<材料施工部>

機械研究室 平成11年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


経済活力の維持と効率的な建設行政の執行に関する研究

研究期間:平11〜平14
担当者 :村松、持丸、新田、水上

 揚排水機場は設備の機能と信頼性の確保とともに、公共サービスに対するコスト縮減がが求められている。その具体策の一つとして、大型の揚排水機場では吸水槽からポンプまでの水の流れを高速化することによって、土木構造物の規模を縮小し、コスト縮減を図る取組みが行われている。本研究は、この吸水槽内流速の高速化を小・中規模の揚排水機場への適用を図るため、平成11年度は、過去の事例調査、高流速化に対する条件整理を行い、高流速化が可能と思われる吸水槽形状の提案およびコスト比較を行った。今後はコンピュータシミュレーションと模型実験により、既設排水機場への適用手法検討および高流速化設計手法の提案を行う予定である。


建設事業におけるCO2算定評価システムの開発に関する研究

研究期間:平11〜平13
担当者 : 村松、朝倉、水上

 地球温暖化防止京都会議(COP3)で合意された我が国の削減目標である温室効果ガス6%を達成するには、今後一層の省エネ努力、技術開発が必要である。本研究では、建設事業のライフサイクルにおける総コストと総CO2発生量を算出し、CO2削減対策立案を支援するエキスパートシステムの作成を目標とし、平成11年度は建設機械の製造・稼働・廃棄のライフサイクルCO2(LCCO2)総排出量を算定するための算定方法の策定について、バックホウを例にLCCO2の試算と排出量原単位を整理し、建設機械のLCCO2算定方法の課題を整理した。


施工情報活用による品質管理・検査の合理化技術の開発(シールド工)

研究期間:平10〜平12
担当者 : 村松敏光、田中和嗣

 近年の国際社会において,WTO/TBT協定に示されるように,技術仕様はデザインまたは記述的に示された特性よりも,性能に着目して定めることが求められている。また,国内においては,公共工事のコスト縮減のために,品質管理・検査の合理化に取り組むこと等が求められている。このような要求に対応するためには,構造物に本来要求されている性能に着目して,これを実現する設計・施工の効率的な品質管理・検査の実施が考えられる。本研究は,シールド工事を事例として,性能に着目した品質管理・検査の合理化方法の検討を行うものである。
 本研究の全体計画を図に示す。要求される性能を実現して構造物の品質を確保するためには,設計・施工にわたる品質管理・検査の実施が必要である。設計・施工にわたる品質管理・検査の項目は広範囲にわたるため,本研究においては,施工の品質管理・検査について行うこととする。


災害復旧作業における高分解能衛星データ利用に関する研究

研究期間:平11〜平13
担当者 : 村松、新田、服部、水上

土砂災害等の災害発生時には、被災規模など様々な情報を短時間で収集・把握し、復旧作業を安全かつ速やかに行う必要がある。また、最近では衛星リモートセンシングデータの精度が向上し、広範囲かつ高精度な地表のデジタル情報が取得可能となってきた。このため本研究では、現在用いられている現場写真などに加え、衛星データを利用することで、より的確に現場状況を把握し、二次災害を防止するともに効果的な災害復旧計画を立案することが目的である。11年度は、過去の災害事例および衛星データについての文献調査を行い、各復旧段階で要求される情報特性を整理した。今後は現在の取得情報と衛星データを絡めた効果的な情報の提案、衛星データへの要求手法をとりまとめる予定である。


道路と生活の安心・安全の向上

研究期間:平10〜平12

10年度は道路維持管理作業全般を対象に作業毎の機械運用方法、作業で用いる情報の整理、機械作業効率化に関する問題点とニーズを調査し、ITS技術適用の効果が期待できる分野として除雪作業を抽出した。
11年度は、道路管理全般における情報のフローを分析し、維持管理における情報収集、共有、交換の課題を抽出し、ITS資産活用によるサービス内容を整理し、その実現に向けて基本的なリクワイアメントをまとめた。
さらに維持管理業務のうち、特に現場の状況変化の把握と適切な判断が求められる除雪について詳細な分析を行い、その結果を状況把握・作業判断指示・作業実施の各段階における課題としてまとめ、これに対応し設定したサービスへの要求水準をリクワイアメント(1次)として整理した。


道路交通の効率性の向上

研究期間:平11〜平14
担当者 : 村松、持丸、水上

道路消融雪設備は、刻々と変化する気象に応じて所要の融雪能力を発揮するには、熱源は最大降雪時に合わせた大きなものが必要である。したがって下水道熱・太陽光熱等の未利用のエネルギー源は、日や年の変動が大きく、必要に応じて熱を供給できない恐れがあり、活用されていなかった。そこで、未利用エネルギーを利用した自然にやさしい融雪設備について、積雪地域の都市部を対象としたメッシュ分析などのフィージビリティ調査を行った。この結果、都市に賦存するエネルギーは、他の熱源との複合化や蓄熱によって、都市部の道路融雪に利用可能であることが判明した。また、ピーク降雪に合わせて大量の熱を路面から放熱するには、舗装の耐久性から加熱温度には限界があり、舗装材料の熱抵抗を減らしたり、放熱パイプを密に敷設するなどの工夫が必要であることが明らかになった。


