国土交通省 国土技術政策総合研究所 道路構造物研究部

橋梁研究室

研究内容

橋梁研究室の研究内容をご紹介します。

行政等の技術者に対する研修・セミナー

橋梁初級Ⅰ研修 達成度確認試験(実技)のポイント


Ⅰ.達成度試験の内容と評価のポイント 

○道路橋の健全性の診断にあたっては、点検者がなぜそのような判断に至ったのか、その根拠について論理的な記録があることで、道路橋の機能や耐久性等を回復させるための適切な対策方法を、道路橋の管理者があとから総合的に検討するために当該区分に分類した記録を残すのがよい。

○そこで、橋梁初級Ⅰ研修の達成度試験(実技)では、現場で把握した橋梁の状態に対して診断所見を記述することによって、研修の理解度並びに省令に基づく道路橋の定期点検に必要な知識と技能を確認しようとしている。

○以下では、達成度確認試験の内容、診断(所見の記述)例及びポイントを示す。



1.達成確認度試験(実技)の内容   
  試験は、「部材単位の健全性の診断」を主として出題。
 
・「部材単位の健全性の診断」では、現場実習で状態を確認把握した、3つの異なる損傷につい
 て、部材単位の健全性の診断所見を記述できることを確認する。  
・「道路橋毎の健全性の診断」では、部材単位の診断結果を踏まえるだけでなく、特に部材の役
 割や重要性も加味して、橋の健全性の診断所見を記述できることを確認する。

2.「部材単位の健全性の診断」における評価
  診断において、変状の状態、変状が現在の橋の機能や強度に与える影響に加えて、原因や進行
  の可能性に言及し、次回点検までの措置方針の判断に至る過程について第三者(他の技術者)
  が理解できるように記録に残せるかどうかを確認するものとし、以下のとおり評価する。

 (1)診断には、診断対象毎に必須の項目がある。そこで、所見として、以下のa~d、
    fの項目が適切に記述されていればそれぞれ基礎点を与える。
   a.変状の観察事実(変状の種類、発生位置、性状)    
   b.変状が生じている個所の現状(変状が橋の機能・強度・耐荷力の影響に与える度合い)
    の推定
   c.変状の原因の推定    
   d.変状の進行・拡大の可能性
   e.必要に応じて周辺部材等に与える影響の推定    
   f.次回点検までの措置方針(観点、目的、緊急性(実施時期))    


 したがって、試験においては、現場で把握した橋梁の状態に対してこれらの項目 ができるだけ網羅されるよう記述する事および、これらの項目について周辺部材の 変状および同種部材の変状とその関連性が必要に応じかつ、適切に記述されている のがよい。
 また、着目する部材の変状が他の部材に今現在与える影響についてなど、部材の現状または観察事実などにより必要に応じて、 周辺部材等に与える影響の推定の記述があれば加点する。

 (2)診断にあたっては、(1)のそれぞれの項目に対し、推定や判断に至った根拠を第三者
   (他の技術者)が見ても理解できるようにする。そこで、推定や判断に至った根拠が適切に
    記述されていれば、基礎点に加点。


以上の(1)(2)は診断において必須の記述内容であることから、基礎点として与えられる。
 

 (3)(1)(2)a~d、fのそれぞれの項目や根拠の記述が事実であるのか、推定による
    判断であるのかが区別できるような表現で記述されていれば、さらに加点。

3.「道路橋の健全性の診断」における評価
 (1)部材単位の健全性の診断(以下の表)は現地で確認した変状の種類と部材番号について
    できるだけ記述し判定区分を記述したうえで、道路橋毎の健全性の診断(判定区分)を
    行います。

部位・部材区分

 判定区分  

 判定区分に対応する変状の種類  (対応する部材番号)  

 上部構造

主桁

例)

例)腐食(第1径間03、05、第3径間01、02)、き裂(第1径間05)  

横桁

   

 

床版

     

 下部構造

橋脚

  

 

橋台

   

 支承部  

    

    

 その他(     )

    

    

道路橋毎の診断  

    

    


 (2)橋全体の診断にあたっては、解答者が特に着目した部位・部材区分とその理由として、構
    造特性や着目した部材の機能、架橋環境条件、他部材の変状との関係などが適切に
    考慮され、それらが所見として記述されていれば加点。

