<ダム部>

水工水資源研究室 平成11年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


水循環の健全性評価に関する研究

研究期間:平11〜平13
担当者 : 柏井条介、岡田智幸

 近年、流域における安定的な水資源の利用、渇水等の緊急時に備える防災、水と親しむ自然環境などの視点から、健全な水循環の確立が求められるようになっている。これを受けて建設省を含む関係6省庁は、健全な水循環の構築に向けて検討を進めているところである。しかし、具体的に水循環の健全性を評価する一般的な指標や、その指標を用いた評価手法は未だ開発されていない。本研究は水循環状況の健全性を評価するための評価指標を選定し、その指標による評価方法を提示することを目的とする。
 11年度は経済的評価の観点から、環境価値および水資源開発効果を渇水被害により評価することとし、研究事例の調査と検討を行った。


水路の磨耗・損傷負荷に関する研究

研究期間:平11〜平13
担当者 : 柏井条介、宮脇千晴、塚原千明

 ダム堆砂対策施設やトンネル導水施設等、土砂流下が考えられる河川の水理構造物の設計においては、土砂の流下に伴う摩耗や損傷が懸念され、水路ライニング手法の適正化や維持管理手法の合理化が求められている。そのためには、土砂流下による水路の摩耗・損傷量を的確に把握・評価する必要があり、本研究は摩耗・損傷量を評価するための基礎的検討として、砂礫が水路に与える衝撃力の測定方法を確立することを目的とする。
 11年度は衝撃力を計測するための装置の検討を行い、PVDFセンサーを選定するとともに、ステンレス球を用いた計測を行った。


熱帯・亜熱帯地域の貯水池土砂管理に関する研究

研究期間:平9〜平12
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭

 熱帯及び亜熱帯地域の河川においては、特有の雨期の激しい降雨と乾期の乾燥の繰り返し、また、近年の熱帯雨林喪失の加速などにより、山地から河川への土砂生産が極めて多くなっている地域があり、これらの地域において水資源開発を目的として建設されたダム貯水池の堆砂問題が深刻化している。本研究は、こうした背景を踏まえて、(1)地域特有の流入土砂の性状把握、(2)貯水池堆砂問題の現況整理、(3)貯水池における微細粒子の挙動把握、(4)土砂の特質を考慮した適正な土砂管理手法の検討を行うものである。9年度は、(1)に関して既存の文献による整理を行うとともに、(2)に関してインドネシア、フィリピン、ベネズエラなどの貯水池の堆砂状況に関してアンケート調査を実施し、基礎資料の収集・整理を行った。10年度は、(3)に関連して亜熱帯地域に属する沖縄の貯水池において、洪水時に的確に濁質測定可能な観測装置の検討と、洪水時に流入する微細粒子を把握するための現地測定を行った。
 11年度は現地測定を継続するとともに貯水池における微細粒子の挙動について検討した。


建設事業が水域の生態系に及ぼす影響の予測技術の開発

研究期間:平9〜平12
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、塚原千明

 建設事業が水域の生態系に及ぼす影響について、ダム建設等による河川の水質変化や生物の生息場の形態変化を対象に、その変化を把握し、また予測・評価する手法を検討することを目的とする。
 11年度は、ダム貯水池建設後の下流の流況変化が生態系に及ぼす影響を明らかにする上で重要な流量変動により生ずる礫に付着する藻類の剥離現象について流速及びその流れ場の継続時間をパラメータとした実験・分析を行った。


貯水位低下時の堆積土砂の侵食・流出過程に関する研究

研究期間:平11〜平12
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、宮井貴大、塚原千明

 管理ダムの増加とともに計画値以上の堆砂実績を示す事例が見られ、限られた水資源開発容量を世代に渡って持続的に有効に利用するための積極的な対応が求められるようになってきている。この対策の一つとして、貯水位を低下させて掃流力を増大させ、堤体に設けた排砂門から堆積土砂を流水とともに排出し、貯水機能を回復させて持続的に利用する技術が注目されている。しかしながら、貯水位低下時の堆積土砂の移動現象については不明な点が多い。本研究は、貯水位低下を伴う排砂時における、堆積土砂の排出量、排出土砂の粒度分布、排砂時の水質等を予測するために、堆積土砂の侵食・流出過程を明らかにすることを目的とする。
 11年度は、フランスから研究者を招へいし、フランスにおけるダムの堆砂問題、特にローヌ川における排砂についての情報を収集するとともに、貯水位低下時の堆積土砂の移動現象を再現するための水理模型実験手法について検討した。


