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国土交通省 国土技術政策総合研究所 環境研究部 緑化生態研究室

所外発表 2004年度

都市環境の広域的評価の指標種としてのシジュウカラ生息分布予測モデル

発行年:2004
著者名:百瀬浩・藤原宣夫・伊勢紀・橋本啓史・森本幸裕

広域的な土地利用計画立案支援の一環として、都市環境を生物指標種(シジュウカラ)の生息可能性により評価するための手法について検討した。まず、栃木県宇都宮市付近で行ったメッシュ単位の調査結果の分析から、シジュウカラは樹林との結びつきが強く、250mメッシュ内の樹林率が20%を超えると本種の出現率が50%を超える事が解った 。次に衛星画像から抽出した樹林地の分布、土地利用等を用いたシジュウカラの生息予測モデルを構築し、関東地域での広域的な潜在生息分布図を作成し、他地域での調査結果を用いてモデルの予測精度について検証した。最後に、得られた情報の土地利用計画立案における活用方法について議論した。

ランドスケープ研究,Vol.67 (5),pp491-494


農村地域の谷津におけるゲンジボタル成虫の個体数と土地被覆との関係

発行年:2004
著者名:澤田大介・加藤和弘・樋口広芳・百瀬浩・藤原宣夫

栃木県市貝町及び茂木町の農村地域の谷戸5カ所に設定した49調査地点について、2003年6月にゲンジボタル成虫の個体数を計測し、ゲンジボタルの個体数を規定する環境条件を解析した。調査地点周辺の環境条件を説明変数とした分類・回帰樹木(CART)解析の結果、水路周辺の植生、谷底部の土地利用、水路形状が個体数に影響していた。特に、水路が素堀で草本に覆われ、隣接する谷壁斜面が樹林で、かつ谷底部が水田、畑地もしくは管理された休耕地であれば、個体数が多くなることがわかった。

ランドスケープ研究,Vol.67(5),pp523-526


国営みちのく杜の湖畔公園における森林管理計画のための林床植生と環境条件の関係解析

発行年:2004
著者名:畠瀬頼子・藤原宣夫・小栗ひとみ・百瀬浩・宇津木栄津子・大江栄三     井本郁子

散策等のレクリエーション地となる森林において利用に適した林床植生を維持するには環境条件と林床植生の関係に基づく適切な管理目標の設定が必要である。本研究では、宮城県川崎町の国営みちのく杜の湖畔公園において現地調査により環境条件と林床植生の関係を明らかとし、立地区分と管理目標の設定方法を考察した。その結果、尾根・斜面と谷で林床植生の種組成は異なり、積算気温、土壌水分にも対応する差異がみられること、谷では高木密度が低いにもかかわらず相対光量子密度が小さいことが明らかとなった。これらのことから、尾根・斜面と谷とで異なる種組成・環境条件を反映させた立地区分と管理目標の設定が必要と考えられた。

ランドスケープ研究,Vol.67(5),pp543-546


地形解析による大規模丘陵地型公園の利便性の複合的評価手法の提案

発行年:2004
著者名:中橋英雄・百瀬浩・小栗ひとみ・田代順孝・藤原宣夫

本研究では、大規模公園計画において、GISを利用して地形解析を行うことで、利用のしやすさ、安全性、景観など利便性を構成するための個別の要素を評価し、さらにこれらの個別要素を統合して、複合的な視点から公園の立地特性を把握するための手法を提案することを目的とした。解析の結果、計画地の利便性を「傾斜角度」「斜面方位」「到達のしやすさ」「見晴らしのよさ」で評価し、それらを重ね合わせて利便性の複合的な評価が可能となった。

ランドスケープ研究,Vol.67(5),pp669-672


コンジョイント分析による都市公園の経済的評価に関する研究

発行年:2004
著者名:武田ゆうこ・藤原宣夫・米澤直樹

身近な都市公園の価値をコンジョイント分析を用いて公園の要素(属性)ごとの評価を行うことにより、被験者の周辺環境被験者属性との関係を分析して評価に与える要因を明らかにした結果、1)属性は公園施設より公園機能の方が信頼性の高い評価が得られた、2)緑被率の低い地域の方が高い評価が得られた、3)自然性に対する評価が高く、運動適性は求められていない、ことなどがわかった。

ランドスケープ研究,Vol.67 (5),pp709〜712


Raccoon dogs: Finnish and Japanese Raccoon dogs-on the road to speciation?

