<材料施工部>

施工研究室 平成11年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


コンピュータによる認識・最適化技術を利用した施工管理・検査に関する研究

研究期間:平10〜平12
担当者 : 光橋

 リモートセンシングやCTスキャン等においてはセンサーから得られる膨大なデータの中から必要な現象を把握する手法として,ニューラルネットワークをはじめとする認識・最適化技術が実用化されている。土木事業においても新しいセンサー技術を用いた方法が開発され、短時間に計測結果が得られるようになった。しかし、膨大な計測データの解釈は、依然経験に頼る部分が多い。土木事業にも本手法を適用することにより、合理的な判断が得られ、施工管理や検査を高度化できる可能性がある。
 11年度は,地中レーダへのニューラルネットワークの適用性を検証するため,既存文献を調査するとともに,アルミ板を埋設した地盤を電磁波レーダで計測し,コホーネンの自己組織化マップによる解析を行った。その結果,特徴を強調した出力画像を得ることができ,本手法の有効性が確認できた。


土構造物の品質管理技術の開発

研究期間:平9〜平12
担当者 : 大下、青山、森

 本研究においては、土構造物に要求される性能あるいは品質を明確にし、的確に品質を確認できる検証方法あるいは検査手法を導入することによって品質管理の合理化を図り、品質向上とコスト縮減を図るものである。今年度は、土構造物の代表的な構造物である道路盛土を対象に要求性能の明確化とそれに対応する検証方法について検討を行った。


建設副産物の発生抑制・再利用拡大技術の開発

研究期間:平10〜平14
担当者 : 宮武

 建設副産物の処理における外部コストは、(1)建設副産物の存在あるいはその処理の過程において生じる環境汚染に関する外部コスト、(2)適切な処理を行うことで有用な資源として用いることができる副産物を安易に最終処分してしまうことによる資源の浪費に関する外部コストの二つの観点から整理する必要がある。本研究では建設副産物のリサイクル利用を促進することで発生を抑制して、資源の浪費による外部コストを低減し、社会的コスト(建設事業コスト)の低減を図ることを目的とする。平成11年度はリサイクルの低迷している建設発生木材について事例調査を行い、リサイクル促進に向けた課題を抽出した。


環境負荷低減のための材料・構造物の補修改修技術の開発

研究期間:平10〜平14
担当者 : 青山、宮武、橋本

 昨年度の調査によって、維持・補修工事における工事費の割合が大きいものは、舗装工事のオーバーレイと表面処理、橋梁補修工事の床版補修と桁補修であることがわかっている。これを受けて今年度は、実際の舗装補修工事を対象として、工事に伴う外部コスト要因を整理したうえで、騒音や交通量・走行速度を計測し、計測値を既に定量化されている評価手法によりコスト化した。この結果、舗装補修工事の工事費と比較して、外部コストは著しく小さい値であった。そこでケーススタディとして、規制時間、基本交通容量および交通量を変化させた場合に発生する外部コストを算出し、補修工事費に占める割合を評価した。


GISを利用した統合情報基盤の開発

研究期間:平11〜平14
担当者 : 大山、青山、光橋

 国土管理情報の収集、作成の重複投資のむだを省き、コスト負担を軽減するためには、国土管理情報が多くの利用者に共有できることが重要である。このため、情報ネットワークによる国土管理情報の共有の仕組みを確立するとともに、個別のアプリケーションソフトに依存せずに利用するための情報の標準化が必要である。本研究は、多くの国土管理情報が地球上の位置に関連していることから、GISをベースとした情報基盤が有効であるとし、GISを活用した統合情報基盤の開発をめざしている。このため、平成11年度は、国土管理情報の情報基盤の基本構想や、標準化すべき基盤的空間データの標準化方針について検討し、提案を行った。


