<材料施工部>

化学研究室 平成11年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


新素材の土木構造部材への利用に関する研究

研究期間:平11〜平11〜
担当者 : 明嵐政司、西崎到、木嶋健、佐々木巌

 FRP(Fiber Reinforced Plastic)は、軽量で引張強度が高く、防食性に優れる等の特徴を有しており、今後土木構造部材への展開が見込まれる。航空・宇宙、船舶等の分野では既に構造部材として利用されているが、土木分野ではプレストレストコンクリート緊張ケーブル等のように補強材料としての利用が一般的である。FRPとしては、ガラス繊維を使用したGFRPの他に、炭素繊維を使用したCFRP、アラミド繊維を使用したAFRP等が提案されているが、GFRPの利用が最も多い。
 一方、GFRPは繊維方向に対する引張強度は高いが、弾性係数やせん断強度は比較的低い。本研究では、曲げ耐力の向上を目的としてGFRPの中空部分にモルタルを充填した梁部材を考え、4点曲げ試験を行うと共にFEMによる数値計算を実施した。その結果、曲げ耐力はモルタルを充填しないGFRPの2〜3倍程度に増加し、その傾向は数値計算によっても裏付けられた。


粘土の化学特性に関する研究

研究期間:平10〜平12
担当者 : 明嵐、西崎

 本課題においては、残土等として発生した粘土の化学的な特性を活かした活用方法の開発を目指した。このような活用方法の一例としては、イオン交換などによる海水の淡水化、廃棄物処理場の有害物質拡散防止などがあげられる。本課題では、このような用途に関わる粘土の化学的特性に関する基本的な研究を行う。平成11年度は、粘土質土壌を、化学的な特性を活かして有効利用する方法を検討するため、3種類の土壌試料の粒径組成、土性、陽イオン交換容量、陰イオン交換容量、土壌コロイド中の非晶質成分分析、粘土鉱物の半定量同定等を実施した。


社会基盤等を活用した省エネ及び都市の気候緩和に関する研究

研究期間:平10〜平14
担当者 : 明嵐政司、木嶋健

 我が国では、情報化社会の進展及び生活の快適性を求めた国民の生活様式の変化等により、エネルギー消費量が増大している。特にエネルギー消費量の多い大都市圏では、ヒートアイランド現象が顕在化し、さらにその現象は今後拡大することが予想されると同時に、ヒートアイランド現象の緩和策が期待されている。本研究では、路面に与えられた熱を吸収することでヒートアイランド現象を緩和し、同時に吸収した熱を電気として利用する路面発電システム(Road Electric Generation System、以下本文ではREGSという)を開発することを目標としている。
 11年度はREGSの性能に関する簡単なフィールド実験を行い、数値計算値との比較により評価することを目的とする。REGSの性能について評価を行った結果、地中の温度分布、REGSによる発電量に関して、実験値と数値計算値とは比較的よく一致し、これらが数値計算により評価されることが確認された。


建設事業におけるCO2算定評価システムの開発に関する研究

研究期間:平11〜平13
担当者 : 明嵐政司、寺田剛

 地球温暖化防止京都会議(COP3)で合意された温室効果ガス6%の我が国の削減目標を達成するためには、六千万tのCO2削減が必要といわれている。本研究では建設事業における温室効果ガスの計画的な削減を行うため、資材生産から運搬、施工、維持管理及び廃棄までのライフサイクル総CO2排出量を評価する手法の確立や材料、工法、構造物、事業別毎の原単位の作成及び建設事業のライフサイクルにおける総CO2を把握するシステムの構築を行う。11年度は土木事業のライフサイクルの総CO2排出量を評価する手法について検討を行った。 


品質規格の性能規定化手法の開発

研究期間:平9〜平14
担当者 : 明嵐政司、守屋進、寺田剛

 ISO(国際基準化機構)等では、材料に関する試験法や機械等製品規格を中心に国際規格を整備してきた。近年、品質保証体制(ISO 9000シリーズ)や、構造物の設計基準、性能基準についても整備が進められつつある。我が国の建設分野においては、材料・部材等の要求品質と品質管理の手法を規定する仕様規定が一般的であった。しかし、国際整合化の観点から、性能を重視する性能規定の考え方へ移行していく必要が生じている。そこで、性能規格化に対応した新たな品質管理のしくみが必要となる。11年度は材料の性能規定化の一例として塗装の要求性能や性能規定について検討した。


