第3回 治水代替案比較


豊かな緑に囲まれた空間。実に心が和むものです。森林には水源の涵養や土砂崩壊の防止、さらには水害の防止など、幅広い働きがあります。
最近、ダムの代わりに森林を整備すれば、洪水調節や水資源の確保が可能ではないかという提案が見られます。本当にダムなしで大丈夫なのでしょうか?今回は緑のダムについて考えてみたいと思います。
皆さんもご存じのように、我が国の国土の約67パーセントが森林です。意外に思われるかもしれませんが、この数字は昭和初期とほぼ同じなのです。高度成長期を通じて都市化が進展しましたが、砂防事業や治山事業で山の緑化が進められたためと考えられています。
米国やフランス、ドイツが約30パーセントであるのに比べると我が国は世界でも有数の森林大国であることがわかります。
これ以上森林を増やすことが可能でしょうか?私たちは、こうした森林があることを前提にしつつも、洪水対策や水資源の確保が求められていることを忘れてはならないと思います。
森林のメカニズムについてはまだまだ研究が進められていますが、平成12年の学術会議の答申によると、森林は流出のピークを減少させ、ピーク発生までの時間を遅らせるが、大規模な洪水ではピークに達する前に、この森林機能は飽和に達するので大きくは期待できないとしています。
また、森林自身の蒸発散作用で、長く間雨が降らないと、川に流れ出す水の量は少なくなる場合もある、としています。ですから、森林だけで洪水対策や水資源確保が大丈夫というのは少し極端だということがわかりますね。
もちろん現在存在する森林も生き物ですから、世話をすることが大切です。木を植えるだけでは不十分ですし、日頃の手入れも重要です。近年の林業の不振もあって、森林を保全することが求められています。私たちは森のことも考えなければなりません。
平成9年の河川法改正では、河川整備の目的に環境保全が追加されましたが、ダムを造る立場からも湖畔林を整備するなど努力しています。森林の機能を十分に活かしながら、さらに必要な場合にダムを作っていく、いわば森林とダムの共存が大事だと思います。

All Rights Reserved, Copyright © 2003 - 2009, Water Management and Dam Division