水循環モデルを用いた水資源管理手法に関する調査

研究期間:平11〜平13
担当者 : 柏井条介、宮井貴大

 近年、水行政における「水循環」の重要性が増大しており、「国民の生命と財産を守り育て、豊かな自然環境を育むことを基本に、人間の諸活動を持続可能とする健全な水循環系を保全・回復すること」が課題とされている。水資源開発施設の整備は、水循環系における人為的な水利用の比率を高めてきたが、将来に渡って健全な水循環系を維持していくためには、水資源管理者においては施設の効率的な管理が、また、水利用者においては水を大切に使う循環型社会の構築が求められている。このためには、水循環系における水利用の実態を明確にするとともに、渇水等のさまざまな状況下での水利用変化による循環変化と、これがもたらす自然的・社会的影響を的確に把握し、かつ、これら情報を水資源管理者のみならず水利用者も等しく認識することが重要である。本調査は、こうした背景を踏まえて、(1)水循環モデルの機能・精度の向上、(2)水資源施策代替案作成ソフトの開発、(3)水循環表示ソフトの開発、を行うものである。
 11年度は、(1)の検討を行うためのもととなる文献収集を行った。また、水循環シミュレーションの実施に向けて水資源連関表のデータベース化を図るとともに、本モデルで用いる各種情報をリレーショナルデータベースの設計手法により構造化した。


空気混入流の水理特性に関する調査

研究期間:平9〜平11
担当者 : 柏井条介、桜井力、櫻井寿之

 ダムの放流設備において生じる空気混入現象は、乱れを伴う極めて複雑な現象であり、その水理特性については、明らかにされていない部分が多い。一方、近年、フィルダムや再開発ダムにおいてはトンネル式放流設備が、また、景観設計の意味から導流部に凹凸を設けることの要請が強くなっている。これらの適切な設計手法を確立するためには空気混入流の水理特性を把握することが必要である。
 11年度は、導流部における空気混入現象を対象として、滑らかな水路および底部に凹凸を設けた場合について、実物大の模型を用いた水理実験を行い、水路底部に凹凸を設けることによる空気混入状況や壁面作用圧力の変化を把握した。


ダムの洪水処理に関する調査

研究期間:平9〜平11
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、岡田智幸

 我が国における洪水調節を目的とするダムの管理経験年数の増大に伴い、ダムの洪水処理実績も蓄積されてきている。ダムの流水管理に関する情報は、「多目的ダム管理年報」などにより整理・報告されているものの、従来からこれらの体系的分析については、解析手法を含めて十分に整理されていないのが現状であり、既設のダムの洪水調節機能を適正に評価し、今後のダム管理に活かしていくことが求められている。本研究は、実績資料をもとに、ダム貯水池に対する洪水流入波形の特性や実際の貯水池運用操作を踏まえた洪水調節効果の評価を行い、ダムのより合理的な洪水処理操作手法を検討するものである。8年度は、主要ダムの洪水波形及び洪水処理操作の実績資料を東北と九州を中心に収集しデータ入力を行った。9年度は、これらデータを用いて、(1)洪水波形特性(降雨−流出特性、洪水規模(洪水総流出量、ピーク流量)など)、(2)洪水調節効果(調節総量、ピークカット量など)それぞれの観点から洪水に関する基本的諸量の分析を行った。10年度は、実洪水時にダムが有する洪水調節効果を評価するため、洪水貯留開始時の空き容量について検討した。
 11年度は、10年度に引き続き洪水調節開始時の空き容量についての検討を行うとともに、出水初期の洪水調節操作までのすり付け操作手法について検討した。


貯水池堆砂の予測手法に関する調査

研究期間:平11〜平14
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、宮井貴大、櫻井寿之

 近年、流砂系を把握した上での流域の土砂管理への要求が高まっており、流下土砂量を知るための貴重な情報源として、粒度構成も含めたダム堆砂量の解析が必要となっている。また、従来からの課題である貯水池計画を適正なものとすることに加え、近年求められている堆砂対策の検討のため、貯水池堆砂形態の精度の良い推定方法が求められている。本調査は、こうした背景を踏まえて、(1)貯水池流入土砂量とその粒度構成の把握、(2)貯水池堆砂シミュレーションの開発、を行うものである。
 11年度は、(1)の検討を行うための基礎資料となる、ダム貯水池の堆砂実績について、粒径も含めた資料の収集及び貯水池における出水時の微細粒子の挙動に関する資料収集を行うとともに、芦田らの方法に従い、流域からの流出土砂量という観点で堆砂量データの整理を行った。