4.評価の共通事項
 (1)誤字・脱字は、軽微な場合は減点の対象とならないが、多数存在する場合などは、
    減点する場合がある。
 
 (2)不要な推奨や技術的根拠がないとみなされる解答の場合は、減点する場合がある。

 (3)2、3の各判定区分について、全体として著しく適切さを欠く判定区分となっていれば
    減点する。


Ⅱ.所見として記録すべき事項の参考

○所見には、当該区分に分類した判断の根拠や留意すべき点(変状の外観、現状の機能状態や強度の推定、変状の原因や進行の可能性の推定に参考となる情報、診断結果とそれを診断区分にあてはめた結果等)を記録として残す必要がある。

○措置方針を判断するにあたって考慮すべき事項が研修テキスト(国総研資料829号)に示されている。


【抜粋】
〔道路構造物管理実務者研修(橋梁初級Ⅰ)道路橋の定期点検に関するテキスト(P4-32,33)〕 表-4.5.4に道路橋定期点検要領(平成26年6月 国土交通省道路局)に示された部材単位の健全性の診断の判定区分を示す。この結果を踏まえて次に橋毎の取扱いの判定を行うことから、次に行う橋毎の取扱いの判定と同一の区分が用いられている。損傷の種類や位置や程度、部材の機能や状態が構造物の機能や状態にどのように影響するのかは構造物ごとに異なる。図-4.5.9に例を挙げるように、ある損傷が道路橋全体の機能又はその一部である耐荷性能に及ぼす影響は一概ではなく、構造特性や部材の機能、当該道路橋の重要度等によって異なること、また、架橋環境条件、損傷部周辺の局所的な応力状態、構造の詳細によって損傷の進行性が変化し得ることから、損傷の長さ、深さ、面積などの定量的な指標から機械的な区分を行おうにも必ず例外がある。そこで、損傷程度を表-4.5.4の判定区分に当てはめ、その結果措置方針が決まると考えるのではなく、診断では、原因の推定をしたり、今後の推移に見当をつけたりなども行い、部材毎および損傷の種類毎に次回点検までの期間を目安とした措置方針を判断したのち、判断した措置方針に対応して表-4.5.4の判定区分を決めると考えるのがよい。
 
 具体的には、部材内の変状(異常、損傷)毎に
  ● 損傷程度の大小
  ● 異常や損傷が生じている箇所の応力状態
  ● 当該部材の役割と当該損傷が橋の耐荷性能に与える影響
  ● 損傷の原因や次回点検までの損傷の進行・拡大の可能性
  ● その他必要な事項
を考慮して、次回点検までの間に実施する措置方針を工学的に判断する。そして、措置方針に則って、告示に定められた部材の状態I~Ⅳのいずれかに分類を行う。損傷原因や次回点検までの損傷の進行・拡大の可能性を診るにあたっては、   
  ● 他の部材の異常や損傷との関連性
  ● 損傷部周辺の局所的な応力状態や構造の詳細
  ● 環境条件
  ● その他必要な事項
を考察する。たとえば、道路橋定期点検要領の付属資料「判定の手引き」の備考には、損傷の種類毎に留意すべき事項の例が記載されているので参考にするのがよい(図-4.5.10、図-4.5.11)。また、「道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)-橋梁損傷事例写真集-(国土技術政策総合研究資料No.748、2013、国土交通省国土技術政策総合研究所)」には、より広範な事例が収められているので、適宜参考にするのがよい。構造の詳細の考察においては、本テキストの3章にある基準類の変遷などの知識も役立つ。     

       表-4.5.4 部材単位及び橋毎の健全性の診断で用いられる判定区分
          (道路橋定期点検要領 平成26年6月 国土交通省道路局)

区分

定義

健全

道路橋の機能に支障が生じていない状態。

予防保全段階

道路橋の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態。

早期措置段階

道路橋の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態。

緊急措置段階

道路橋の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態。




 
                        図-4.5.9診断例






         図-4.5.10 実習時のポイント(記録および所見の残し方)



Ⅲ.部材単位の診断の例

 

