第5回 ダムの利水






私たちの国、日本は世界でも有数の多雨地帯、アジアモンスーン地帯に位置し、年間平均降水量は1710mmで世界平均の約2倍と恵まれています。しかし、狭い国土に多くの人が住んでいるため、1人あたりの降水量になると世界平均の4分の1になってしまいます。
また、山がちの地形ですから、雨が降ってもそれは一気に流れ出して洪水になる危険が高く、逆に水不足になる危険も高くなります。
その結果、日本の川の最大流量と最小流量をグラフにすると、このようになります。このように不安定な状況で、水の利用量を入れると、何と最小流量を上回っているのです。つまり、渇水が起こる可能性が高いのです。
ダムはこのような不安定な河川流量を平均化して、安定的な水利用を可能にするものです。グラフを見比べながら、ダムの働きを見てみましょう。
ダムのない自然の状態だと、水が多い時は良いのですが、ひとたび流量が減ってくると、水がなくなってしまいます。では、多い時にムダに流していた水を貯えておいて、足りない時にそれを流せば、水がない時が減りますね。これがダムの働きです。
たとえ話をすると、皆さん、貯金をしますね。それは何のためでしょうか。貯金をしないで、その時その時にお金を使っていたら、万一、収入が少なくなったりすると、たちまち困ってしまいますね。でも、貯金をしておけば、万一の時、これを使えば、何とかやりくりができます。そうです。貯金の大きさがダム貯水量の大きさに相当します。
ダムをなくして自然の川にする、一見美しいことのように聞こえますが、それは貯金をなくしてその日暮らしをしようというのと変わらないのです。もちろん貯金なんかできない、その日暮らしで精一杯、という人もいるでしょう。そんな方でも貯金があった方が、生活が安定するということは御理解いただけるのではないでしょうか?
日本はダムだらけだと思っている方もおられるようです。この図を見ると1人あたりのダム貯水量は、日本が大きくないことが分かりますね。水については残念ながら日本の貯金は小さいのです。
川の水もほとんどが海に流れていってしまうのです。考えようによってはもったいないと思いませんか?その一方で、核家族化、トイレの水洗化という生活環境の変化は、1人あたりの水利用を増やす傾向にあります。大家族で1つのお風呂を使うのと、小家族で1つのお風呂を使うのをイメージしていただくとわかりやすいですね。
もちろん、ダム建設は多大な費用がかかります。環境の影響もあるでしょう。むやみやたらとダムを作ることはできません。どうしても必要になった時にダムを建設するべきです。でも、最初からダムはいけないものだと、決めつけるのはフェアではないと思います。じっくりと話し合う場を設けることが何よりも大切でしょう。

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