地理情報システムによる次世代情報基盤の活用推進に関する研究

研究期間:平11〜平14
担当者 : 大下、青山、光橋

 国土空間データ基盤標準及び整備計画では,11年度からGISの普及期と位置づけており,地理情報標準等の技術的な標準の整備によってGISの本格的な普及に向けた条件が整いつつある。しかし,現状ではGISデータの相互利用が進まないためにそのメリットが十分発揮できず,行政の高度化には必ずしも結びついていない。
 本研究では,建設省と地方自治体が整備したデータをGIS基盤上で相互利用することにより,統合的な行政情報システムを実証的に検討するとともに,GISデータの作成・統合・更新等の技術を開発することを目的としている。
 11年度は,地方建設局へのヒアリング調査をもとに,建設省及び地方自治体,地域住民への効果が高い実証実験のシナリオを作成した。


既設構造物直下地盤の液状化対策技術の開発

研究期間:平11〜平13
担当者 : 大下、市村、井谷、福井(基礎研究室)、西谷(基礎研究室)、梅原(基礎研究室)

 兵庫県南部地震以後、既設構造物の耐震補強の必要性が高まっており、構造系全体の耐震性向上のためには、フーチング以下の基礎部の補強が不可欠である。しかしながら、新設基礎の場合と異なり桁下での作業となるため、施工が困難でコストも高額となるなどの課題を抱えている。以上から、桁下空間や近接構造物の影響が少ない効率的な補強工法の開発を目指している。11年度は、開発対象とした新工法(マイクロパイルなど5工法)による既設基礎の耐震補強効果を地震時保有水平耐力法により検証した。その結果、マイクロパイルによる補強では斜杭として用いるのが有効であることがわかった。


軟弱地盤改良技術の開発に関する交流育成

研究期間:平11〜平11〜
担当者 : 大下、光橋、森

 本課題は,地盤改良工法の適用地盤や工法を評価し,地盤条件や現場状況に応じた適切な軟弱地盤改良を検討することを目的に,建設省土木研究所とスウェーデン運輸通信省地盤工学研究所が交流育成するものである。11年度は,深層混合処理工法に関する国際会議(The International Conference on Dry Mix Methods for Deep Soil Stabilization/Stockholm/Sweden)に出席し,意見交換及び打ち合わせを行った。また,国際非開削技術会議(17th NO-DIG International ‘99/Budapest/Hungary)にも出席し,論文発表を行うとともに都市部等の軟弱地盤内で施工されるケースの多い地下埋設管の施工技術や品質管理技術についての研究動向を調査した。


小規模シールド工事のコスト縮減化に関する調査

研究期間:平10〜平11
担当者 : 大下、森、井谷

 本研究では、今後、採用が一層増加すると予想される小規模シールド工事の施工の合理化に向けたコスト縮減の課題を整理し、コスト縮減方策を提案することを目的とする。11年度は、小規模シールド工事の合理化に向け、鋼製セグメント構造の合理化、二次覆工省略のための防食・防水、新素材によるセグメント製作の適用性について各々検討するとともに、コスト試算およびコスト縮減効果について検討した。その結果、コスト試算では−2〜−9%の縮減効果が期待できることが確認でき、工期は−2〜−15%の縮減効果が期待できる結果となった。


道路構造物の調査復旧・耐震補強

研究期間:平8〜平13
担当者 : 大下、市村、井谷

 兵庫県南部地震以後、既設構造物の耐震補強の必要性が高まっており、構造系全体の耐震性向上のためには、フーチング以下の基礎部の補強が不可欠である。しかしながら、新設基礎の場合と異なり桁下での作業となるため、施工が困難でコストも高額となるなどの課題を抱えている。このため、桁下空間や近接構造物の影響が少ないマイクロパイルによる既設基礎の耐震補強法の確立を目的として研究を行っている。11年度は、既設杭とマイクロパイルの水平荷重に対する分担率を明らかにするために行った遠心載荷実験から、マイクロパイルでは群杭効果による効率低下は見られないが、直杭で用いる場合には水平力の分担率は非常に小さいことがわかった。


道路事業におけるCALSを活用した設計施工管理等の省力化に関する調査

研究期間:平11〜平14
担当者 : 大下、青山、光橋

 本調査は,統合情報データベース等を利用した道路事業における電子データ標準の効率的な利用方法を開発し,道路事業の高度化を図ることを目的としている。11年度は,設計図及び竣工図の電子納品仕様である「CAD製図基準(案)」を設計業務に適用して図面の電子化による効果と課題を検証するとともに,基準を土木研究所ホームページに公開して意見を募集し,それらの結果を基準に反映した。