○以下の3つの損傷について、問題例及び解答例と、試験の評価項目や対応するテキスト項目を整理した例を示す。

○なお、所見にはいわゆる唯一解はない。着眼点が網羅され、かつ、第三者に判断の経過が伝わる所見(論理構成)になっているかが重要であるため、Ⅰに記載のとおり試験も加点法としている。

○診断は、実際の橋梁の損傷の状態、構造特性や架橋条件、他の部材の状態、損傷の要因、耐荷性能への影響、進行の可能性などは異なることから、定型的、画一的に行えないため、個々の橋梁ではそれぞれ適切に行う必要がある。例えば同じひびわれの幅、長さ、分布が観察されても、橋が異なればまったく同じ所見とはならないという立場で常に診断を始める必要がある。

○以下の例文についても、例としてわかりやすくなるように見直すこともあるので絶対視する必要はない。また、以下の例文については、所見に含まれるべき事項の理解を促すために、着眼点と判断の経過が伝わるように例を作成している。したがって、ここに示す例における損傷写真(損傷種類や程度)と診断結果に絶対的な関係を見出すことに意味は無い。



  【防食機能の劣化】

image42.jpg  
 防食機能の劣化の状態
   ・主桁のウェブ
   ・塗膜が広範囲に劣化
   ・腐食は見られない
 
 橋梁の定期点検に関する参考資料(2013年版)
  -橋梁損傷事例写真集-(P139) 


ひびわれ
 
image/image45.jpg  
 ひびわれの状態
   ・支間中央のひびわれ
   ・ひびわれ幅は小さく分散
   ・雨水の影響は見られない
 
 道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)
  -橋梁損傷事例写真集-(P194) 


床版ひびわれ


 
 直上の舗装の状態
   ・局部的なへこみあり
   ・格子状の舗装の割れ



image/image31.jpg
 床版ひびわれの状態
   ・ひびわれは格子状で局部的
   ・ひびわれは乾燥
   ・漏水跡や石灰分の析出跡あり
 
 道路橋の定期点検に関する参考資料(2013年版)
    -橋梁損傷事例写真集-(P433等) 

《問題例1》
 ○○橋の主桁に見られる「防食機能の劣化」について、部材の健全性の診断に関する所見を記述せよ。




 【参考写真】
             

※問題用紙には写真は掲載されておらず、自ら現地で作成するメモ等に基づいて回答する(以下同様)

《回答例1》

 主桁ウエブの広範囲に防食機能の劣化が見られるが、母材の腐食には至っていないことを確認した。
 また、伸縮装置からの漏水は確認できない。
 母材の腐食に至っていないことから、耐荷力の低下はないものと推定される。
 塗膜内側(下塗り側)からの劣化が見られないことから当初の施工品質は良好であったと推測されること、海岸線からは○○km程度離れており、地形条件からも飛来塩分の影響はないと考えられること、凍結防止剤の散布もないと考えられること、主桁の全面かつ表層からの劣化であることから、経年劣化が原因と推定される。
 今後劣化は確実に下層へ進行すると考えられ、放置した場合、防食機能の回復措置が大規模なものとなるまで進行することも懸念される。以上のことから、予防保全の観点から次回点検までに防食機能の回復を目的とした措置を講ずるのが良いと考えられる。

《回答例2》
 主桁ウエブの広範囲に上塗り防食機能の劣化が見られるが、発錆は見られない。
 現状では、主桁の耐荷力の低下はないものと推定される。なぜならば、発錆はなく母材は健全であると推定されるためである。
 劣化原因は、経年劣化によるものと推定される。なぜならば、主桁の全面、かつ、上塗り塗装から劣化しており、下層からの劣化が見られないことから、当初の施工品質は良好であったと推測されるため、また、伸縮装置からの漏水は無く乾燥していることから、著しい湿潤環境ではないと推定されるためである。
 今後、塗膜の劣化は確実に下層へ進行すると推定される。なぜならば、経年劣化が原因と推定され、上塗り塗装のはく離によって下層塗膜が露出するためである。
 予防保全の観点から、次回点検までに他の補修と合わせ防食機能の回復を目的とした措置を行うのが望ましい。なぜならば、母材の腐食に至っていない状況ではあるが、著しい湿潤環境ではなく急速に劣化が進行する可能性は低い一方で、急速に劣化した場合には防食機能の回復措置が今行うよりも大規模になり不合理となるためである。   