GIS技術を活用した機械施工に関する調査試験

研究期間:平11〜平13
担当者 : 村松、朝倉、江原

建設機械による施工は、コスト縮減・省人化を目的として自動化・ロボット化が進められてきた。しかし、建設機械の制御において、調査、測量、設計、施工に至る一連の情報を活用するまでには至っていない。一方、近年では、建設CALSを代表した建設事業の情報の共有化への取り組みや、GIS等の国土基盤情報の整備が本格化しており、今後、それら情報の有効活用が進められようとしている。本調査は、設計・施工はもとより維持管理段階における管理情報および施工情報とGIS情報との連携による、機械化施工の更なる自動化・半自動化の推進を図るため、施工関連情報の標準化手法を整理するものである。平成11年度は、土工機械に関連する施工支援システムについての事例調査を行い、施工支援項目と情報の流れの整理、計測管理事項、手法、データ活用先、施工支援システムの全体像、諸外国の動向調査および標準化に関する課題の整理を行った。


河川管理用機械設備の集中管理システムの信頼性に関する調査

研究期間:平8〜平11
担当者 : 村松、持丸、服部

河川管理用設備である排水機場は、揚排水ポンプ設備設計基準(案)に従い設計され、排水機場設備点検・整備指針(案)に従い点検されている。これらの基準では、従来型の設備、機器が中心となっており、近年導入されているコンピュ−タ設備を中心とした集中管理システムに対するものとしては、必ずしも最適とはいえない。そこで、本業務は、図−1に示すとおり集中管理システムの信頼性確保方策及びその評価手法を提案し、集中管理方式の導入効果の検証を目的としている。
11年度は、信頼性の高い集中管理システムに必要な技術事項を、技術基準や点検整備指針としてとりまとめた。さらに、集中管理システムの導入効果をマクロ的に整理し、故障復旧時間が約10%削減できることが得られた。


ダム・堰・水門等の設備設計における性能規定化に関する調査

研究期間:平11〜平13
担当者 : 村松敏光、持丸修一、田中和嗣

近年の建設工事において,構造物本来の目的達成を重要視することや,設計・施工の自由度向上によるコスト縮減や新技術開発導入の促進が求められている。そのために,設計・施工における各種技術基準類の性能規定化が進められている。ダム・堰施設技術基準(案)(以下「技術基準」と略す)についても性能規定を考慮したものに改定されている\cite{ダム堰}。しかし,この改定は,設計・施工の目的を明確にすることに主眼をおいて改定されたものである。本研究は,技術基準を真の性能規定型の基準とするためにダム・堰・水門等の設備設計について,「性能を基盤とした設計体系」を確立するとともに,技術基準の最終的な性能規定化を行うための検討を実施するものである。


建設機械の遠隔操作制御に関する調査試験

研究期間:平9〜平11

土砂災害により甚大な被害を受ける現場では早急な復旧が求められるが、被災直後の復旧作業は二次災害の発生が懸念され危険である。その対策として作業員の安全確保ができ早期に作業開始が可能である遠隔操作型の建設機械が用いられ効果を発揮している。しかし、遠隔操作型の建設機械が使用された災害復旧現場において事例調査を行い課題を整理した結果、遠隔操作型の建設機械は国内の台数が少ないこと等から調達に時間を要することや、作業効率が低いこと等が課題として抽出された。
平成11年度は、復旧工事の迅速な開始と安全性向上を図るため、汎用型建設機械の遠隔操作型への改造方法の共通化について検討を行い、機械の調達から作業開始までの調達体制を整理した。


河川用ゲート設備への新技術の適用に関する調査

研究期間:平10〜平12
担当者 : 村松、田中、江原

河川用ゲート設備は,複数の腐食要因が複雑に作用する河川環境下に設置されるため,予想外の腐食が発生する場合がある。腐食による設備の機能障害を防止するために,試験片による防食性能試験が行われているが,複雑な形状と種々の加工を有する河川用ゲート設備の防食性能の評価としては限界がある。河川用ゲート設備の防食性能は,既知の知見に加えて,適切な防食性能試験により必要な情報を収集して評価する方法が有効である。
本研究は,河川用ゲート設備の設計に関する新技術としての防食設計手法確立を目的とした検討を実施するものである。11年度より,河川用ゲート設備の形状や加工等を考慮した暴露試験体による暴露試験を開始した。


工事騒音・振動・大気予測検討調査工事騒音・振動・大気予測検討調査

研究期間:平11〜平15

平成11年6月より施行された環境影響評価法を踏まえ、新たな評価項目である工事中の騒音・振動・大気質について、予測に資する調査・検討を行っている。しかし、施工形態の変動、新工法・新工種の出現により建設作業からの排出原単位が変化するため、施工実態と予測手法が遊離していないか継続的に管理する必要がある。今回の予測手法についてもアセスメント実施後に発生しうる諸問題に迅速に対応し、より実態に即した予測の検討及び実測調査を実施していく必要がある。また、指針等省令において、環境影響予測に対する知見の進展に伴い5年を目途に見直すこととされている。


高流速化排水ポンプの検討調査

研究期間:平11〜平11〜
担当者 : 村松、持丸、新田、水上

近年、排水機場の施設規模縮小化を図るひとつの手段として、大型排水機場にて実績が挙げられている高流速型吸込槽を中小規模の排水機場に適用し、施工コストの縮減を図るものである。本研究は、共同研究で提案された高流速型吸水槽および高比速度ポンプを適用し、具体の排水機場を対象に空気吸込渦や水中渦発生の有無の確認、およびコストの試算を行うものである。