構造物の品質管理技術の開発(非破壊検査・溶接検査・塗膜検査等)

研究期間:平9〜平12
担当者 : 明嵐政司、守屋進

 国際化並びにコスト縮減のための建設事業の性能規定化が求められている。性能規定化に伴う鋼構造物の塗膜の防食性能や景観性能を保証するため、効率的で精度の高い検査技術が求められている。
 鋼構造物の塗膜検査は、塗料が十分に乾燥したのち電磁式膜厚計で所定の膜厚が確保されているか測定している。しかしながら、測定結果は、ばらつきが大きく、定められた均一な膜厚を確保することが困難である。そこで、塗膜厚をモニタリングしながら施工ができる塗料(省検査形塗料)の開発を行っている。
 11年度は、省検査形塗料の塗替え塗装への適用性を検討した。その結果、所定の膜厚が得られていることが確認され、塗替え塗装の膜厚管理に適用できることが判明した。


環境負荷低減のための材料・構造物の補修改修技術の開発

研究期間:平10〜平14
担当者 : 明嵐政司、守屋進

 建設事業による地球環境や生活環境への影響等の外部不経済(外部コスト)を含めた建設事業コストの低減を図る必要がある。このため、建設事業から発生する環境負荷を低減する技術を開発することを目的とする。
 11年度は、環境負荷低減型材料として、光化学スモッグなどの大気汚染の原因物質の一つである揮発性有機溶剤(VOC)を1/3以上削減した環境にやさしい塗料(新設用)の耐久性検討および環境にやさしい塗料(塗替え用)の検討を行った。


大規模地震災害等における迅速な応急復旧技術の開発

研究期間:平11〜平12
担当者 : 明嵐政司、佐々木巌

 大規模災害において迅速な応急復旧を行うためには様々な技術の確立が必要であるが、特に人命救助のための応急仮復旧対策は技術開発があまり進んでおらず、適応のための選択肢が非常に少ない。本研究では、人名救助を目的とした経路確保のための応急復旧に必要となる新たな技術開発について、適用すべき要素技術を抽出し、またこれを評価するための先導研究を実施している。11年度は、大規模災害直後における道路上の経路障害物の実態を阪神淡路大震災の事例を元に把握するとともに、新たな応急仮復旧構造物の開発の前提となる重量及び寸法に関する制約条件の調査と、これに基づく超軽量応急架設橋の検討を行った。


都市型総合廃棄物を原料とした環境負荷低減型セメントの建設事業への適用技術に関する研究

研究期間:平11〜平13
担当者 : 明嵐政司、寺田剛、中村俊彦

 都市ゴミ焼却灰、下水汚泥等を原料としたセメントの製造技術が開発され、ゴミを資源として有効利用する一方策として期待されている。本研究では、この環境負荷低減型セメントの土木構造物用コンクリートや土質改良用固化材への適用性を検討する。11年度は、セメント中の塩分抑制、硬化速度制御に関する検討を行い、普通ポルトランドセメント並みの性状を有するセメントを製造可能であることが判明した。また、土質固化材としての効果を検討した結果、高炉セメントB種と比較して優れた土質改良効果を有することが判明した。


下水道施設用複合材料の試験方法に関する調査

研究期間:平11〜平12
担当者 : 明嵐、西崎

 近年、下水道施設に用いられている複合材料に、厳しい腐食環境によると思われる損傷事例が報告されており、早急な対応が必要とされている。複合材料は腐食環境には比較的強い材料であるが、高濃度の酸と過大な荷重の作用などの複合的な過酷環境では、劣化することがある。そこで本課題では複合材料の下水道環境での耐久性について調査し、耐久性評価のための試験方法を作成する。
 平成11年度には、劣化のメカニズム、劣化条件等を調べるために、下水道環境における複合材料の破損事例に関する調査を実施した。これらの損傷は酸性環境条件下におけるクリープ破断によると推定されるが、酸性条件の影響に比べて、荷重の影響が大きかった。また、このような環境における複合材料の試験方法として、ASTM、ISO等の基準を基に、複合材料の耐食性に関する試験を行った。この結果、既存の試験方法を実際の下水道で起きた損傷を評価する方法としては、適用できないことがわかった。従って、適切な条件設定、試験方法の改良・補足等が必要である。