Ⅰ.2(1)~(3)の理解を助けるために、回答例1~2についてⅠ.2(1)~(3)に分解してみたものが下表である。


【例1】 防食機能の劣化の評価


項目1

項目2
(本例では全10項目)


《回答例1》

《回答例2》

テキストに記載の
項目との対応

a.観察事実

1.変状の事実
(変状の種類、位置、性状)

主桁ウエブの広範囲に防食機能の劣化が見られるが、母材の腐食には至っていないことを確認した。

主桁ウエブの広範囲に防食機能の劣化が見られるが、発錆は見られない。

損傷程度の大小

b.現状の推定

2.機能、強度、耐荷力に与える影響度合いの推定

耐荷力の低下はないものと推定される。

現状では、主桁の耐荷力の低下はないものと推定される。

損傷箇所の応力状態耐荷性能、機能、安全性等に与える影響

3.推定の根拠

母材の腐食に至っていないことから、

なぜならば、発錆はなく母材は健全であると推定されるためである。

.原因の推定

4.原因の推定

経年劣化が原因と推定される。

劣化原因は、経年劣化によるものと推定される。

損傷要因や進行・拡大の可能性

環境条件

5.推定の根拠

塗膜内側(下塗り側)からの劣化が見られないことから当初の施工品質は良好であったと推測されること、海岸線からは○○km程度離れており、地形条件からも飛来塩分の影響はないと考えられること、凍結防止剤の散布もないと考えられること、主桁の全面かつ表層からの劣化であることから、

なぜならば、主桁の全面、かつ、上塗り塗装から劣化しており、下層からの劣化が見られないことから、当初の施工品質は良好であったと推測されるため、また、伸縮装置からの漏水は無く乾燥していることから、著しい湿潤環境ではないと推定されるためである。

d.進行・拡大の可能性

6.拡大の可能性(速度含む)

今後劣化は確実に下層へ進行すると考えられ、

・今後、塗膜の劣化は確実に下層へ緩やかに進行すると推定される。
・なぜならば、母材の腐食に至っていない状況ではあるが、著しい湿潤環境ではなく急速に劣化が進行する可能性は低い

環境条件

7.推定の根拠

経年劣化が原因と推定されることから、

 

・なぜならば、経年劣化が原因と推定され、上塗り塗装のはく離によって下層塗膜が露出するためである。

f.措置方針

8.観点・目的

 

・予防保全の観点から
・防食機能の回復を目的とした措置を講ずるのが良いと考えられる。

・予防保全の観点から、
・他の補修と合わせ防食機能の回復を目的とした措置を行うのが望ましい。

措置方針

9.緊急性
(実施時期)

次回点検までに

・次回点検までに 

10.根拠

放置した場合、防食機能の回復措置が大規模なものとなるまで進行することも懸念される。

なぜならば、母材の腐食に至っていない状況ではあるが、著しい湿潤環境ではなく急速に劣化が進行する可能性は低い一方で、急速に劣化した場合には防食機能の回復措置が今行うよりも大規模になり不合理となるためである。





《問題例2》
 ○○橋にRC桁に見られる「ひびわれ」について、部材の健全性の診断に関する所見を記述せよ。


  【参考写真】

           



《回答例1》

  主桁支間中央付近に幅は狭く、分散したひび割れが見られる。他の主桁を含め、漏水跡や雨水などの水掛り跡は見られないこと、また間詰め床版にひび割れや打ち継ぎ目からの漏水は見られないことから、最も荷重(曲げモーメント)が大きい主桁支間中央部で、荷重(曲げモーメント)によりひび割れが発生したと推測される。
 荷重(曲げモーメント)に対し鉄筋量が十分でない場合は応力超過の可能性があるが、ひび割れ幅は狭く分散していることから、RC部材として通常の荷重に対しては十分な強度を有しているものと考えられる。また、さび汁は見られず内部鉄筋は腐食に至っていないと推定されることから、主桁の耐荷力、強度は当初に比べて低下していないと推定される。
 荷重(曲げモーメント)が原因と推測されることから、荷重条件や雨水影響などの環境変化がなければ、急速な変化は生じにくいと推定される。ただし、漏水など水分供給がある場合は、急激に進行する可能性がある。
 現時点では、間詰め床版からの漏水や水掛かりもなく、湿潤な環境ではないが、漏水などの影響がある場合は、変状が拡大する可能性があることから、予防保全の観点から次回点検までに、内部鉄筋の防食を目的に、水の侵入防止措置を行うことが望ましい。


