−ヒートアイランド対策の総合的評価手法の開発−

国土交通省総合技術開発プロジェクト

都市空間の熱環境評価・対策技術の開発

(平成16〜18年度)

2007/05/15更新


○ 研究目的

ヒートアイランド現象は、大都市中心部等において観測される新しい都市の環境問題の一つとして、緊急に対策を講ずるべき課題となっている。ヒートアイランド現象は、気温上昇の要因となる地表面被覆と人工排熱、地形・気象条件等が相互に影響しあうなどメカニズムが複雑で未解明な部分が多く、科学的知見が充分に得られていない状況にある。

このような状況を踏まえ、今後のヒートアイランド対策が効果的に実施できるように、その科学的裏付けとなる現象解明と対策の定量的評価手法等の開発を行うため、国土交通省総合技術開発プロジェクト「都市空間の熱環境評価・対策技術の開発」を平成16年度から3年間で実施した。

この研究開発は、様々なヒートアイランド対策(緑化や空調機器の省エネ化、保水性舗装、地域冷暖房、水と緑のネットワーク化や「風の道」への配慮など)の効果を総合的に予測できるパソコンソフトを開発し、将来は国や地方公共団体等に提供することを目指すものである。

ここからプロジェクトの概要資料をダウンロードできます。

総合技術開発プロジェクト「都市空間の熱環境評価・対策技術の開発」(PDF)

 

○ 技術開発のトピック

本プロジェクトは、地域の特性に配慮した効果的なヒートアイランド対策を推進するために、スーパーコンピュータや実測調査、風洞実験などの科学的手法を駆使して様々な対策の効果を総合的に予測可能なシミュレーション技術を開発し、ヒートアイランド対策やまちづくり等の施策の評価ツールとして活用することを目指して実施された。技術開発の概要は以下の通りである。

 

(1)ヒートアイランド現象に関する大規模実測調査(平成17年夏に実施)

ヒートアイランド対策として重要な要素のひとつとして考えられる風の効果や影響について、現象の解明と効果の定量化を行うため、東京都心・臨海部の街路や河川、ビル屋上等190箇所で、世界的にも例のない大規模かつ詳細な気象観測を実施した。海風(海から吹く涼風)の効果の実態を確認して海風の活用の有効性を解明するとともに、ヒートアイランド対策としての「風の道」の性状を分析した。

 

(2)市街地模型の風洞実験による風の挙動の検討(平成18年夏に実施)

ヒートアイランド対策の観点から、市街地改造が都市の風通しに及ぼす影響・効果を把握するため、大規模な市街地再開発が計画・検討されている東京駅・日本橋川周辺を再現した市街地模型について風洞実験によるケーススタディを行った。

 

(3)地球シミュレータによる対策効果シミュレーション技術の開発(平成16〜18年度に実施)

様々なヒートアイランド対策効果を評価するために、世界最速レベルのスーパーコンピューター(地球シミュレータ)によるシミュレーション技術を開発した。これにより都市全体の様々な街並みの気温や風の流れの計算が可能になり、シミュレーション結果と(1)の大規模実測調査のデータとを比較した結果、1℃以内の誤差で真夏の建物周辺や幹線道路等の街路の気温が予測可能となった。

 

(4)地理情報の高度化・活用技術の開発(平成16〜18年度に実施)

対策効果シミュレーションに必須な都市全域にわたる地理情報データを効率的に収集・整備するため、航空レーザ測量等により都市の複雑な凹凸や植生の分布、表面温度を効果的に把握する手法や、地球観測衛星データを分析して都市圏スケールで緑や地物の実態を表す土地被覆情報を把握する手法等を開発した。

 

(5)パソコンによる対策効果シミュレーションソフトの開発(平成18年度に実施)

(3)の地球シミュレータによる対策効果シミュレーション技術を、国や地方公共団体向けに実用化するために、パソコン上でもシミュレート可能なソフトを試作するとともに、これを用いて総合的な対策効果のシミュレーションのケーススタディを行った。

 

○ 検討会

 研究開発に取り組むにあたって、学識経験者からの助言を得るために、下記メンバーによる検討会を設置して、本プロジェクトの最終年度の18年度まで、年間2回程度開催した。なお、検討会の事務的作業は(財)国土技術研究センターに委託して実施した。

座  長  尾島 俊雄  早稲田大学理工学部教授
       花木 啓祐  東京大学大学院工学系研究科教授
       梅干野 晁  東京工業大学大学院総合理工学研究科教授
       丸田 頼一  千葉大学名誉教授
       三上 岳彦  首都大学東京大学院理学研究科教授

臨時委員 成田 健一  日本工業大学工学部教授
 (五十音順、敬称略)

事務局 国土技術政策総合研究所、国土地理院、独立行政法人建築研究所

※検討会には、国土交通本省関係課、気象庁、環境省、東京都等も参画した。

 

○ 検討会資料

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○ 報告会資料

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○ 記者発表資料

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○ 関連サイト

·        国土地理院 国土環境モニタリング(地球観測衛星データによる広域熱環境把握技術の開発)

 


 

国土交通省 環境ポータルサイト