研究成果概要


国総研資料 第 888 号

【資 料 名】 東京湾沿岸域の底泥の堆積速度

【概   要】  富栄養化した海域において,底泥の堆積速度は,その水域の環境負荷を表す一つの指標である.また,底泥の堆積速度から,覆砂や生物の生息場の再生等の環境改善策の適応性(持続期間)を評価することができる.本研究では,既往の研究では実施されていない東京湾の港内や河口域等の沿岸域の堆積速度を分析し,今後の様々な検討の基礎情報として示すことを目的とする.
 採泥は2014年2月に6地点,2015年1月に2地点の計8地点で実施し,50cmの鉛直コアを潜水士によって採取した.210Pbex,137Cs,134Cs,含水比,土粒子密度,粒度分布,TOC,および底泥粒子の化学組成(SiO2,Al2O3,Fe2O3,MgO,CuO,ZnO)を2cm間隔で分析した.
 底泥の堆積速度は,隅田川河口で0.47g/cm2/y,京浜運河で0.40g/cm2/y,江戸川河口で0.3g/cm2/yから0.7g/cm2/y,多摩川河口で0.6g/cm2/y,市原沖で0.12g/cm2/y,木更津沖で0.25g/cm2/yであった.本研究で用いた底泥の鉛直コアは潜水士によって採泥されたものであり,採泥による撹乱を極力抑えられている.また,210Pbexは2cm間隔で分析され,鉛直方向に比較的に詳細な分析結果である.加えて,粒度分布,含水比,TOC,Csおよび底泥粒子の化学組成を併せて分析し,その結果を考慮した解析を行っている.本研究で得られた港内や河口域等の沿岸域の堆積速度は,これまで示されてこなかった値であり,今後の沿岸域の環境改善事業を実施する際には,有益な情報になると考えている.

【担当研究室】 海洋環境研究室

【執 筆 者】 岡田 知也,井芹 絵里奈,秋山 吉寛



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