《回答例2》
 主桁の支間の中央部あたりに分散している縦方向のひびわれが確認出来る。変状原因は、交通荷重と推測される。なぜならば、最も曲げモーメントが大きい支間中央部に発生した分散ひび割れのためである。また、漏水跡や、雨水などの水掛り跡、間詰め床版のひび割れ等は見られないとともに、海岸線から○○km程度離れており、地形条件からも塩分の影響も受けないと考えられるためである。
 現状では、主桁の耐荷機能は維持していると推定される。なぜならば、ひび割れ幅は狭く分散しているものの、他方、さび汁は見られず内部鉄筋は腐食に至っていないと推定されるためである。
 当初より荷重が増えている可能性があり、大型車通行時は、応力超過が生じている可能性がある。今後、大型車の通行が増加すれば、応力超過が生じる頻度が多くなるので、変状の進行速度が上がる可能性がある。以上より、予防保全の観点から、次回点検までに、交通特性の変化を調べた上で、耐荷力増強を目的とした措置を必要に応じて行うのがよいと考えられる。


《回答例3》
 主桁支間中央付近に幅は狭く、分散したひび割れが見られる。他の主桁を含め、漏水跡や雨水などの水掛り跡は見られないこと、また間詰め床版にひび割れや打ち継ぎ目からの漏水は見られないことから、最も荷重(曲げモーメント)が大きい主桁支間中央部で、荷重(曲げモーメント)によりひび割れが発生したと推測される。
 荷重(曲げモーメント)に対し鉄筋量が十分でない場合は応力超過の可能性があるが、ひび割れ幅は狭く分散していることから、RC部材として通常の荷重に対しては十分な強度を有しているものと考えられる。また、さび汁は見られず内部鉄筋は腐食に至っていないと推定されることから、主桁の耐荷力、強度は当初に比べて低下していないと推定される。
 荷重(曲げモーメント)が原因と推測されることから、荷重条件や雨水の影響など環境変化がなければ、急速に進行しないものと推定される。
 現時点では、間詰め床版からの漏水や水掛かりもなく、湿潤な環境ではないことから、変状が拡大する可能性は低いため、予防保全の観点、構造物の機能回復の観点いずれからも、次回点検までに特段の対策を行う必要はない状態と考えられる。    


Ⅰ.2(1)~(3)の理解を助けるために、回答例1~3についてⅠ.2(1)~(3)に分解してみたものが下表である。

【例2】 ひびわれの評価


項目1


項目2

(本例では全10項目)


 《回答例1》


 《回答例2》

 
《回答例3》

テキストに記載の
項目との対応

a.観察事実

1.変状の事実
(変状の種類、位置、性状)

主桁支間中央付近に幅は狭く、分散したひび割れが見られる。

 

・主桁の支間の中央部あたりに分散している縦方向のひびわれが確認出来る。
・他の主桁を含め、漏水跡や雨水などの水掛り跡は見られないこと、また間詰め床版にひび割れや打ち継ぎ目からの漏水は見られない

主桁支間中央付近に幅は狭く、分散したひび割れが見られる。

 

損傷程度の大小

 

b.現状の推定

2.機能、強度、耐荷力に与える影響度合いの推定

・RC部材として通常の荷重に対しては十分な強度を有しているものと考えられる。
・主桁の耐荷力、強度は当初に比べて低下していないと推定される。

・現状では、主桁の耐荷機能は維持していると推定される。
・大型車通行時は、応力超過が生じている可能性がある。

・RC部材として通常の荷重に対しては十分な強度を有しているものと考えられる。
・主桁の耐荷力、強度は当初に比べて低下していないと推定される。

損傷箇所の応力状態耐耐荷性能、機能、安全性等に与える影響

3.推定の根拠

・荷重(曲げモーメント)に対し鉄筋量が十分でない場合は応力超過の可能性があるが、ひび割れ幅は狭く分散していることから、
・さび汁は見られず内部鉄筋は腐食に至っていないと推定されることから、