土砂輸送トンネル水路の設計手法に関する調査

研究期間:平11〜平13
担当者 : 柏井条介、塚原千明

 洪水時に土砂流出の多い地域では、貯水池に流入してくる土砂の堆積による貯水容量の低下、濁水の長期化等が問題となり、その対策が求められている。堆砂対策の一手法として、流入土砂を流水と共にバイパストンネルによって貯水池を迂回させて放流する方法がある。この方法は、既存ダムの従来の運用方法の中で実施できる方法として今後の発展が期待されているが掃流砂成分をバイパスさせるためには、トンネルの土砂輸送力を正確に評価るとともに水路内の摩耗・損傷を的確に評価し、適切なライニング方法及び維持管理方法を確立させていく必要がある。
 11年度は、土砂によるトンネルの摩耗・損傷量を把握するためステンレス球によるコンクリートの損傷実験を行った。


貯水池内の流動現象に関する調査

研究期間:平9〜平12
担当者 : 柏井条介、櫻井寿之

 貯水池の水温・水質問題対策の一つとして貯水池内の流動を制御する方法が考案されているが、実際に運用法を計画するために必要となる貯水池の流動現象に関する知見は十分でない。そこで、本調査では、現地観測、水理模型実験、数値シミュレーション等の手法を用いて貯水池内流動現象を把握し、効果的な流動制御法の計画に資することを目的とする。
 11年度は、流動制御施設の一つであるカーテンシステムについて、水理模型実験を行うことによって、その基本的な水理特性を把握し、濁水問題等に対するカーテンシステムの流動制御の効果について検討を試みた。


森吉山ダム水理模型実験

研究期間:平11
担当者 : 柏井条介、桜井力、宮井貴大、塚原千明

 森吉山ダムは、米代川水系の最大支川である阿仁川の右支川小又川の上流に建設の計画されている、堤高90.0m、堤頂長651.0mの中央コア型ロックフィルダムである。本調査は森吉山ダムについて、地形を考慮した洪水吐き減勢工下流河道の流況を確認し、適切な護岸方法を検討するとともに、湾曲の大きい仮排水トンネル湾曲部の影響を調査し、適切な湾曲形状を設定することを目的に実施した。
 11年度は、洪水吐き減勢工については、水理模型実験により減勢工下流河道の流況調査を行った。仮排水トンネルについては、湾曲角度を変更させることができる水理模型を製作し、実験を行った。


選択取水設備の水理に関する調査

研究期間:平11
担当者 : 柏井条介、塚原千明

 摺上川ダムは、阿武隈川水系摺上川に建設されている堤高111.0m、集水面積160km2、総 貯水容量153,000,000m3のロックフィルダムであり、洪水調節、流水の正常な機能の維持、発電および新規利水の確保を目的としている。摺上川ダムでは、選択取水設備として円形多段式ゲートの採用を検討しているが、従来の多段式ゲートでは、各扉体間の水密部がゴムによって水密されており、ゴムの摩耗・変形・劣化等により定期的にゴムの取り替えが必要となる。
 本研究では、多段式ゲートの各扉体間の水密を金属水密にすることによってメンテナンスフリーとすることを提案し、金属水密による隙間と漏水量の関係について調査・検討を行った。


ダム貯水池の管理支援に関する調査

研究期間:平10〜平11
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、宮井貴大

 今後のダム管理の高度化を進めるために、貯水位・流入量・放流量などのダムの基本情報を管理するダム管理用制御処理設備とともに、管理者が行う流水管理操作を円滑に行う上での支援情報を提供することを目的とする貯水池操作支援システムの整備が求められている。本調査は、大滝ダムを対象にAI技術を用いた貯水池操作支援システムの実用システムを開発するものである。10年度は、既存の貯水池操作支援システムの試作システムの課題整理を行った。
 11年度は、既往の出水時の水文・気象等の資料収集を行い、それらデータを用いて貯水池操作支援システムの判断材料のひとつとなる降雨量予測値及び流出量予測値の信頼性を評価した。また、洪水時のダム貯水池操作の実態について、ダム管理者を対象にヒアリング調査を行い、既存の貯水池操作支援システムの試作システムの改良点を抽出した。


大規模トンネル式放流設備に関する調査

研究期間:平9〜平11
担当者 : 柏井条介、宮脇千晴、櫻井寿之

 五十里ダムでは、ダム機能の向上のため既設コンクリート堤体内への放流管の埋設が計画されている。この放流管は、対象流量が大きく、堤体ブロック内に収めるため管径をできるだけ小さくする必要がある一方、湾曲部を有し、振動やキャビテーションの発生に対する安全性確保の観点から、管内流速が制約されることが課題となっている。本調査は、湾曲管路の水理特性を明らかにし、管内流速の考え方を整理するとともに、五十里ダム放流管の設計形状を提示することを目的としたものである。
 11年度は、10年度に実施した実施提案形状の水理模型実験結果を受け、形状の妥当性を検討するとともに、検討成果を土木研究所資料にとりまとめた。


