都市防災研究室が関連した過去の研究



地震時の市街地火災等に対する都市の脆弱部分及び防災対策効果の評価に関する研究(平成26〜28年度)

 老朽木造家屋が密集し道路基盤も未整備な密集市街地においては、大地震時に市街地火災等による犠牲者が相当数見込まれてことから、国及び地方公共団体においては、その解消を目標として対策を講じている。しかしながら、建築物や敷地、道路等の密集市街地の条件や広域避難路等の周辺の状況により防災面での脆弱部分が、大都市を中心になお残る可能性がある。
 本研究では、密集市街地において大きな被害をもたらすおそれのある災害事象について、その影響の程度や、起こりやすい地域の範囲、起こりやすい条件等を最新の知見をもとに解明し、脆弱と考えられる領域・事象を明らかにするとともに、それらに対する対策効果の評価技術を確立することを目的とするものである。

公園緑地における眺望保全・再生方策に関する研究(平成23〜27年度)

 借景、富士見など、地域景観を特徴付ける眺望は、古くから日本人に親しまれている。なかでも、公園緑地は、眺望の視点場として、あるいは城郭等の公園施設が眺望の視対象として、重要な役割を果たしてきたとともに、公園緑地内部の景観とも連携し、質の高い良好な景観を形成してきた。ところが、近年、公園緑地周辺の都市開発等により、良好な眺望が阻害される状況が全国各地で発生しており、各地方公共団体は、平成17年に全面施行された景観法等を活用して眺望の保全に取組んでいる。しかし、眺望保全の考え方や手法が未だ確立していないことなどから、眺望阻害の発生後に取組みを講ずる場合が多く、取組みの効果が十分には発揮されていない状況にある。
 そこで本調査は、地域景観を特徴付ける眺望の保全・再生を促進することを目的として、日本庭園等の公園緑地における眺望の保全・再生を支援するため、公園緑地周辺の景観コントロールを実施する主体との連携が図れるよう眺望の保全・再生の考え方や眺望コントロールの手法等について検討するものである。

沿岸都市の防災構造化支援技術に関する研究(平成24〜26年度)

 東北地方太平洋沖地震は、被災した沿岸の都市において、津波に対する避難、防災拠点施設の機能確保、広範囲の液状化など、巨大地震に対する防災上の脆弱性を明白にした。今後、巨大地震が想定される沿岸地域の都市においては、これらの課題に対する備えを検討し、防災に関するまちづくり計画に反映させながら、防災構造化を進めていく必要があるが、これまでの想定を超えるものであったことから、計画策定や支援策の充実にあたって拠り所となる技術的な指針・基準類や計画手法が確立されていない。
 このため、津波被害と宅地液状化という巨大地震で新たに浮上した我が国の沿岸都市の脆弱性の克服に当たり、国の技術指針類の整備に先立ってその中核となる技術的データや計画策定支援技術を整備する。
 今後、巨大地震が想定される沿岸都市においては、防災構造化を進めていく必要があり、計画策定や支援策の充実にあたって拠り所となる技術的な指針・基準類や計画手法の確立を図るため、シミュレーションによる避難施設の配置や避難の隘路などの評価手法をはじめ、巨大地震に備える防災構造化に関する計画策定(避難施設や防災拠点施設の配置見直し、避難路網等の整備、面的液状化抑制等)の支援・評価技術を開発するとともに、宅地における液状化対策の技術指針類の根拠データを整備する。
    宅地の液状化対策については、都市計画研究室の「宅地防災」のページへ。
沿岸都市の防災構造化のイメージ
沿岸都市の防災構造化のイメージ

今後の都市防火に求められる延焼防止対策に関する研究(平成24〜25年度)

 本研究では、市街地における延焼防止の観点から、近年都市部に普及しつつある省エネルギー技術を用いた外壁が有する新たな延焼危険性を検討すると共に、密集市街地の隣棟間延焼の危険性に関してこれまで基準が整備されてこなかった、対向する開口部の位置関係や形状の影響を確認することを目的とする。なお、関連する諸外国の基準・実例についても調査を行い、都市防火抑制の観点から有効な技術情報を整理する。
    研究項目
  1. 低炭素都市づくりに資する新技術を用いた外壁の延焼性状に関する研究
  2. 密集市街地の隣棟間延焼における開口部の影響に関する研究
  3. 諸外国における関連する基準・実例の調査

集約型都市構造を実現するための市街地の縮退方策に関する比較研究 (平成23〜25年度)

