ダムと地震                   
Q  ダムの耐震設計はどのようにして行われているのですか?
A


















ダムは、従来から予想される各種の荷重に対して安全なように設計されていますが、この「予想される荷重」の中で地震による荷重を考慮することとなっています。この方法は一般に「震度法」と呼ばれ、具体的にはダム堤体に作用する重力に対してある割合(これをダムの設計では「設計震度」といい、ダムの形式ごとや地域ごとに最低限見込まなければならない値が定められています)の大きさの地震力が慣性力として、ダム堤体に水平に作用するものと考えます。同時に、貯水が地震によって揺すられることにより堤体に作用する力(動水圧)についても考慮します。そして、通常の状態(非地震時)で作用する荷重(堤体の自重、貯水による静水圧、泥圧堤体上流側の堆砂による圧力)などに加えてこのような地震による荷重を考慮して、ダム全体が転倒しないか、基礎岩盤上で滑動しないか、また堤体内の発生応力が材料強度に対して十分小さいかなどの安全性に係る全ての条件を確認した上で、経済性などを考慮してダムの基本形状が決定されることになります。
なお、最近では、数値解析技術の進展により、実際にダムに設置された地震計で記録された地震波形などを使って、これを有限要素モデル化したダム堤体に作用させ、時間を追ってダムの揺れ方(変位)や各部に発生する力(応力)の変化を追跡、再現する手法(動的解析)による検討も行われるようになっています。
なお、このほか動的解析の精緻さと従来から用いられてきた震度法の利点をともに取り入れた解析法として修正震度法とよばれる方法もあります。

Q ダムの耐震設計における修正震度法とはどのようなものですか?        
                                                         A











従来から長年にわたりダムの耐震設計法として用いられてきた震度法は、地震という動的な現象の影響の大きさを「設計震度」として一様に考慮するもので、静的な状態を考えた簡易な構造計算が可能なうえ、これによって設計された多数のダムがこれまでの地震に対して安全であったという実績を持っています。これに対して、動的解析はやや高度な計算技術を必要としますが、実際の地震動によるダムの動的な応答を再現できる利点を持っています。この両者の利点を合わせ、地震動によるダムの実際の応答特性を反映した静的な荷重により地震の影響を考慮できる方法として考案されたのがダムについての修正震度法です。具体的な計算法は、コンクリートダムとフィルダムで多少異なる点がありますが、いずれも実際の地震による揺れはダムの底部より上部が大きくなることを反映して、ダム堤体の底部より上部でより大きな地震による荷重が作用するものとした解析を静的な構造計算により行うことが可能です。
Q ダムの耐震設計に用いられる「震度」とはなんですか。また気象庁が発表する「震度」とどう違うのですか                                
A






設計震度は気象庁発表の震度と直接関係するものではありません。設計震度とは、地震によりダムが受ける力を荷重(水平方向)として設計上考慮する上で、その大きさをダム堤体がその自重に応じてうける重力に対する比として表したのものです。例えば、設計震度が0.12ということは、ダムの自重Wに0.12をかけた0.12Wに相当する地震による力に考慮して設計されているということです。
なお、気象庁発表の「震度」とは、その地点において実際の地震時に観測された地震動の強さの程度を表したもので、耐震設計に用いる「震度」とは全く別のものです。      
                      参考・・・気象庁HP「震度について」 
Q 「震度」と「マグニチュード」はどう違うのですか?                  
A





地震時に気象庁が発表する「震度」は、その場所での実際に揺れの大きさに対応するもので、一般に震源から遠い場所ほど小さくなります。最近では地震計による計測結果から計算により求められています。これに対して、マグニチュードは発生した地震そのものの規模を表すものです。地下の断層の破壊などによって放出されるエネルギーの大きさに対応しており、起こった地震ごとに推定されます。
                           詳しくは・・・気象庁HP       
Q 耐震設計における地域区分はどのようにしてきまっているのですか     
A



強震帯、中震帯、弱震帯の地域区分は、地域によって設計上考慮すべき地震による力の大きさ(設計震度の最低値)を区分するものです。この区分は、国内で観測された過去の多数の地震記録の調査結果などをもとに、一定の確率で起こりうる地震の強さが地域によって異なることに配慮して定められたものです。
Q ダムに湛水することで地震がおきるとききましたが                

A


ダムの近くでごく小さな地震が観測されることがあります。ダムに溜まっている大量の水とこのような地震の関係について調査された事例はありますが、その因果関係については現在のところよくわかっていません。

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