研究成果概要


国総研資料 第 895 号

【資 料 名】 短波海洋レーダとベイズ型モデルを用いた 浅海波の方向スペクトルの推定

【概   要】  短波海洋(HF)レーダで観測されたドップラースぺクトルの2次散乱を解析することで方向スペクトルを推定することができる.しかし,襲来する波浪の波長に対して水深が浅い海域(浅海域)では,波浪の分散関係から波浪は海底の影響を受けるようになる.これに伴い,HFレーダで観測されるドップラースペクトルの2次散乱も変化する.短波海洋レーダとベイズ型モデルを用いた既往の方向スペクトル の推定法は,深海波を仮定しており,浅海域における波浪の分散関係を考慮されていない.そのため,浅海域で既往手法を適用した場合,必ずしも精度のよい方向スペクトルが得られるとは限らない.
 そこで,本研究ではHFレーダを用いて深海域から浅海域までシームレスな波浪観測を実現するため,HFレーダとベイズ型モデルを用いた既往の方向スペクトル推定法を浅海域にも適用できるように改良した.さらに,深海波の仮定による浅海域での方向スペクトルの推定精度に及ぼす影響やビーム交差角による推定精度に及ぼす影響について検討し,以下の結論を得た.
1) 深海波を仮定して浅海域で方向スペクトルを推定すると,深海波の波長に対する相対水深が0.5以下になる場合,方向スペクトルの推定精度が悪化し,異常な方向スペクトルが推定される.
2) ベイズ型モデルを用いた方向スペクトルの推定法は,HFレーダのビーム交差角に対する推定精度の依存性が低く,ビーム交差角が7.5°以上であれば,実用上十分な精度で方向スペクトルの推定可能である.
3) これらの結果は単一HFレーダ局であっても,同レンジの隣り合うビームで観測されたドップラースペクトルを用いることで,方向スペクトルを高精度に推定できることを示唆する.

【担当研究室】 沿岸域システム研究室

【執 筆 者】 片岡 智哉



表 紙
中 扉
目 次
本 文
奥 付


全 文 14,372KB