<道路部>

舗装研究室 平成11年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


経済活力の維持と効率的な建設行政の執行に関する研究

研究期間:平9〜平12
担当者 : 吉田武、新田弘之、小森谷一志

 アスファルト舗装の長寿命化・高耐久化には、耐流動性の向上が重要であり、その評価試験としてホイールトラッキング試験(WTT)が普及している。しかし、最近WTTの評価限界を超える混合物が生産されており、これらの評価が可能な試験機および試験方法の開発が望まれている。
 そこで本研究では、高耐流動性混合物の新しい評価方法の開発を目的として、SST ( SUPERPAVE Shear Tester )による評価法の検討を行った。これまでの研究よりSSTで実行可能な試験の中でもRSCH( Repeated Shear Test at Constant Height )試験の有効性を確認しており、平成11年度はRSCH専用機の試作および当該機による高耐流動混合物の評価方法の検討を実施した。その結果、RSCH専用機では、WTTの評価限界を超える混合物も評価でき、測定精度の向上が図れることが分かった。


道路環境の改善

研究期間:平11〜平13
担当者 : 吉田武、久保和幸

 現在、騒音低減効果を有する舗装としては一般に排水性舗装が施工されているが、その効果の高さはともかく持続性については満足なものではないというのが現状である。排水性舗装を上回る騒音低減効果を有する舗装として透水性コンクリート舗装、現場混合式弾性舗装および繊維系表層材を取り上げ、その効果を確認するとともに、その持続性についても検証を行った。結果としては3工法とも排水性舗装と同等以上の騒音低減効果を示したが、透水性コンクリート舗装は透水性能の向上、現場混合式弾性舗装は表面の砂の飛散への対応と基層との接着強度の向上、繊維系表層材はすべり抵抗性の向上と、それぞれ解決すべき課題が明らかとなった。


道路と生活の安心・安全の向上

研究期間:平10〜平12
担当者 : 吉田武、久保和幸

 走行支援道路システム(AHS)では、路面に磁気ネイル等のマーカーを埋設し車両の走行位置を制御する。このマーカーの舗装路面性状への影響ならびに舗装の変形によるレーンマーカーの設置精度への影響の把握を目的として舗装走行実験場に試験舗装工区を設け、促進載荷試験を実施した。試験後も、レーンマーカーによると考えられる舗装の破損は見られなかったが、レーンマーカーの設置角度については規定値は満足したものの、個々のマーカーの角度にばらつきが見られた。マーカーの設置位置や目地材の種類といった設置方法による違いは確認されなかった。


舗装の機能的破損に関する試験調査

研究期間:平11〜平14
担当者 : 吉田武、新田弘之、小森谷一志

 アスファルト舗装の車輪の走行位置付近において、縦方向に発生するひび割れが見られることがある。この縦ひび割れは観察により、表面から下方に発達することが分かっており、表面縦ひび割れとも呼ばれ、重交通道路における機能的破損の原因の一つになるとの指摘もある。一方、現行の構造設計では、ひび割れはアスファルト混合物層の底面から発生するという考えに基づいており、この種のひび割れには対応していない。また、車両の大型化をはじめとした重交通化により、表面縦ひび割れが深刻な道路の破壊につながる可能性がある。
 そこで、表面縦ひび割れの発生メカニズム解明のため、全国実態調査を基にして分析を実施した。その結果、全国的に表面縦ひび割れが発生しており、比較寒冷な地域ではひび割れ発達速度が早い、CBRやTAにより、発達速度が異なるなどの発生特性が分かった。


道路交通の効率性の向上

研究期間:平10〜平19
担当者 : 吉田武、久保和幸、新田弘之、東嶋奈緒子、小森谷一志、木村慎

 安全かつ円滑な交通を確保するためには、高度の耐久性や排水性、低騒音等の環境に配慮した付加機能を有する舗装の開発や、地域特性に応じた合理的な舗装の設計が望まれる。また、これらの実用化にあたっては、気象・地質・交通条件の多様性を考慮して、現道上において試験舗装を実施する必要がある。そこで、本研究は試験舗装から得られた供用性データの経年変化を追跡、解析した上で、構造設計の合理化を行うことを目的とする。
 平成11年度は、基準調査の結果をもとに、舗装の破壊にいたる交通量を予測し設計交通量を比較した。その結果、現在のTA法で想定されいるよりも早期の路面性状が低下していることが分かった。


舗装マネージメントシステムに関する試験調査

研究期間:平9〜平12
担当者 : 吉田武、東嶋奈緒子

 舗装の効率的な維持管理のためには、舗装の状況を総合的に評価し、合理的な補修計画支援を策定する必要がある。これを支援するのが舗装マネージメントシステム(以下、PMS)である。本課題は、従来の道路管理者の立場で構築されたPMSに、道路利用者、沿道の評価を付加するものであり、そのために路面性状と各種影響要因の関係を明らかにし、道路利用者および沿道に係る費用の定量化を目指している。
 11年度は、沿道に係る費用の定量化を目的に調査を実施した。その結果、遮音壁による効果として8,200円/dB(A)などの騒音費用を推定した。


道路事業の効率性の向上

研究期間:平10〜平12
担当者 : 吉田武、久保和幸

 橋梁の建設コスト縮減のために構造物全体の死荷重を軽減させるとともに、25トン車対応等による床版の上面増厚の際の建築限界の問題等を解決する方策として橋面上の舗装の薄層化を検討する必要がある。従来の橋面舗装の機能を保持した上で舗装厚を薄くする技術として砕石マスチックアスファルト(SMA)による一層施工を取り上げ、グースアスファルトや密粒度アスファルト混合物などの既存の混合物と物性の比較を行い、SMAの橋面舗装技術としての妥当性を検証した。室内試験により混合物性状を比較したところSMAは密粒度アスファルト混合物とグースアスファルトに求められる性状を併せ持っており、薄層舗装用材料として利用できる可能性が示唆された。


改質アスファルトの再生利用に関する試験調査

研究期間:平10〜平14
担当者 : 吉田武、新田弘之、木村慎

 近年使用量の増えている舗装用改質アスファルトは、再生した場合の性状を的確に把握する方法がなく、適切な再生利用が行われていない可能性がある。そこで本研究では、改質アスファルトの適切な再生利用方法を開発することを目的としており、平成11年度は、ストレートアスファルトと同様の再生方法で改質アスファルトを再生利用した場合の混合物性状に与える影響について調査した。
 その結果、供用により劣化した改質アスファルトと再生時に添加したアスファルトや再生添加剤と十分に混合していない可能性があり性状にも影響が見られた。このため、今後これを考慮した配合設計法が必要であることが分かった。


他産業リサイクル材利用マニュアルの検討

研究期間:平11
担当者 : 吉田武、新田弘之、木村慎

 他産業リサイクル材として、一般廃棄物焼却灰の溶融固化物を取り上げ、アスファルト舗装用骨材としての利用方法について検討した。平成11年度は、溶融固化物の一つである徐冷スラグを粗骨材の代替として用い、アスファルト混合物の基本性状の確認、骨材としての耐久性の確認を行うとともに、再生混合物になった場合の性状への影響について調査した。
 その結果、溶融固化物の含有が多くなるほど、諸性状が低下する傾向が見られたが、混合物としての規格値は満足し、利用が可能であると考えられた。また、再生混合物でも若干の性状の低下は見られるものの、利用可能な範囲と考えられた。