化、2)その結果として河口砂州の中〜長期的変化(河口テラスの縮小に起因すると考えられる)与える影響を明らかにする。以上の知見をもとに、山地土砂生産域〜河川〜海岸を一貫した「土砂管理」のあり方(特に沿岸域の汀線後退に与える影響を考慮した河道改修のあり方)と計画水位算定に用いる出発水位のより合理的な設定方法について検討する。
10年度では、1)については涸沼川、2)については神戸川の現地観測データを用いて実態把握を行った。
河岸および堤防のり面の防御工に対する最近の要望として、従来と変わらない治水安全性はもちろんのこと、河川環境保全の機能、低コスト化が顕在化している。また、防御工設置の必要性についても明確な説明が求められるようになっている。本研究は、上記の要望に適合した防御工とともに、防災的観点から設置必要性を説明する際のツールとなる河岸侵食の予測手法を開発することを目的としたものである。
10年度では、防御工の開発については実用化の目途をつけること(具体的には実用化上の問題点を整理し、その対策を明らかにすること)、河岸侵食については低水路法線形移動の実態を把握することを目的とした。その結果として、1)開発対象とした4種類の防御工ごとに実用化のためのキーポイントをまとめるとともに、2)約30年間に渡る河岸侵食量の経時変化データを収集・分析して実態を把握した。
破堤防止の重要性は言うまでもないが、万一破堤した時の破堤地点の流況や地形変化を知ることは、それによってもたらす直接的被害や氾濫流の予測に役立つことはもとより、堤防自身の設計・強化・管理の方針策定にも重要な情報となる。実際に様々な破堤形態の規模や特徴が生じる原因の検討はこれまであまりなされていない。
本研究では堤防沿いに繁茂している樹木群及び河道平面形と破堤形態・流況との関係を把握することを目的として種々の条件下で水理模型実験を行い、破堤の軽減として効果的な対策工を検討した。
水系一貫した土砂動態の把握は、河道内の地形変化予測や物質輸送が自然環境に与える影響の評価にあたり重要である。
本論は、従来の涸沼川の土砂生産域(サブ流域の集合)〜中流部間の観測に加え、河口部の土砂動態も把握することにより、細粒土砂についての水系全体の土砂動態を明らかにし、土砂動態マップとして示した。
本研究は、河川の生態系相互の関係とその関係が河道のどのような諸特性のもとで成立しているかについて、できるだけ定量的に把握することを目標としている。それら知見から、河川環境のあるべき姿や河川管理方法などの施策立案・議論などに必要な判断材料を提供する。本研究は、河川生態学術研究会の一貫として、7年度から多摩川・千曲川を対象とした調査を継続して実施している。
10年度は夏季の出水により砂州上の植物群落が広い範囲で破壊されたため、これについて重点的に調査を行った。その結果、出水後の底生生物の種数・現存量の減少・復元と砂州上植物の流失機構について定量的に把握することが出来た。
霞ヶ浦導水事業で、取水口である那珂樋管は那珂川河道湾曲部外岸側に位置し、かつ平水時流量の約半分の量を取水するため、仔鮎の取水口への迷入防止対策が求められている。9年度の実験より、仔魚の濃度が主流部で濃いことを前提にした場合、仔魚の迷入防止のためには、低水路法線形の修正と置換工を組み合わせる方法(平水時の最適河道)の有効性が確認された。
10年度は、洪水時に堤防及び河岸に悪影響を及ぼさない対策工を検討するものである。実験では、まず最適河道の洪水時河床変動を把握し、次に洪水後河道での平水時の流況を把握した。さらに、仔鮎に見立てた中立浮子を投入し取水口への迷入状況を調べる実験を行った。これにより、最適河道の効果を確認できた。
常願寺川では、近年の河床低下によって既設の護岸や水制の根入れ不足が生じ、これら河川構造物の安全性確保が急務となっている。
9年度までの検討から、河岸侵食箇所の対策として水制や縦工等の対策工の効果と問題点を確認しながらそれらの最適な配置計画について提案した。
10年度は、洪水時における8.0km付近の水衝部形成状況をさらに詳細に把握し、8.0km右岸付近の河岸防御の必要性を確認した。さらに河道全体の土砂動態検討の一環として上流からの供給土砂量が下流河道に及ぼす影響(平面形、縦横断形等)を把握し、土砂管理の重要性を確認した。
河床材料が砂〜細砂で構成される感潮河道区間(セグメント3)を対象として、1)上流からの土砂供給量の変化や河道変化(浚渫など人的作用も含む)によるセグメント3への堆積土砂量と周辺沿岸への供給土砂量のバランスの変化、2)その結果として河口砂州の中〜長期的変化(河口テラスの縮小に起因すると考えられる)与える影響を明らかにする。以上の知見をもとに、山地土砂生産域〜河川〜海岸を一貫した「土砂管理」のあり方(特に沿岸域の汀線後退に与える影響を考慮した河道改修のあり方)と計画水位算定に用いる出発水位のより合理的な設定方法について検討する。
10年度では、1)については涸沼川、2)については神戸川の現地観測データを用いて実態把握を行った。