・なぜならば、ひび割れ幅は狭く分散しているものの、他方、さび汁は見られず内部鉄筋は腐食に至っていないと推定されるためである。
・当初より荷重が増えている可能性があり、

・荷重(曲げモーメント)に対し鉄筋量が十分でない場合は応力超過の可能性があるが、ひび割れ幅は狭く分散していることから、
・また、さび汁は見られず内部鉄筋は腐食に至っていないと推定されることから、

.原因の推定

4.原因の推定

最も荷重(曲げモーメント)が大きい主桁支間中央部で、曲げモーメントによりひび割れが発生したと推測される。

変状原因は、交通荷重と推測される。

最も荷重(曲げモーメント)が大きい主桁支間中央部で、曲げモーメントによりひび割れが発生したと推測される。

損傷要因や進行・拡大の可能性
環境条件

 

5.推定の根拠

他の主桁を含め、漏水跡や雨水などの水掛り跡は見られないこと、また間詰め床版にひび割れや打ち継ぎ目からの漏水跡は見られないことから、

なぜならば、最も曲げモーメントが大きい支間中央部に発生した分散ひび割れのためである。また、漏水跡や、雨水などの水掛り跡、間詰め床版のひび割れ等は見られないとともに、海岸線から○○km程度離れており、地形条件からも塩分の影響も受けないと考えられるためである。

他の主桁を含め、漏水跡や雨水などの水掛り跡は見られないこと、また間詰め床版にひび割れや打ち継ぎ目からの漏水は見られないことから

.進行・拡大の可能性

6.拡大の可能性
(速度含む)

・荷重条件や雨水影響などの環境変化がなければ、急速な変化は生じにくいと推定される。
・ただし、漏水など水分供給がある場合は、急激に進行する可能性がある。

変状の進行速度が上がる可能性がある。

・荷重条件や雨水の影響など環境変化がなければ、急速に進行しないものと推定される。
・変状が拡大する可能性は低いため

環境条件

7.推定の根拠

 

荷重(曲げモーメント)が原因と推測されることから、

今後、大型車の通行が増加すれば、応力超過が生じる頻度が多くなるので、

・荷重(曲げモーメント)が原因と推測されることから、
・現時点では、間詰め床版からの漏水や水掛かりもなく、湿潤な環境ではないことから、

f.措置方針

8.観点・目的

・予防保全の観点から
・内部鉄筋の防食を目的に、水の侵入防止措置を行うことが望ましい。

・予防保全の観点から
・交通特性の変化を調べた上で、耐荷力増強を目的とした措置を必要に応じて行うのがよいと考えられる。

予防保全の観点、構造物の機能回復の観点いずれからも特段の対策を行う必要はない状態と判断する。

措置方針
環境条件

9.緊急性
(実施時期)

・次回点検までに

・次回点検までに

・次回点検までに

10.根拠

現時点では、間詰め床版からの漏水や水掛かりもなく、湿潤な環境ではないが、漏水などの影響がある場合は、変状が拡大する可能性があることから、

以上より

現時点では、間詰め床版からの漏水や水掛かりもなく、湿潤な環境ではないことから、




《問題例3》
 ○○橋の床版に見られる「床版ひびわれ」について、部材の健全性の診断に関する所見を記述せよ。

   【参考写真】   
  
               

             


