<道路部>

高度道路交通システム研究室 平成11年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


環境に優しい道路交通システムに関する研究

研究期間:平9〜平11
担当者 : 岩崎泰彦、浦野隆、小林隆明、濱田俊一(道路研究室)、畠中一人(道路研究室)

 交通渋滞・事故・環境問題など道路交通を取り巻く諸問題の解決を図り、社会コストの低減、快適な生活を実現するため、環境に優しくかつ社会コストの低減が図れる新たな道路交通システムの開発について検討を行った。
 前年度までに、環境に優しい道路交通システムを構築するための施策メニューの提案と個別施策を組み合わせて構築される環境に優しい道路交通システムのイメージの具体化を行った。
 平成11年度は、環境都市「人や自然への負荷が極力軽減された都市」を志向した道路交通システムの構築のコンセプトや個別施策の組み合わせ方について考え方を整理するとともに、ケーススタディによる施策メニューの適用条件等について検討を行った。


AHS(走行支援道路システム)による環境負荷低減効果に関する研究

研究期間:平11〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、村田重雄、小林隆明

 都市部を中心として交通渋滞が拡大しており、それによる経済損失が12兆円と試算されて、安全性や輸送効率において大きな問題が生じている。また、沿道環境の悪化、地球環境との不調和、等の問題が顕在化し、これら道路交通問題の解決が強く求められている。AHS(走行支援道路システム)は、安全性および輸送効率の向上を図るとともに、道路環境の質的向上が見込まれるシステムである。本研究では、AHS機能導入による渋滞削減および交通流の安定等による環境負荷低減(CO2の削減等)効果について、交通流シミュレータを用いて分析検討した。


ITS全般に関する調査

研究期間:平9〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、奥谷正、浦野隆、田中靖資、横地和彦、小林隆明

 道路管理者個々のITSシステムに共通に適用可能な通信標準や設計モデルなどのITSプラットフォームを検討し、システムの互換性、相互運用性、相互接続性を向上させ、また、ITS関連の国際標準との整合性を高め、ITS技術を用いた道路インフラ整備の効率的、経済的な推進に資することを目的とする。
 11年度は、地建等で検討中の個別システムについて、システムアーキテクチャを用いて通信要件を見出し、通信プロトコル、データディクショナリ及びメッセージセットの標準案を構築した。
 また、ISOや欧米の標準化動向の把握を行い、ITSの標準化の検討がなされているテーマのうち重要なテーマと新規に標準化提案すべきテーマを抽出し、国際標準化の戦略検討を行った。
 また、ETC、VICS、適正車速・車間保持システムといったITSアプリケーションが導入された場合の交通流に与える効果を、交通流ミクロシミュレーション等を用いて定量的に評価し、ITS導入展開シナリオを作成する上での基礎資料とすることを目的としている。10年度までの研究では、適正車速・車間保持を導入した場合のサグ部における渋滞解消効果の基礎検討を行い、システム導入の有効性を確認した。11年度は、ETCの導入による料金所渋滞の軽減効果、適正車速・車間保持サービスの導入によるサグ部渋滞の軽減効果の算定を行った。


コンセプト及びアーキテクチャの設計と評価に関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、田中靖資、村田重雄、小林隆明

 走行支援システム(AHS)の実用化に向け、システムに対する社会ニーズに基づいたシステム開発に対する基本的、共通的な必要条件を定めたリクワイアメントについて検討を行っている。平成10年度までの研究により、走行支援システムのユーザサービスの選定、走行支援サービスの実施方法や道路インフラの機能・性能に関する定量的なリクワイアメント(第1次リクワイアメント)が策定されている。平成11年度は、安全性・信頼性や第2当事者等に関するリクワイアメントの検討を実施した。


道路状況把握道路システムに関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、鈴木武彦、佐々田敬久

 走行支援システム(AHS)の交差点における衝突防止支援サービス(出合い頭衝突防止支援、右折衝突防止支援、横断歩行者衝突防止支援)を実現するためには、道路状況把握センサにより交差点における車両、歩行者の複雑な挙動を把握する必要がある。そこで、平成10年度までに開発した道路状況把握センサを使用して交差点における車両・歩行者の複雑な挙動を把握するアルゴリズム開発を行い、実験によりアルゴリズムの評価・改良を行った。さらに、前年度より継続して、雨・霧・降雪環境における道路状況把握センサの道路障害物検出特性を評価する実験を行った。