発行年:2004
著者名:Kauhala, K.Saeki, M.

日本のタヌキは果たして別種なのか?大陸産のウスリータヌキと日本のホンドタヌキ・エゾタヌキを、形態、染色体、生態、生理等において比較し、日本のタヌキが種分化の過程にあることを示唆した。

   D. MacDonald and C. Sillero-Zubiri eds. Biology and Conservation of Wild Canids,pp217-226,Oxford University Press, Oxford, UK.


全国の街路樹の動向

発行年:2004
著者名:米澤直樹

2002年に実施した全国の道路緑化の現況調査と過去に実施した調査結果を用いて全国の街路樹の動向について考察した。その結果1)高木及び中低木とも調査毎に本数は増加している、2)総樹種数は1992年まで順調に増加したが、2002調査では頭打ちの傾向にある、3)地域ごとに特徴のある街路樹が植栽されている、ことなどがわかった。

道路と自然,Vol.23,pp34-37


市販の航空機レーザスキャナデータを用いた都市公園の樹高計測

発行年:2004
著者名:山岸裕・藤原宣夫 他

データ密度の異なる2種類のレーザスキャナ市販データを用いて東京都小金井公園内の樹木の樹高計測を行い、その精度を検証した。

日本写真測量学会平成16年度年次学術講演会発表論文集

−空間情報の計測と利用−,pp183-186


生態ネットワーク計画のためのGAP分析

発行年:2004
著者名:飯塚康雄・佐伯緑・藤原宣夫 

生態ネットワーク計画の立案手法を確立するために、GIS(地理情報システム)を利用した効率的な方法を検討した。水戸市周辺を事例研究地としたGAP分析により、野生生物保護に対する現在の対策との隔たり(ギャップ)を把握し、今後のハビタットを保全・創出していくことが重要となる候補地を抽出することができた。

土木技術資料,Vol.46(7),pp38-43


国総研版騒音・振動シミュレーター GISと連携した希少猛禽類への建設事業影響予測評価システム

発行年:2004
著者名:百瀬浩・松永忠久・飯塚康雄・藤原宣夫

各種建設事業に伴い発生する騒音・振動が大きな環境問題となっており、最近では、希少猛禽類の営巣活動に対する悪影響などが問題とされるケースも増えている。こうした問題に対処するためのツールとして、国総研版騒音・振動シミュレーターを開発した。このシステムは、ダムや道路等の建設工事や供用に伴い発生する騒音・振動が、周辺地域に伝搬する状況を計算し、GIS上で予測・表示する無償のソフトウェアである。本システムを利用することにより、事業計画区域内の猛禽類の営巣地付近における騒音・振動レベルを、事業の実施前に定量的かつ視覚的に把握することができる。本稿では、本システムの概要と活用法について述べた。

土木技術資料,Vol.46(7),pp32-37


わが国の街路樹の変化 〜2002年 全国街路樹調査の結果から〜

発行年:2004
著者名:米澤直樹・藤原宣夫・武田ゆうこ

2002年調査で5回目、20年をむかえた街路樹調査結果を基に、一般道路の高木について、過去の調査資料と比較することにより街路樹がどのように変化しているのかを捉えた。その結果、全国調査の始まった1987年から比較して、1)本数は308万本増加し679万本となった、2)道路延長あたりの本数は、2.3本/km増加し5.8本/kmとなった、3)大都市を抱えた都府県と沖縄県で道路延長あたりの本数が多い、4)ハナミズキが大きく本数を伸ばしている、などがわかった。

公園緑地,Vol.65(2),pp45-48


高速道路における中型獣のロードキルと道路周辺環境との関係

発行年:2004
著者名:大竹邦暁・飯塚康雄・佐伯緑・藤原宣夫

ロードキルの発生場所を、動物の移動経路が道路によって遮断されている場所、即ちコリドーの設置地点候補ととらえ、生態系ネットワーク構想に資するために、その分布や景観構造の特性を検討した。

第51回日本生態学会大会講演要旨集,pp156


Germination characteristics of lakeshore plants under an artificially stabilized water regime.

