路車連携した高速道路サグ部等における交通円滑化に関する研究

 ※本研究は産学官連携功労者表彰における「国土交通大臣賞」を受賞しています。


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   国総研では「サグ部」と呼ばれる渋滞多発箇所の渋滞削減を目指して、
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  ~本研究の成果をとりまとめました~
  「高速道路サグ部等の渋滞箇所への効果的な交通円滑化対策の実現
  にむけて」中間とりまとめ  =高速道路サグ部等交通円滑化研究会=
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研究の背景と目的

  • ETCの普及により料金所渋滞がほぼ解消された現在、我が国の都市間高速道路における渋滞は、約6割がサグ部において発生しており、サグ部における渋滞対策が喫緊の課題となっている。
  • サグ部の渋滞対策は、その渋滞発生メカニズムから、車間距離や車速を制御可能なアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)技術の活用によって渋滞削減効果が期待できることが指摘されており、自動車メーカ等においても、近年、ACC技術の交通円滑化対策への活用に関する検討が始まっている。
  • 本研究では、自動車メーカ等と連携して、路車間通信技術であるITSスポット等を活用し、ACC機能を搭載した車両(以下、「ACC車両」という。)との路車連携による、サグ部等の渋滞箇所への効果的な交通円滑化対策を確立することを目的としている。
都市間高速道路における渋滞量
都市間高速道路における渋滞量

サグ部の道路構造と交通への影響
サグ部の道路構造及び全国の渋滞発生箇所

研究概要

  • 本研究では、サグ部における渋滞発生メカニズムを明らかにした上で、発生要因に対応した路車間連携サービスを整理し、さらにそれらのサービスについて、ミクロ交通シミュレーションを用いた試算を行い、道路インフラとACC車両の連携による渋滞緩和効果の検証を実施した。
  • 検討にあたっては、有識者、道路管理者、自動車メーカ等で構成する「高速道路サグ部等交通円滑化研究会」を開催し、平成25年度(2013年度)に開催されるITS世界会議(東京)に向けて、自動車会社が進めている交通流制御に関する活動との連携など、官民連携して検討を行った。

高速道路サグ部等交通円滑化研究会 概要


研究目的

インフラ側技術と車両側技術の連携による、サグ・上り坂部をはじめとする渋滞箇所への効果的な交通円滑化対策を研究し、その普及のあり方について検討する。

研究期間

平成22年 ~

検討項目

  • サグ部の渋滞発生メカニズムの整理(研究事例の収集・整理)
  • 交通円滑化対策の目標とコンセプトの整理
  • インフラ側技術と車両側技術との連携サービスの具体化
  • 走行実験内容の検討及び実施・ドライバーに対する広報・啓発活動等の検討・実施
  • ITS世界会議東京2013ショーケースに向けた準備
  • サグ部等交通円滑化対策の普及のあり方の検討

高速道路サグ部等交通円滑化研究会メンバー
項目 概要
有識者 大口 敬 教授(東京大学) 【座長】
葛西 誠 助教(東京理科大学)
民間 トヨタ自動車、日産自動車、本田技術研究所、マツダ、富士重工業、中日本高速道路会社
オブザーバー 東日本高速道路会社
西日本高速道路会社
首都高速道路株式会社
行政 国土交通省道路局
国土交通省自動車局
国土交通省国土技術政策総合研究所 【事務局】

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研究成果

(1)サグ部の渋滞発生要因

  • サグ部の渋滞はドライバー心理、車両挙動のばらつきが集積して起こる複雑な現象である。サグ部渋滞箇所の多くは用地制約等により道路拡幅等のハード的対策が困難であり、ITSをはじめとするソフト的対策が求められている。
  • 既往の研究成果、及び東名高速大和サグ下り(22.49kp)付近の車両感知器データや路側のビデオ映像等の解析により、当該個所で発生している渋滞の発生要因を解明した。
サグ部の渋滞発生メカニズム
サグ部の渋滞発生メカニズム

  • サグ部での渋滞発生要因は大きく、①追越車線への交通集中による車線利用の偏り、②ドライバーごとの車間のばらつき、③渋滞先頭位置通過後の速度回復の遅れの3つに分けられる。
サグ部等における渋滞発生要因 サグ部等における渋滞発生要因

(2)道路と自動車の連携による渋滞対策サービス

サグ部の渋滞発生メカニズムを踏まえ、道路と自動車が連携して渋滞解消をめざすサービスを整理した。

①交通円滑化走行

  • サグ部での渋滞発生要因は大きく、①追越車線への交通集中による車線利用の偏り、②ドライバーごとの車間のばらつき、③渋滞先頭位置通過後の速度回復の遅れの3つに分けられる。
  • これらの要因に対応し、渋滞緩和に繋がる走行方法を3つに集約した『交通円滑化走行』を提案した。具体的には、①キープレフトの遵守による車線利用の平準化、②適正な車間の維持による減速波の抑制、③渋滞先頭位置通過後の速やかな速度回復の3つを交通状況に応じてドライバーが実施するものである。