《回答例1》
  床版端部付近に局部的で格子状の床版ひびわれが見られる。ひび割れからは漏水跡や遊離石灰の析出があるが、乾いた状態である。
 直上の舗装には、格子状の割れも確認出来るため、変状が舗装にも影響を及ぼすほど床版の剛性が局所的に低下していると考えられる。
 ひびわれからは錆汁は確認出来ないため内部鉄筋の腐食に至っていない可能性があると推定されるが、ひびわれから漏水跡や遊離石灰の析出跡が見られることからひびわれは貫通している可能性があり、疲労がかなり進展しているものと推定されることと舗装面の状態から、床版の耐荷力が局部的に低下した状態であると推定される。
 ひび割れは、乾燥収縮により生じた一方向ひび割れが、車両通行による繰り返し荷重が原因で疲労が蓄積し格子状の貫通ひび割れに進展したと推定される。
 ひび割れ上部の橋面舗装の状態から、現状において床版コンクリートの土砂化が生じている可能性もあると推定される。
 荷重の変化が無くとも、水の供給があること及び疲労が原因と想定されることから、今後確実に進行し、その速度は急速に速くなる可能性がある。
 特に貫通ひび割れの可能性があるため、ひび割れ密度が比較的低い現状のままで抜け落ちに至る可能性も否定できないことから、床版の耐荷力確保の観点から早期に原状回復を目的とした措置を行うべき。
    

《回答例2》
  格子状の床版ひびわれが、床版端部付近に○○cm×○○cmの範囲で発生している。床版ひびわれから漏水や遊離石灰の析出跡が確認出来るが錆汁は確認出来ず、乾いた状態である。
 びわれ直上部の橋面の舗装には亀甲クラックや部分的なへこみも発生している。桁や支承部など周辺部材には変状は見られない。
 直上の橋面舗装には変状があるが、桁や支承部には変状が無い事も考慮すれば、ひび割れは乾燥収縮により生じた一方向ひびわれが、車両通行による疲労が原因で格子状のひびわれに進展したと推定される。
 現時点では床版の耐荷力は局所的に低下した状態と推定され、変状箇所の抜け落ちなどが発生する可能性があると推定される。なぜならば、漏水や遊離石灰の析出跡が見られることから貫通ひびわれの可能性があること。舗装面の現状から見て雨水の供給もあるため床版コンクリートが土砂化している可能性も想定されるため。
 今後ひびわれは確実に進行し、その速度は急に速くなる可能性がある。なぜならば、疲労が原因と想定されるひびわれ箇所に橋面から水の供給がされるためである。
 以上より、現段階で、機能確保の観点から早期に耐荷力回復及び水の浸入防止を目的とした措置を行うべきと考えられる


Ⅰ.2(1)~(3)の理解を助けるために、回答例1~3についてⅠ.2(1)~(3)に分解してみたものが下表である。

【例3】 床版ひびわれの評価

項目1

項目2
(本例では全12項目)

《回答例1》 《回答例2》

テキストに記載の
項目との対応

a.観察事実

1.変状の事実
(変状の種類、位置、性状)

床版端部付近に局部的で格子状の床版ひびわれが見られる。ひび割れからは漏水跡や遊離石灰の析出があるが、乾いた状態である。

・格格子状の床版ひびわれが、床版端部付近に○○cm×○○cmの範囲で発生している。床版ひびわれから漏水や遊離石灰の析出跡が確認出来るが錆汁は確認出来ず、乾いた状態である。
・桁や支承部など周辺部材には変状は見られない。

損傷程度の大小

b.現状の推定

2.機能、強度、耐荷力に与える影響度合いの推定

 

床版の耐荷力が局部的に低下した状態であると推定される。

現時点では床版の耐荷力は局所的に低下した状態と推定され、変状箇所の抜け落ちなどが発生する可能性があると推定される。

損傷箇所の応力状態耐耐荷性能、機能、安全性等に与える影響

3.推定の根拠

ひびわれからは錆汁は確認出来ないため内部鉄筋の腐食に至っていない可能性があると推定されるが、ひびわれから漏水跡や遊離石灰の析出跡が見られることからひびわれは貫通している可能性があり、疲労がかなり進展しているものと推定されることと舗装面の状態から

・ひび割れ上部の橋面舗装の状態から、現状において床版コンクリートの土砂化が生じている可能性もあると推定される。

なぜならば、漏水や遊離石灰の析出跡が見られることから貫通ひびわれの可能性があること。舗装面の現状から見て雨水の供給もあるため床版コンクリートが土砂化している可能性も想定されるため。

c.原因の推定

4.原因の推定

ひび割れは、乾燥収縮により生じた一方向ひび割れが、車両通行による繰り返し荷重が原因で

ひび割れは乾燥収縮により生じた一方向ひびわれが、車両通行による疲労が原因で格子状のひびわれに進展したと推定される。

損傷要因や進行・拡大の可能性
環境条件

5.推定の根拠

 