 我が国の地方都市において、今後の人口減少の進展と既に拡散してしまった市街地の現状を踏まえると、集約型都市構造の実現により都市の持続可能性を高めるためには、多くの都市で郊外市街地の何らかの縮退方策の検討が必要と考えられる、そこで本研究では、集約型都市構造の実現が迫られる人口減少下にある地方都市を対象に、こうした市街地縮退方策のあり方を検討するとともに、その実施シナリオをいくつか検討した上で、その効果(特にコストと環境負荷)・実現性・適用性等について比較検討を行うことを目的とする。
詳細は、都市計画研究室内の下記ページをご参照ください。
http://www.nilim.go.jp/lab/jbg/depopulation/depopulation.html#shrinkage
地震火災時における広域避難の円滑化に関する研究(平成21〜23年度)

 中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」が行った被害想定では、死者数は11,000人になると推定され、かつ半数以上である6,200人が火災により死亡するケースが推定されている。火災による死者発生のシナリオのうち、延焼拡大時の逃げ惑いについては、避難地への避難、に関する問題として捉えることができるが、そのためには、時間、道路や街路の整備状況、人口等、地区内の様々な条件を考慮しながら検討する必要があります。

 そこで、広域避難地までの避難に対応するとともに、避難阻害個所推定の支援、改善効果の把握に対応した、マルチエージェント型の避難シミュレーションプログラムを開発し、当該プログラムを用いた避難可能性の評価、避難阻害箇所の把握を行うことを目標として研究を行いました。

避難シミュレーションのプロトタイプ
避難シミュレーションのプロトタイプ

人口減少期における都市・地域の将来像アセスメントの研究(平成20〜22年度)

 人口の減少と高齢化が特に地方都市において進展し、財政・環境等の制約が今後さらに増大することを前提とすれば、持続可能な都市を構築するために「選択と集中」に基づく地区毎にメリハリをつけた都市施策が必須となる。こうした「選択と集中」にあたっては、施策やそれによって導かれる都市の将来像についての選択肢とそのメリット・デメリットを提示し、市民参加により選んでいくという、これまでと異なった客観的かつ透明な都市計画が必要とされると思われます。

 そこで、都市の将来像や都市施策に関する選択肢を提示した上で、行政コストや生活の質、環境負荷等の持続可能性の観点から、これらのもたらす影響を事前に評価することを可能とするための、都市施策のアセスメント技術の体系の構築に他研究室と協力して取り組みました。
アセスメントのイメージ
都市・地域の将来像アセスメントのイメージ

詳細は、都市計画研究室内の下記ページをご参照ください。
http://www.nilim.go.jp/lab/jbg/depopulation/depopulation.html#assessment
総合技術開発プロジェクト
   高度な画像処理による減災を目指した国土の監視技術の開発 (平成19〜21年度)

 国土地理院が中心となり、デジタル画像の高度な処理や地図データの融合技術を用いた精緻なシミュレーションや危険箇所の抽出、災害発生時における被害箇所の効率的かつ迅速な把握を行う技術開発を行いました。

 国土技術政策総合研究所都市研究部では、画像・基盤情報の利活用に関する開発中の市街地火災総合対策支援ツールの開発を担当しました。
 国土地理院が担当している迅速な画像取得・処理の開発によって生成した地図情報を活用し、より精緻に市街地火災シミュレーションを行い、都市計画等に役立てるもので、研究内容は下記のとおりです。
  1. 最新の火災安全工学に基づく知見を応用した市街地火災の物理モデルをさらに発展させ、都市・地域レベルの対策から建築レベルの対策まで、様々なレベルの対策効果を定量的・総合的にきめ細かな評価を可能とする、高度な市街地火災シミュレーションプログラムの開発を行った。
  2. 高度な市街地火災シミュレーションによる計算結果を、リアリティーのある映像としてPCモニター上に表示する市街地火災映像化技術を開発した。
  3. シミュレーションに必要な市街地データ及び建築物データ仕様について検討をするとともに、モデル地区における実市街地データに基づいてデータ管理及びシミュレーションの検証を行った。
高度な市街地火災シミュレーション
高度な市街地火災シミュレーション

避難地情報の統合化及び活用に関する研究(平成19〜22年度)

 平成17年には「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」が施行されるなど、大規模地震発生の危険性が高い地域における安全性向上が急務となっており、防災公園整備の必要性は益々高まっています。

