研究成果概要


国総研研究報告 第 43 号

【資 料 名】 閉鎖性海域における吹送流の風応力方向依存性

【概   要】 閉鎖性海域における吹送流(WDC)の風応力方向依存性を,理想地形と線形定常理論(エクマン解)に基づいて調べた.本モデルは湾央部に適用可能である.既存の理論解析とは異なり,本解析では任意の方向の風応力を考慮している.
横断方向に変化する水深は,全流量を湾軸方向に限定する.一方,風応力により生じる流量の方向は,当然,風応力の方向に応じて変化する.それ故,圧力勾配に駆動される流量,すなわち圧力勾配は風応力方向に依存する.結果として,閉鎖性海域におけるWDCには風応力方向依存性が生じる.依存性は,エクマン数(E)と局所エクマン数(El)に応じて変化する.
大きなエクマン数(小さな回転)の場合,横断方向の風応力は湾軸方向流量の生成にほとんど寄与しない.それ故,湾軸からθ ( > 0)傾いた方向の風応力と湾軸方向(θ = 0)の風応力によって生じる湾軸方向流量を比較すると,その比はcosθとなる.小さなエクマン数(大きな回転)では,その比はcosθよりも大きくなる.その比とcosθとの差はsinθに比例する.これは,湾軸方向流量の生成に対して横断方向の風応力が重要であることを示している.風応力の成分(τsx, τsy)がそれぞれ湾軸方向流量の生成にどの程度寄与するかは,本文中に示す風応力−圧力勾配変換行列により決定される.その成分はEとElに依存する.
表層流速と風速(あるいはそのべき乗)との線形相関解析,あるいは表層流速の経験的直交関数を用いて閉鎖性海域のWDCを研究する場合,その結果の解釈には注意が必要である.閉鎖性海域におけるWDCは,風応力方向に対して非等方的な応答をする圧力勾配による流れ(PDC)を含むからである.風速(あるいはそのべき乗)は風応力に駆動される流れ(WSDC)と比較されるべきである.
今後,本解析で得られた知見を実際の観測結果の解釈に応用していく必要がある.また,閉鎖性海域のWDCをより深く理解するためには,現地における圧力勾配の測定(推定)技術の開発が必須である.

【担当研究室】 沿岸域システム研究室

【執 筆 者】 日向博文



表  紙 199KB
中  扉 237KB
目  次 197KB
本  文 2,502KB
奥  付 48KB




全  文 2,222KB