疲労が蓄積し格子状の貫通ひび割れに進展したと推定される。

直上の橋面舗装には変状があるが、桁や支承部には変状が無い事も考慮すれば、

d.進行・拡大の可能性

6.拡大の可能性
(速度含む)

・今後確実に進行し、その速度は急速に速くなる可能性がある。

今後ひびわれは確実に進行し、その速度は急に速くなる可能性がある。

7.推定の根拠

荷重の変化が無くとも、水の供給があること及び疲労が原因と想定されることから、

なぜならば、疲労が原因と想定されるひびわれ箇所に橋面から水の供給がされるためである。

.必要に応じて周辺部等に与える影響の推定

8.着目する部材の変状が他の部材に今現在与えている影響など

格子状の割れも確認出来るため、変状が舗装にも影響を及ぼすほど床版の剛性が局所的に低下していると考えられる。

・亀甲クラックや部分的なへこみも発生している。

 

他の部材の異常や損傷との関連性
損傷部周辺の局部的な応力状態
環境条件

9根拠

直上の舗装には、

・ひびわれ直上部の橋面の舗装には

f.措置方針

10.観点・目的

・床版の耐荷力確保の観点から
・原状回復を目的とした措置を行うべき。

・機能確保の観点から
・早期に耐荷力回復及び水の浸入防止を目的とした措置を行うべきと考えられる。

措置方針

11.緊急性
(実施時期)

・早期に

・現段階で、

12.根拠

特に貫通ひび割れの可能性があるため、ひび割れ密度が比較的低い現状のままで抜け落ちにる可能性も否定できないことから、

以上より、






















































































Ⅳ.道路橋毎の診断の例

○回答の評価は、道路橋毎の健全性の総合的な判断が適切に考慮され、それらが所 見として適切に記述されているかを評価する。



【抜粋】
〔道路構造物管理実区者研修(橋梁初級Ⅰ)道路橋の定期点検に関するテキスト(P4-38)〕 

4.5.6 橋毎の取扱いの区分、橋毎の健全性の診
 定期点検では、道路法施行規則に定められるとおり、橋単位で、その取扱いを表-4.5.4により区分する。道路橋毎の診断は、部材単位で補修や補強の必要性を評価する点検とは別に、道路管理者が保有する道路橋全体の状況を把握するなどの目的で行うものであり、道路橋毎に総合的な評価をつける。部材単位の健全度が道路橋全体の健全度に及ぼす影響は、損傷の進展速度、又は、構造特性や架橋環境条件、当該道路橋の重要度等によっても異なるので、部材単位の健全性の診断とは別に評価を行う。
 しかし、ひとつの方法として、部材単位の健全性の判定において橋に与える影響も考慮しながら判定をしておくことで、構造物の耐荷性能に影響を直接的に及ぼす主要な部材に着目して、それらの部材の判定の中で最も厳しい評価で代表させることで、ほとんどの場合には構造物の耐荷性能については安全側の評価を与えると考えて良い。





《問題例4》
 ○○橋の健全性の診断を行うに当たり、特に着目した部材と変状について、着目した理由を記述せよ。


《回答例》  
 
<着目した部材とその変状>  
 部材:床版  変状:床版ひびわれ

<着目した理由>
 主要部材である床版のひびわれは、密度は低いものの漏水・遊離石灰を併発していることから貫通している可能性が否定できないこと、今後交通条件の変化も見込まれないことから、疲労が原因で急速に進展し、場合によって抜け落ちに至る可能性も否定できないと推測された。このため、最も本橋の耐荷性能に直接的に影響を及ぼす可能性が高いと推測される床版ひびわれに着目することとした。





 研修の内容やテキスト等の内容、また、試験問題例やその解答、また、記録方法の要点や関連する記述については、一切の質問や問い合わせには回答しませんので、その点を理解し、活用してください。



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