土地利用の変遷と将来予想に立脚した流域圏管理に関する研究

研究の目的

これまで我が国では、人口増加や経済的成長の圧力により水域や湿地を乾燥した陸地に改変してきました。しかし、もはや全国一律で右肩上がりの社会成長シナリオは適用できず、むしろこれまでの地形改変による環境劣化が問題となってきています。このため土地利用に密接に関わる治水、水資源開発、水環境保全を目的とする社会資本整備計画においても、流域毎にこれまでとは異なる今後の社会状況を見据えた戦略的な流域圏における水管理手法の確立が望まれます。本課題では、今後の社会構造変化に伴う土地利用変化を予想すると共に、これまでの変遷を考慮して、自然の地形やそれにともなう水循環特性を活かした流域圏における水管理手法について研究を行うことを目的としています。

研究の内容

研究担当:望月貴文

第39回環境システム研究論文発表会講演集(2011.10)
「全国の河川における流況・水質の経年変化の実態調査と流域環境との関連性分析」
流域環境と河川特性が河川水質および環境に与える影響の評価

河川の任意の地点において、その流域の環境特性と河川特性から河川水質・環境を評価するシステムを開発し、河川環境の現状の把握や環境保全効果の評価の実施を目指しています。

研究の背景

近年、河川の水質は下水道事業の進捗等によりBODについては改善が見られますが、窒素やリンといった栄養塩類については依然として問題が解決されておらず、河川環境や生息する生物に影響を与える上に、湖沼・内湾等の閉鎖性水域において水質問題を引き起こしています。

河川水質や環境は、流域における汚濁負荷特性や流出特性等の流域環境特性に大きな影響を受けています。また、河川形状や流量等の河川特性も河川水質・環境に影響を与えます。しかしながら、河川水質・環境の保全・改善に関する目標設定や現状評価のための具体的手法がないために、単発的あるいは狭い視点にのみ着目した事業が行われることが多くあります。

このため、流域環境特性の状況を把握するとともに、河川特性を踏まえた環境評価手法を確立し、保全・改善の方向性を定める必要があります。

研究の内容

  1. 流域特性、河川特性データを統合・表示できるGISデータベースの作成
  2. 流域環境及び河川特性と河川水質との関係分析
  3. 河川環境の人為的撹乱の程度を示す指標の提案
  4. 河川の任意の地点における流域環境、河川特性、河川環境を評価するシステムの開発

研究担当:鶴田舞・望月貴文

汽水域環境の保全・再生に関する研究

淡水と海水が混じりあう汽水域では、物理・化学的現象が複雑で、多様な生物の生息・生育の場になっています。このような複雑な物理・化学環境と生物の生息・生育との関係を踏まえ、中・長期的な地球温暖化による諸影響を考慮し、治水・利水・環境を総合的に勘案した汽水域の保全・再生・管理について提言を行うべく、研究を行っています。

研究担当:・中村圭吾・鶴田舞・望月貴文

水工学論文集(2013.02)
「十三湖における流動及び土砂動態解析とヤマトシジミの生息場評価に関する検討」
[ 論文 ] [ 発表スライド ]
水工学論文集(2012.02)
「ヤマトシジミの生息域として見た菊池川河口域の環境変遷と修復の可能性評価」
[ 論文 ] [ 発表スライド ]
水工学論文集(2012.02)
「河川汽水域における河道形状と干潟分布に関する分析」
[ 論文 ] [ 発表スライド ]
土木学会論文集G(環境)(2011.11)
「河川汽水域への海水侵入後経過時間および海水残留時間の数値解析による評価」
[ 論文 ] [ 発表スライド ]
水工学論文集(2011.2)
「十三湖におけるシルト・粘土の捕捉に着目した土砂動態の実態把握」
水工学論文集(2011.2)
「河川汽水域沿岸の植生分布と潮位の関係解析」
水工学論文集(2011.2)
「河川汽水域の環境管理技術確立のための全国一級水系の汽水域環境類型化」
河川技術論文集(2010.6)
「河口汽水域における塩水滞留時間の算定手法開発」