<新潟試験所>

新潟試験所 平成11年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


安全で安心できる国土の形成のための研究

研究期間:平10〜平13
担当者 : 市ノ瀬榮彦、丸山清輝、安藤達弥

 本研究は、積雪地域の地すべりにおけるすべり面の応力状態及びすべり面粘土の強度特性(クリープ強度、劣化、回復)を明らかにし、積雪地域の地すべり発生機構解明と防止工事計画への反映を目的としている。平成11年度は、沖見地すべり及び猿供養寺地すべりの各試験地斜面に土圧計と間隙水圧計を埋設し、積雪期におけるすべり面付近の鉛直及び水平の各土圧と間隙水圧の観測を行った。
 その結果、沖見試験地斜面では、鉛直土圧が土かぶり圧の1.5倍以上に達した。これは、移動による移動層の圧縮力が作用しているためである。


積雪層の脆弱化と雪崩発生危険度に関する研究

研究期間:平11〜平14
担当者 : 竹内由香里、早川博、石田孝司、市ノ瀬榮彦

 大きな被害をもたらす表層雪崩は、積雪層内の弱層と上載積雪荷重とのバランス等の関係で発生するが、発生場所や時期の予測が困難であり雪崩対策上の大きな問題となっている。そこで気象や積雪データから積雪強度を推定し、降・積雪データにもとづいた雪崩発生時期の予測手法を確立することを目指している。本研究では雪崩を引き起こす脆弱な積雪層の形成条件を解明するため、雪崩が頻発する妙高山麓の幕の沢において雪崩発生検知装置を設置し、併せて気象および積雪断面観測を行なった。今冬期の最大積雪深は約320 cmに達した。積雪の硬度分布から、ざらめ層と新雪の境界はその上下に比べて硬度が小さいことが多かった。今後ざらめと新雪の境界が弱層になる条件を明らかにしていくことが当面の課題である。


雪崩の警戒避難システムに関する調査

研究期間:平9〜平11
担当者 : 石田孝司、市ノ瀬榮彦、佐藤宗吾

 表層雪崩の誘因となる弱層種類の判別手法、弱層強度の推定手法とこれを用いた物理的な雪崩発生危険度予測手法の開発を行い、雪崩の警戒避難システムへの適用を図ることを全体目標としてきた。11年度は前年度までに得てきた現地での積雪・気象観測データの解析を行い、弱層種類の判別手法について検討を行うと共に、弱層強度推定式を作成し、これを用いた表層雪崩発生危険度推定手法の検証を行った。その結果、今後さらなるデータ蓄積と分析による推定式の見直し等による精度向上が必要ではあるが、警戒・避難基準への適用可能性が示された。 


冬期路面管理水準策定に関する試験調査

研究期間:平10〜平13
担当者 : 市ノ瀬榮彦、早川博、荒川智之

 積雪寒冷地における直轄国道や県管理道路では、気象・交通条件に応じた明確な冬期路面管理基準がなく、道路管理者は冬期路面管理を現場の判断に委ねているのが実状である。
 このため、同一路線であっても管理工区毎に路面状態が異なっており、道路利用者への安全性および快適性が懸念されている。そこで本研究では、道路管理者による現状の路面管理レベルを把握することを目的として一般国道18号においてすべり抵抗測定車によるすべり摩擦係数の実測を行った。また、冬期道路における道路利用者の交通経路選択を把握するために、一般国道18号沿線市町村管内のドライバーを対象としたアンケート調査を実施した。


降雪時における路面凍結等の対策に関する試験調査

研究期間:平10〜平13
担当者 : 市ノ瀬榮彦、早川博、荒川智之

 近年、スパイクタイヤの使用規制に伴い、凍結防止剤の散布量は年々増加傾向にある。このため、道路管理者は凍結防止剤の過剰散布による雪寒事業費への経済的圧迫および道路沿道環境への影響を懸念している。一方、道路管理者にとって機械除雪の出動時期や凍結防止剤の散布量を決定することは適切な道路管理を行う上で重要である。そこで本研究では一般国道18号において既存凍結防止剤の散布効果を検証すると同時に、環境に優しい非塩化物系凍結防止剤の現地実証試験を実施した。また効果的・効率的な冬期道路管理に質することを目的として路面残留塩分濃度を線的に計測する技術の検討を行った。