発行年:2004
著者名:Nishihiro, J. Araki, S. Fujiwara, N. Washitani, I.

霞ヶ浦に生育する25種の植物について発芽・休眠特性を検討し、水位上昇管理が植物の発芽に悪影響を及ぼす可能性を指摘した。

Aquatic Botany,Vol.79,pp333-343


霞ヶ浦湖岸植生帯の衰退とその地点間変動要因

発行年:2004
著者名:宮脇成生・西廣淳・中村圭吾・藤原宣夫

霞ヶ浦における過去約30年の植生帯の衰退状況に対する、湖岸地形、築堤、波浪条件などの影響を分析した。

保全生態学研究,Vol.9,pp45-56


評価グリッド法を用いた道路緑地の景観評価構造分析

発行年:2004
著者名:小栗ひとみ・日野泰輔

快適性向上機能の観点から、道路緑地に求められる植樹帯幅員、緑量などの要件を探るため、環境心理調査手法である評価グリッド法を用いて、道路緑地の景観評価構造を分析した。

第6回日本感性工学会大会予稿集2004,pp133


樹木倒伏事故の防止 −樹木腐朽診断機による点検−

発行年:2004
著者名:飯塚康雄・藤原宣夫

公園や道路等の公共緑地に植栽されている樹木は日常的に人々の身近に存在していることから倒伏した際に周辺に与える障害が大きくなることが予想される。そのため、倒伏に対する危険性は事前に把握して必要な対処を施しておく必要があり、樹木の木材腐朽状況を非破壊で測定可能とする方法として、放射線(法規制外の微量放射線)が物質を透過する際の物質密度と厚さによる減弱原理を利用した方法を考案して機器を開発した。

公園レクリエーション世界大会in浜松論文集,pp407-408


Raccoon dog Nyctereutes procyonoides (Gray, 1834)

発行年:2004
著者名:Kauhala, K. M.Saeki.

世界におけるタヌキの種及び亜種の説明、分布、個体群状況、脅かす要因などを網羅したIUCNアクションプラン。

Canids: Foxes, Wolves, Jackals and Dogs. Status Survey and Conservation Action Plan. Sillero-Zubiri, C., M. Hoffmann and D. W. Macdonald eds.,pp136-142,
IUCN/SSC Canid Specialist Group


樹木倒伏事故防止のための樹木腐朽診断機の開発

発行年:2004
著者名:飯塚康雄・藤原宣夫

樹木腐朽調査は、木材腐朽が樹幹や根元内部で生じていることが多く外観からは腐朽進行状況を確認することが難しいため、現在では樹幹に径3mm程度の細い錐を電動で押し込んだ際の貫入抵抗値を測定して、その抵抗値の大小の幅により診断する方法が行われている。しかし、この方法では樹木に傷をつけてしまうことや、錐を貫入した部分の測定しか行えないことが問題となっている。これらの問題を解決するため、非破壊で定量的な診断を樹幹断面に対して面的に行うことが可能となる機器開発を行った。

平成16年度日本造園学会中部支部大会研究発表要旨集,Vol.1,pp37-38


World distribution and status of the genus Martes in 2000.

発行年:2004
著者名:Proulx, G., Aubry, K. B., Birks, J., Buskirk, S. W., Fortin, C., Frost, H. C., Krohn, W. B., Mayo, L., Monakhov, V., Payer , D., Saeki, M., Santos-Reis, M., Weir, R. and Zielinski, W. J.