②道路と自動車が連携した渋滞対策コンセプト

  • 交通円滑化走行を容易に実現することを目的として、道路と自動車が連携した渋滞対策のコンセプトを整理した。
  • 道路と自動車が連携した渋滞対策とは、道路インフラ側でリアルタイムに交通状況を把握し、渋滞発生の前兆を検知すると路側の情報提供装置からカーナビ画面を通じ、ドライバに適切な走行方法を促す推奨情報を提供するもの。
  • 路側からの情報提供にはITSスポットとよばれる路車間通信アンテナを、車間の制御には、近年普及が進みつつあるACC(Adaptive Cruise Control)と呼ばれる自動車技術を活用する。
  • サービス2やサービス3では、ACCを搭載した車両であれば誰もが容易に適正かつ一定の車間を維持した走行が可能となる。さらに、将来的なサービスとして、近年実用化が期待されているCACC(Cooperative ACC)と呼ばれるシステムを活用することで、より安定した交通流が実現可能となる。
サグ部等における道路と自動車が連携して渋滞解消をめざすサービスの整理
サグ部等における道路と自動車が連携して渋滞解消をめざすサービスの整理

サグ部等における路車連携サービスの分類 サグ部等における路車連携サービスの分類
ACC/CACCについて
ACC/CACCについて

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(3)ミクロ交通シミュレーションによる効果評価


①ミクロ交通シミュレーションでの再現挙動

ミクロ交通シミュレーションでは、一般的な車両挙動に加え、図のように渋滞要因となるサグ部に特有な車両挙動を再現した。これにACC車両などの交通円滑化走行※1を行う車両の挙動を追加し、これら車両挙動パラメータを走行実験データにもとづき調整したモデルを構築した。このモデルに実際の交通量データを入力し、渋滞状況を観測値と比較することで適切に再現できているか検証を行った。

※1 キープレフトを遵守する傾向についても挙動として再現。

ミクロ交通シミュレーションで再現した渋滞要因となるサグ部に特有な車両挙動
ミクロ交通シミュレーションで再現した渋滞要因となるサグ部に特有な車両挙動


②交通円滑化走行車の混入率に応じた渋滞削減効果

東名高速道路下り大和サグ部において発生頻度が全体の約7割を占める比較的小規模な渋滞(渋滞量15km・h程度)のケースを想定し、サービスの提供を受けた車両(円滑化走行車)の混入率に応じた渋滞損失時間の削減率を確認した。円滑化走行を実施する車両※2が20%混入することで、渋滞損失時間※3が約24%削減される結果となった。

※2 交通円滑化走行車の平均的な車間時間はサグ部手前で約1.75秒、上り坂部で約1.5秒とし、上り坂部では先行車に遅れないよう俊敏に追従すると仮定した。

※3 渋滞損失時間とは、ある区間を走行する際に要する基準的な旅行時間(70km/h走行を想定)から、実際の旅行時間を引いた時間のこと。

交通円滑化走行を行う車両の混入率による渋滞損失時間の削減
交通円滑化走行を行う車両の混入率による渋滞損失時間の削減

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(3)公道走行基礎実験による検証

サグ部の渋滞緩和に寄与する円滑化走行のうち、適正な車間時間の維持がドライバー自らの運転操作で実現可能か、周辺交通に悪影響を及ぼさないかを確認するため、公道走行基礎実験を実施した。


【実験概要】

  • 実験期間
    H24年11月、H25年1月 (土曜・祝日の早朝を対象)
  • 実験場所
    東名高速道路下り・大和サグ付近
  • 実験条件
    実験車両としてACC非 搭載車8台、ACC搭載車1~5台を 渋滞発生直前の交通量の多い時間帯に投入し、車間時間の変動を少なくする走行をサグ区間内で被験者ドライバーに実施してもらう
実験場所位置図
実験場所位置図
公道走行基礎実験の実施イメージ
公道走行基礎実験の実施イメージ

【公道走行基礎実験結果】

  1. 車間時間2秒を目標とする運転により、車間時間のばらつきの少ない走行が実現できる可能性が確認できた
  2. 周辺車両による実験車両前方への割り込み、左側車線からの追い越し等の危険挙動の発生は確認されなかった
  3. 減速波の発生や交通流率の低下等の悪影響は明確には確認されなかった

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ITS世界会議東京2013でのデモンストレーション

  • ITSスポットとACC/CACC車両を活用した路車間・車車間連携による高速道路サグ部の渋滞緩和を目的とした交通円滑化走行を実施。
  • ITSスポットから交通状況に応じた交通円滑化に資する走行方法を促す情報を提供し、車間を自動制御するACCやこれに車車間通信機能を加えたCACCを活用してスムーズな交通流を実現。これによって高速道路における渋滞緩和を目指す。
  • デモンストレーター:国土交通省道路局、国土交通省国土技術政策総合研究所、スマート交通流制御研究会(カーメーカー5社)、一般財団法人道路新産業開発機構
ITS世界会議東京2013ショーケースの概要
ITS世界会議東京2013ショーケースの概要


「高速道路サグ部の交通円滑化サービス」ショーケース説明ビデオ
※ショーケース説明ビデオを別ページで再生


今後の展開

  • 今後は、公道走行基礎実験により得られたデータを活用し、交通シミュレーションにより一定車間を維持する走行を行う車両の混入率に応じた渋滞緩和効果を把握するとともに、ドライバへの効果的な情報提供方法について検討する予定である。
  • 今後はさらに路車間連携サービスの具体化、導入・普及に向けた検討を進める。