第7回 堆砂


ダムは水の流れをせき止めて、洪水を防ぎ、水資源やエネルギーを取り出す施設です。しかし、川には水と一緒に土砂が流れており、これが途中で堆積して河原を形成したり、海まで流れていって海岸を形成して、いわば流砂系を形成しています。
これがダムによってせき止められてしまうと、ダムに土砂が貯まっていく「堆砂」といわれる現象が起きます。多くのダムでは、この堆砂のためのポケットをダム貯水池に設けています。
ダム堆砂が進むとダム全体が砂に埋まってしまうというのは、少し正確ではありません。この堆砂する量を少なくできれば、ダムは半永久的にその機能を維持することができます。これこそ究極の環境に優しい、持続可能な施設といえるでしょう。ここでは、ダムの堆砂対策について考えてみましょう。
まず第1に、土砂の発生をできるだけ少なくするということが考えられます。荒廃した山を保全していくことはとても大切です。これには川の上流と下流が連携していくことも大切でしょう。
しかし、いくら山を大切にしても、土砂がなくなることはありません。「流砂系」という言葉を思い出してみてください。したがって、スムーズに土砂を上流から下流に流すことが大切です。土砂の流れはまだまだ未知の部分も多いのですが、土砂は洪水時にたくさん流れることが分かっています。
そのため、出水時に砂が流れるように排砂ゲートを設けて、ここから砂を流したり、
洪水時に土砂を多く含む水をバイパスして貯水池に土砂があまり流れ込まないようにする、排砂バイパスを設けることが試みられています。
もちろん貯まった土砂を取り除くことも大切でしょう。
土砂を流すことはダムにとって、とても意味のあることです。しかし、下流にどのような影響を与えるかを十分に考えていく必要があります。黒部川ではダム排砂が社会問題になり、現在は学識経験者などで構成された専門機関を設立して、地元と協調した土砂の適切な管理を目指しています。このような経験を生かして、ダム排砂の方法を確立していくことが大切でしょう。
ダムに土砂が貯まってしまったから、ダムを壊してしまえ、というのはそれこそ使い捨てでしょう。多くの犠牲を払って作られたダムを大切に使っていくことこそ、持続可能な生活といえるのではないでしょうか?土砂の挙動をとらえるための研究、土砂を貯めないダムを目指した取組みは、そのために懸命に続けられているのです。

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