2000年に開かれた第3回テン国際シンポジウム(Martes 2000)において、世界のテン属の分布や現状をまとめようということになり、6カ国、14名の研究者で、分布、生息地関連、個体数の現状と動態傾向、必要とされる研究や保護管理について種毎にレヴューし整理した。

Harrison, D. J., Fuller, A. K. and Proulx, G. eds. Marten and Fishers (Martes) in Human- altered Environments: An International Perspective,pp21-76,SPRINGER Publishers, Norwell, Massachusetts, USA.


Regeneration failure of lakeshore plants under an artificially altered water regime

発行年:2004
著者名:Nishihiro, J. Miyawaki, S. Fujiwara, N. Washitani, I.

霞ヶ浦湖岸に残存する植生帯の地形と植物の実生動態を調査し、実生定着時期の水位上昇が植物の更新に悪影響を与えることを示した。

Ecological Research,Vol.19,pp613-623


まちづくりのための景観シミュレーションの活用

発行年:2005
著者名:小林英之・小栗ひとみ

景観シミュレーション技術は、まちづくりにおける合意形成支援のための有効なツールとなりうるが、各種公共事業への応用は、必ずしも直線的に進んできていない。そこで、本稿では、過年度に開発した国土交通省版景観シミュレータを中心に、これまでの景観シミュレーション技術の景観評価への応用の技術的な進展を概観し、具体的な事業への適用にあたっての問題点・解決すべき技術的課題を整理した。

造園技術報告集2005,No.3,pp138-141


国営みちのく杜の湖畔公園におけるスギ林の林床植生復元を目指した管理技術

発行年:2005
著者名:畠瀬頼子・大江栄三・宇津木栄津子・百瀬浩・井本郁子・小栗ひとみ            藤原宣夫

しばしば自然とのふれあいの場などとして利用される里山の森林にはコナラ林などの雑木林とともにスギの人工林が多い。しかし、間伐が遅れ、立木が過密となった若齢から壮齢のスギ人工林では林床に光が届かなくなり、林床植生が貧困となる。そこで、国営みちのく杜の湖畔公園において試験的な間伐とモニタリングを行い、多様な林床植生の復元と林床植物の開花を目指したスギ林の管理技術を検討した。

造園技術報告集2005,No.3,pp50-53


景観と生態系

発行年:2005
著者名:小栗ひとみ

総合論文誌「景観デザインのフロンティア」における「重要論文のレビューとリスト」の一環として、生態系との関わりにおいて景観デザインを捉えることを目的とし、景観生態学の分野における過去10年程度の重要論文のレビューを行い、景観の構造と変化、景観の構造と機能、プランニングの観点から研究動向および文献リストをとりまとめた。

日本建築学会総合論文誌,No.3,pp143-146


マイナスからプラスへ:野生生物のための積極的な道路整備

発行年:2005
著者名:佐伯緑・飯塚康雄・内山拓也・松江正彦

道路の全国に広がるネットワーク性とのり面や植樹帯の連続性は、視点を変えれば野生生物のために活用できる可能性が高い。そこで,野生生物のための道路整備における基本理念として、1)ロードキルの防止、2)移動障害の低減、3)移動経路および生息地としての質の向上を挙げ、道路に対しての横断移動と縦断移動を確保することによる積極的な野生生物のための道路インフラの整備手法および構想の一事例を紹介する。

      第4回 「野生生物と交通 」研究発表会講演論文集,pp41-48


緑豊かな美しい街路空間の創出

発行年:2005
著者名:小栗ひとみ

豊かな緑の存在が街路景観を向上させることは、誰もが認めるところである。しかし、街路樹の特性、機能、価値に対する認識が十分でないために、厄介者扱いされるケースも少なくない。また機能・価値の評価はそこで、街路樹の役割や街路樹が抱える問題を整理した上で、問題解決に向けた研究の取り組みについて紹介する。

国総研アニュアルレポート2005,No.4,pp14-17