路面状況把握道路システムに関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、鈴木武彦、佐々田敬久

 走行支援システム(AHS)の全ての基本ユーザサービス(障害物衝突防止支援、カーブ進入危険防止支援、車線逸脱防止支援、出合い頭衝突防止支援、右折衝突防止支援、横断歩道歩行者衝突防止支援、路面情報活用安全車間保持支援等)の実現に必要な路面状況を把握するため、路面状況把握センサの検出アルゴリズムの開発と改良を行った。


車両誘導制御支援道路システムに関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、鈴木武彦、佐々田敬久

 車両誘導制御支援道路システムは、走行支援システム(AHS)において、道路に設置されたセンサから道路状況や路面状況を収集し、ドライバーが安全にかつ安心して走行支援サービスを受けることができるように、交通状況に応じて情報提供や警報を行ったり、車両を適切に制御するための情報を生成する役割を有している。
 平成11年度は、AHS交通シミュレータを用いたシミュレーション実験、実験車両を用いた実機実験を実施し、安全走行を支援するためには、センサ等により収集された車両周辺状況から、個々の車両(ドライバー)に、どのようなタイミングで、どのような情報を提供することが効果的であるかを検証し、最適な走行支援情報生成アルゴリズムの検討を行った。


走行車両位置検出支援道路システムに関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、鈴木武彦、池野秀一、佐々田敬久

 道路システムと車両システムの協調による安全で効率性の高い車両走行を実現する走行支援システム(AHS)において、道路上の車両位置のリアルタイムな検出並びに基点等の位置情報検知を行う位置検出支援道路システム(レーンマーカ)の開発を行うことである。
 11年度は、10年度に整理したレーンマーカの具体的方式案を見直し、その機能検証を進めて、12年度の実証実験に供するレーンマーカを決定するとともに、今後の課題を整理した。


最先端の通信方式を利用した道路システムに関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、村田重雄、小林隆明、酒井与志亜

 走行支援システム(AHS:Advanced Cruise-Assist Highway System)は、情報・通信技術を活用により、従来不可能だった前方の見えない障害物や交差車両等の情報をリアルタイムにドライバーへ提供することにより、飛躍的に安全で安心な走行を目指し、事故の大幅な削減を図ることを目的としている。本研究では、走行支援システムの基本ユーザサービスの実現に必要な路車間通信技術の開発を行っている。
 平成11年度においては、平成12年度に計画されている走行支援システム実証実験で使用する狭域通信(DSRC:Dedicated Short-Range Communication)方式の路車間通信システムの仕様策定を行った。さらに、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)実現の鍵となる次世代道路と位置づけられるスマートウェイ(知能化された道路)の実現に向けて、複数のITSサービスに対して統合的に使用可能な路車間通信システムの仕様を確立するため、将来の利用や拡張性を整理した上で、路車間通信に必要とされる機能や品質について取りまとめ、解決すべき課題について整理を行った。


システムの設計に関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、村田重雄、横地和彦、小林隆明

 走行支援システム(AHS)は、情報・通信技術の活用により、従来不可能だった前方の見えない障害物や交差車両等の情報をリアルタイムにドライバーへ提供することにより、事故の大幅な削減を図ることを目的している。本研究では、これまでに走行支援システムのシステム設計を行ってきたが、平成11年度では、走行支援システムの実用化に向けて、これまでに実施してきたシステム設計についてさらに詳細化をすすめるとともに、来年度に土木研究所テストコースにおいて実施予定の実証実験に使用するAHS実機システム(実証実験システム)の設計・製作を実施した。


システムの評価に関する調査

研究期間:平8〜平12
担当者 : 岩崎泰彦、田中靖資、村田重雄、小林隆明

 本研究は走行支援システム開発において、開発プロセスと結果が目的と目標に照らしあわせて妥当であるかを評価し検証することを目的として、ドライビングシミュレータ、AHS交通シミュレータおよび実機システムを用いて、リクワイアメント作成のためのヒューマンファクタに関するデータ収集、ユーザサービスの事故回避に対する有効性の検証、ドライバーの受容性の評価等を行うものである。11年度はヒューマンファクタ評価装置を用いたドライバーの走行挙動データ収集による走行支援システムの有効性の検証、および実機を使用したユーザサービスの事故回避に対する有効性やユーザ受容性を評価するための実験計画の作成を行った。