光触媒を用いたNOx低減材料の適用に関する試験調査

研究期間:平11〜平14
担当者 : 明嵐政司、守屋進

 自動車交通の増大による沿道環境の悪化が問題となっている。自動車から排出されるNOxガスの削減が求められている。近年開発されたNOx低減性能を有する光触媒を用いた材料を道路施設に適用して、沿道のNOx濃度を低減することが期待されている。そのためには、光触媒を用いた被覆材料のNOx低減性能評価手法の確立および耐久性の検証が必要である。
 11年度は、光触媒を用いた被覆材料のNOx低減性能評価手法としては、流通式試験方法が適当であることが判明した。また、屋外に1年間曝露した試験片のNOx低減性能は、水洗で回復するものがあったが、被覆材料の劣化が著しいものあった。


舗装の機能的破損に関する試験調査 

研究期間:平11〜平14
担当者 : 明嵐政司、佐々木厳

 車輪の走行位置付近縦断方向に舗装表面から下方に発達する、いわゆるわだち割れが、アスファルト舗装の機能破損として問題となっている。その一要因としてアスファルトの劣化が考えられる。初期性状は品質基準を満足しているが供用後短期間に劣化し、アスファルトが脆くなると言われている。本調査は、材料劣化の試験を通してひび割れ抑制の調査を行うとともに、供用後の性状を考慮した品質基準の作成を目指すものである。


降雪時における路面凍結等の対策に関する試験調査

研究期間:平10〜平14
担当者 : 明嵐政司、寺田剛

 近年高規格幹線道路、地域高規格道路及び地域道路が整備され、地域経済活動の基盤をなすとともに民生の安定に寄与している。しかし、積雪寒冷地域では、冬期路面のすべり摩擦抵抗の低下、堆雪による幅員の減少等の道路機能障害により、旅行速度の低下、渋滞及び事故の発生等、自動車交通の利便性が低下している。本研究では、今後の効果的な路面凍結対策を図るため、塩害のない凍結防止剤の開発、凍結防止剤の評価手法・規格基準の提案、散布方法ガイドラインの作成を行うものである。  11年度は、塩化物が入っておらず凍結防止効果があると思われる既存物質や市販凍結防止剤の室内凍結防止効果評価試験を行った。


耐食性新材料の大規模構造物への適用に関する試験調査

研究期間:平9〜平12
担当者 : 明嵐政司、寺田剛

 本研究は、大規模橋梁鋼構造物及びコンクリート構造物を対象に耐食性新材料を適用することにより、長寿命化を指向した防食材料の利用技術の開発を図ることを目的とする。11年度は、新設コンクリート構造物のための電気防食工法の開発を目的として、PC桁とRC小型供試体を用いた電気防食試験の追跡調査を行った。また、鋼構造物用耐食新材料である新耐候性鋼材の暴露試験を海浜4カ所で開始し、半年後の状態を調査した。電気化学的測定及び解体調査では、PC桁及びRC小型供試体ともに鉄筋の電気防食効果が認められた。また、新耐候性鋼材の暴露試験では沖縄の供試体で層状錆が発生した。


長大橋梁の橋面構造の合理化に関する調査

研究期間:平10〜平14

 長大橋梁建設の合理化として、上部構造の死荷重を低減させることが求められている。また、高架橋のコスト縮減、25トン対応等による床版上面増厚で障害となる建築限界の問題等を解決する一つの方策として、橋面舗装の薄層化が求められている。橋梁走行面としての舗装の適正な機能を担保しながら、より薄い舗装を実用化することが必要となっているといえる。
 本調査では橋面舗装を大幅に薄層化することを目的としており、11年度は各種樹脂材料の適用性を評価するための材料試験を行った。


改質アスファルトの再生利用に関する試験調査

研究期間:平10〜平14
担当者 : 明嵐政司、寺田剛

 地球環境低減やリサイクル法の制定に伴い、アスファルト舗装の再生率は90%を超えており、改質アスファルトの再生も今後更に増加していくと思われる。改質アスファルトを再生する場合、「舗装廃材再生利用技術指針(案)((社)日本道路協会、昭和59年7月発行)」に準拠して、ストレートアスファルトの再生と同様にアブソン抽出・回収による針入度調整を行っている。
 11年度は、多種多様な改質材が使用されている市販の改質アスファルト(T型・U型・高粘度)に対するアブソン抽出・回収の可能性及び回収後の性状変化を確認した。