 広域避難地等となる防災公園の整備に当たっては、上記特別措置法をはじめとする法律に基づく都市要件の他、人口密度等の地域要件、活断層や地盤等の立地条件、周辺道路や他の避難地の状況等、様々な条件について検討する必要があります。しかし、これらの情報を一元的に管理・活用するシステムがないため、防災公園の整備に当たって、整備効果(どの程度避難困難区域・人口が解消できるか)の把握及び整備目標の設定が困難な状況となっています。

 本研究では、避難地の検討や避難困難区域・人口の把握等に必要となる情報を、GISを活用して一元的に管理・活用するシステムの開発を行いました。

都市型社会に対応した良好な市街地環境の確保のための調査研究(平成16〜18年度)

 建築基準法集団規定の規制目的や手法についての基本的検討及び性能規定化を含めた見直しが迫られています。このため、都市型社会の生活空間に求められる望ましい市街地環境について検討するとともに、規制の効果、規制によって確保すべき市街地環境とその性能に係る評価方法や水準等について研究を行うことにより、制度の見直しに必要となる科学的・技術的基礎の蓄積を行いました。
都市公園の防災性能の評価に関する研究(平成16〜18年度)

 防災公園の計画指針等の見直しに資することを目的に、都市公園のもつ延焼防止や避難地等の防災機能の評価手法及び防災機能向上に対する投資効果分析手法の検討を行いました。

総合技術開発プロジェクト
   まちづくりにおける防災評価・対策技術の開発 (平成10〜14年度)

 平成7年の阪神・淡路大震災の経験から、延焼遮断帯といった都市レベルでの対策に加え、地区レベルの市街地の安全性向上の重要性があらためて指摘されました。また、平常時から住民が参加したまちづくり・防災対策の必要性も明らかとなり、これらを支援するための技術の開発が必要不可欠となりました。
 この要求に応えるために、(1)地区の防災性能の評価手法の開発、(2)地区の防災性能向上のための効果的対策技術の開発、(3)防災まちづくり等のための計画作成支援技術・防災対策推進方策の開発、の3つの課題に取り組みました。
 これにより、木造密集住宅市街地を対象とした、地震防災対策のあり方を確立する事を目的としています。

都市防災研究室が関連した課題
□市街地火災を抑制する諸要因の抑止効果の分析
 建物1棟の火災が市街地火災に成長するしくみを実験などによって定量的に解明するとともに、建物不燃化など火災の延焼拡大を抑制する諸要因の効果を分析して、市街地の火災安全性を評価する手法を開発しました。
□緑被地・空地等を活用した防災対策技術の開発
 緑被地・空地等がもつ防災的機能及び樹木等の防火効果等について、事例調査・分析、各種実 等を通じ詳細に把握することにより、地区の防災対策としての緑被地・空地等の活用技術、ならびに樹木等による延焼抑制技術等を開発しました。
□地区施設等の整備における防災投資に関する研究
 災害に強いまちを実現していく中で、計画案の評価、あるいは複数の計画案を相対的に評価する必要がある場合があります。このような際に、判断指標・選択指標の一つとして費用便益分析を用いて、計画案のコストパフォーマンスを簡便に評価する手法を開発しました。

市街地火災の火炎を再現する実験
市街地火災の火炎を再現する実験
市街地の延焼シミュレーション
市街地の延焼シミュレーション

地震時における人的被害と都市構造の関連分析(平成13〜15年度)

 人的被害軽減のためには即死者を減らす建物の耐震性強化に加え、遷延死や火災死を減らす安全な都市構造を形成する必要があります。そのためには正しい市街地の情報を共有し、どのように市街地を変化させていくべきなのかを、行政と地域住民がともに検討する必要があります。しかしながら、都市構造・市街地特性という視点で人的被害に関し研究した事例はあまりありません。
 そこで、阪神・淡路大震災時の建築物被害を中心とした地理情報システム情報を基礎的情報として、新たに人的被害等に関するデータを追加することによって、地震時の人的被害と都市構造の関係を分析しました。

都市における緑地の効果的整備・持続的管理に関する調査(平成13〜15年度)

 都市における緑地がもつ防災、環境保全・改善、景観形成、レクリエーションの場の提供等の多様な機能が将来にわたり十分に発揮されるために、実際の緑地事例の調査・分析により、その効果的な整備及び持続的な管理のための技術について検討しました。

緑地内樹林の実態調査
緑地内樹林の実態調査


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