擁壁構造物の設計合理化に関する調査

研究期間:平8〜平11
担当者 : 大下、青山、橋本

 本研究は,支持地盤がある程度の変形に追従するという補強土壁の特徴を設計法に反映するため,土工実験棟内の大型土槽に軟弱地盤上に補強土壁を構築し,載荷によって基礎地盤の沈下変形に伴う補強土壁の変形挙動等の確認を行なった。その結果,基礎地盤が沈下し壁面変位量が大きくなっても補強領域は一体となって挙動し,内的安定を満足しても外的な沈下等の要因により,補強土壁は変形を生じることがわかった。これらから,補強土壁の鉛直支持力に対する安全余裕度を小さくして安全率を見直す可能性を示した。


近接施工時の補強方法に関する試験調査

研究期間:平8〜平11
担当者 : 大下、光橋、橋本

 都市における橋梁基礎と既設構造物との近接施工では,周辺地盤の変状を抑止するために,近年,薬液注入工法や機械攪拌工法などによる地盤改良が実施される事例が多い。しかし,地盤改良工法は,改良範囲や仕様と改良効果の関係,特に改良地盤の強度やそのばらつき,変形特性などが把握されておらず,経済性と信頼性の高い設計法が確立されていない。また,施工とその改良効果にも多くの課題が残されており,地盤改良の合理的で確実な設計方法と施工・品質管理法の確立が望まれている。11年度は,これまでに実施した遠心力載荷模型実験から,改良地盤と盛土及び周辺地盤の関係を明らかにするため,周辺地盤条件と支持形式,改良形式による変位を比較した。また,改良地盤の品質管理手法では,前年度に引続き実現場の改良地盤を対象にロ−タリ−サウンディングの適用性を検証した。


建設発生木材(伐木、伐根等)に関する調査

研究期間:平11〜平12
担当者 : 宮武

 建設発生木材はコンクリート塊、コンクリート・アスファルト塊、建設発生土、建設汚泥、建設混合廃棄物と共に指定副産物とされているがリサイクルが低迷している。土木由来の建設発生木材については、発生形態がまちまちで、表土混じりなどのリサイクルが難しい場合が多い。本研究は、こうした土木由来発生木材の特質を考慮したリサイクル手法の選定手法の作成を目標とする。平成11年度はモデル現場を抽出し、ヒアリング調査により発生木材リサイクルの流れと課題を抽出した。


首都圏外郭放水路に関するCALS実証試験

研究期間:平11〜平11〜
担当者 : 大下、青山、光橋

 首都圏外郭放水路の整備事業では,複数の請負者が隣接工区で施工するため,工程や管理に関わる情報を受発注者間で緊密に交換・共有することが事業を効率的に進める上で重要となる。そこで,「首都圏外郭放水路工事・CALS/ECパイロットプロジェクト検討委員会」(委員長:建設省河川局河川情報対策室長)では,江戸川工事事務所に受発注者がアクセス可能なサーバを設置し,情報の交換・共有が生産性向上に与える効果と実現に向けた課題の検証を行っている。11年度は,工事段階において情報技術を活用した新しい業務手法を提案するとともに,サーバ上で稼働するアプリケーションを改良した。


建設発生木材(伐採材、伐根材、型枠)のリサイクル技術の開発

研究期間:平11〜平12
担当者 : 宮武

 建設発生木材はコンクリート塊、コンクリート・アスファルト塊、建設発生土、建設汚泥、建設混合廃棄物と共に指定副産物とされているがリサイクルが低迷している。その原因としては、リサイクル技術の開発はある程度進められているものの技術評価に関する統一的基準の整備が遅れていること、発生から再生処理、再利用に至るリサイクル材の流通体系が確立していないことが原因として考えられる。本研究は、実際の現場における土木由来の発生木材リサイクルの実態を調査し、発生木材リサイクル技術の選定手法の作成を目標とする。平成11年度はモデル現場を抽出し、ヒアリング調査により発生木材リサイクルの流れと課題を抽出した。