新素材の河川管理施設への適用に関する調査

研究期間:平10〜平13
担当者 : 明嵐、西崎

 河川管理施設の鋼構造物は、腐食し易く補修が困難である。本課題では、耐食性に優れた新素材を河川管理施設へ導入し、維持管理の省力化を図るためのものである。そのために、新素材の材料物性・長期的特性・施工性・安全性などの調査を実施する。
 平成11年度には、水中施工塗料の40℃水中浸せき試験と2年9ケ月間の暴露試験の追跡調査を行った。当初促進的な条件と想定した40℃浸せき試験は、水中施工塗料の評価には適用できないことが分かった。また、暴露試験を河川水中で1年間行った河川用複合材料の供試体を回収し、電子顕微鏡観察と曲げ試験を行った。藻とフジツボの付着が著しく、供試体の一部で強度低下が認められたが、原因の特定には至らなかった。


ダム施設における鋼構造物の防食に関する調査

研究期間:平10〜平14
担当者 : 明嵐政司、守屋進

 ダム施設の鋼構造物は、炭素鋼材,亜鉛めっき鋼材,ステンレス鋼材などの異種金属接触腐食などによって鋼材が腐食することがある。ダム施設の鋼構造物のメンテナンスを軽減するため、耐食性材料や電気防食による防食方法の確立が望まれている。
11年度は、淡水環境において電気防食法を適用性する際の各種流電陽極の使用限界を明らかにするための陽極特性試験を行った。また、七ヶ宿ダム湖での曝露3年目のアルミニウム合金材を回収調査した。


境ホルモンの調査

研究期間:平11〜平13
担当者 : 明嵐政司、守屋進

 道路施設に用いられる材料・素材等の環境ホルモン含有及び溶出の可能性を検討し、これら材料が環境ホルモンの発生源となりうるか否かを検証する。また、道路に係わる環境ホルモンの実態調査を行うための試料の採取,前処理法および分析方法等調査方法を確立して、全国調査を行いその実態を明らかにする。
 11年度は、平成11年7月号の建設物価版に掲載されている道路建設に係わる材料の用途・使用環境条件・成分組成・環境ホルモン含有の有無等に関するアンケート調査を行ない、道路建設材料データベースを作成した。また、収集した材料に環境ホルモン物質が含まれているか分析調査を行った。


建設工事の地球温暖化対策技術に関する調査

研究期間:平11〜平13
担当者 : 明嵐政司、寺田剛

 地球温暖化防止京都会議(COP3)において、我が国の温室効果ガスの削減目標が6%に合意された。それを受け手温暖化に関する法律が制定されている。この削減目標を達成するため、建設工事において地球温暖化対策技術を実施する必要がある。しかし、建設現場における地球温暖化対策のための具体的な取り組みは明確になっていない。そこで、計画や施工段階等での削減方法の整理、削減技術・工法の比較、対策手法等の提案及び材料・構造物・事業別毎の原単位を作成する。11年度は地球温暖化対策技術の整理、工法の比較、対策手法等の調査を行った。


新素材の河川管理施設への適用に関する調査

研究期間:平10〜平13
担当者 : 明嵐、西崎

 水中に設置されることが多い河川管理施設用の鋼構造物は、腐食し易く補修が困難である。本課題では、高耐久性塗料・複合材料・耐食性金属材料(チタン、アルミニウム等)などの耐食性に優れた新素材を河川管理施設への導入し、河川管理施設の維持管理の省力化を目指している。そのためには、河川環境における新素材の材料物性・長期的特性等の調査が必要である。そこで江戸川河口において暴露試験を実施し、実用化のための基礎資料を得るものである。平成11年度には河川鋼構造物用塗料の暴露試験の追跡調査を実施した。暴露期間は新設用塗装仕様で5年間、塗替用塗装仕様で3年6月間である。


他産業リサイクル材利用マニュアルの検討

研究期間:平11〜平11〜
担当者 : 明嵐政司

 建設廃棄物のうち再利用が進んでいないものの一つに、建設廃木材がある。本研究では、廃木材の炭化による舗装骨材への活用を検討している。炭化木材の多孔質な材料特性を有効に活用して、都市部の大気汚染対策用舗装を開発することが目標である。
 本報告では、炭化木材の舗装骨材としての室内評価試験結果を行い、比重及び吸水率試験に不合格となった。他の試験では比較的良好な結果が得られた。比重及び吸水率試験は、間接的に骨材の耐久性を検証する。比重及び吸水率試験だけでなく他の試験でも目標値を満足できない場合には、骨材としての適用性が不的確であると判断することが出来る。したがって、木材炭化骨材が、骨材として不的確であるとすることは出来なかった。