地下水排除工の機能低下防止に関する試験調査

研究期間:平8〜平11
担当者 : 市ノ瀬榮彦、丸山清輝、安藤達弥

 本調査は、地すべり防止工事の中で最も多く用いられている地下水排除工の機能低下現象について、その実態把握,原因解明を実施するとともに、機能低下防止方法及び施設維持管理技術の提案を行うことを目的としている。
 平成10年度までは、地下水排除工集水パイプ内の目詰まり物質であるスライム付着に関して、付着実態把握,付着原因解明,付着防止に関する基礎試験を行うとともに、地下水排除工機能低下に関する全国調査を実施してきた。
 平成11年度は、基礎試験により確認された空気中の酸素濃度低下によるスライム生成抑制方法について、追加試験を実施し、スライム付着による機能低下防止方法に関する検討を行った。また、機能低下に関する全国調査結果を地質,施設設置後経過年数別に整理し、施設維持管理方法についての調査・検討を行った。


雪泥流による土砂移動と砂防計画調査

研究期間:平8〜平11
担当者 : 市ノ瀬榮彦、石田孝司

 積雪期の土砂生産量の定量化及びこれを踏まえた積雪地域における効果的な砂防計画に資することを最終目標とし、本調査においては特に積雪グライドや全層雪崩といった積雪の移動に起因する土砂生産量の定量的な把握を目的としている。11年度は積雪グライドによる斜面侵食量計測、並びに侵食量と土質との関係把握等を行った。その結果、侵食量は土の密度や粒度などの物理的性質と高い相関があることが明らかとなり、土質特性から斜面侵食量の多寡を判定することの可能性が示唆された。


大所地すべりが砂防構造物に与える影響調査

研究期間:平8〜平11
担当者 : 市ノ瀬榮彦、丸山清輝、安藤達弥

 本調査は、大所地すべりが本地すべり末端を流下している大所川の砂防構造物に悪影響を与える恐れがあることから、その影響及び移動機構について調査し、大所川における砂防計画に資することを目的としている。
 平成11年度は、大所地すべり地内を流下する地下水の流動状況を把握するために、地下水の水質調査と、水質調査結果の多変量解析(主成分分析とクラスター分析)による地下水流動経路推定法により検討した。
 その結果、地すべり斜面内を流下している地下水は、4つのグループに分けられること及び、主に雨水及び周辺斜面から流入する浅層地下水が地すべり斜面上部から下部方向に流下していることが、それぞれ推定された。


地下水排除施設の効果追跡調査及び地下水調査法の検討

研究期間:平10〜平13
担当者 : 市ノ瀬榮彦、丸山清輝、安藤達弥

 本調査は、赤崎地すべり上部ブロックに流入する赤崎山からの地下水を排除するために、赤崎地すべりに接する赤崎山山腹の地質構造と、地下水流動層を明らかにすることを目的として実施した。なお、調査方法は、平成10年度に赤崎地すべり下部ブロックにおいて、地すべり調査への適用性について検討した二次元比抵抗探査と、この探査に付随したボーリングによる地質調査、簡易揚水試験、電気検層を用いた。
 その結果、地下水排除を計画している赤崎山山腹の地質構造が、断層等により複雑で連続性がないことが分かった。また、概略的ではあるが地下水流動層を求めることができた。


表層雪崩の誘因となる弱層の探査手法開発に関する調査

研究期間:平11
担当者 : 早川博、竹内由香里、荒川智之、市ノ瀬榮彦

 雪崩災害を未然に防ぐことを目的に、表層雪崩の危険度指数を計算して危険度判定を行い、雪崩の発生時期および規模を予測するシステムが運用されているが、精度の向上が遅れいるのが現状で、表層雪崩発生原因となる弱層の有無が危度判定に考慮されていないことが大きな要因である。積雪内の弱層の有無や強さを自動的、連続的に計測することができれば、表層雪崩発生予測の精度を向上させることが可能となる。
 本調査では、表層雪崩の誘因となる積雪表面の弱層生成の有無を検知するため、積雪表面に超音波を照射しその反射波特性から積雪表面の雪質判定について解析した。