貯水池内における微細粒子の挙動に関する調査

研究期間:平10〜平11
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、宮井貴大、櫻井寿之

 ダム貯水池に関わる土砂のなかで微細粒子分(浮遊砂、ウォッシュロード)は、総量、移動速度ともに大きく、貯水池の土砂管理上その移動特性を把握することが重要である。そこで、微細粒子に着目した現地観測、数値シミュレーション等により、ダム貯水池への流入土砂量と貯水池における捕捉量の関係を明らかにすることを目的とする。
 11年度は、洪水時に実施された現地観測のデータを整理するとともに、比較的詳細なデータが得られた貯水池について、数値計算によって洪水時の貯水池内の微細粒子挙動を検討した。その結果、出水規模、放流設備標高等の条件が貯水池の微細粒子捕捉率に与える影響に関する知見が得られた。


排砂システムに関する調査

研究期間:平5〜平11
担当者 : 柏井条介、宮脇千晴

 宇奈月ダムは重力式コンクリートダムで、貯水池への年平均流入土砂量が、上流の黒部ダムの堆砂実績から、140万‰と推定されており、効率的に貯水容量を確保するため排砂施設により貯水池内に堆積した土砂を下流へ排砂させることが計画されている。本調査は宇奈月ダム貯水池におけるウォッシュロードを中心とする堆・排砂時の土砂挙動及び流れの把握を目的に実施しているものである。
 11年度は、宇奈月ダム貯水池を再現した3次元模型および排砂設備抽出模型を用いて、ウォッシュロードの堆・排砂特性の調査を行った。併せて、排砂設備の流量把握方法について検討を行った。


ダム貯水池の管理支援に関する調査

研究期間:平10〜平11
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、宮井貴大

 今後のダム管理の高度化を進めるために、貯水位・流入量・放流量などのダムの基本情報を管理するダム管理用制御処理設備とともに、管理者が行う流水管理操作を円滑に行う上での支援情報を提供することを目的とする貯水池操作支援システムの整備が求められている。本調査は、大滝ダムを対象にAI技術を用いた貯水池操作支援システムの実用システムを開発するものである。10年度は、既存の貯水池操作支援システムの試作システムの課題整理を行った。
 11年度は、既往の出水時の水文・気象等の資料収集を行い、それらデータを用いて貯水池操作支援システムの判断材料のひとつとなる降雨量予測値及び流出量予測値の信頼性を評価した。また、洪水時のダム貯水池操作の実態について、ダム管理者を対象にヒアリング調査を行い、既存の貯水池操作支援システムの試作システムの改良点を抽出した。


大規模トンネル式放流設備の水理に関する調査

研究期間:平6〜平11
担当者 : 柏井条介、桜井力

 天ヶ瀬ダムは昭和39年に淀川水系宇治川に建設されたアーチ式コンクリートダムであるが、放流能力増強のために左岸地山部にトンネル式放流設備の新設が計画されている。新設されるトンネル式放流設備は、流入部、口径約11m・延長約330mのトンネル部、ゲート部、トンネル内減勢工、河道とり付け部より構成される計画最大放流量700m3/sの大規模なものである。本調査では、各部の適切な形状を求め、その水理機能を調査するとともに、トンネル内跳水現象により発生する低周波音についての検討を行っている。
 11年度は、発生音の基本的な特性、その発生音圧および周波数特性を推定するために水理模型実験および現地観測による検討を行った。


ゲートレスダムの洪水吐きに関する調査

研究期間:平6〜平11
担当者 : 柏井条介、宮脇千晴、櫻井寿之

 苫田ダムは、吉井川水系吉井川に建設される堤高74.0mの重力式コンクリートダムであり、洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがいを目的とした多目的ダムである。これまでに、常用洪水吐き及び非常用洪水吐きの水理設計案を得ている。
 11年度は、我が国で事例のない新型式ゲートである引張ラジアルゲートの採用が検討されている水位維持用放流設備について水理模型実験により検討を行った。その結果、引張ラジアルゲートの放流能力、水理特性を明らかにし、整流施設形状の検討、減勢工への影響の確認を行うことによって基本形状の水理設計案を得た。


灰塚ダム水理模型実験

研究期間:平11
担当者 : 柏井条介、岡田智幸

 灰塚ダムは、江の川水系上下川に建設中の、堤高50m、堤頂長212mの重力式コンクリートダムである。ダムの目的は、洪水調節、流水の正常な機能の維持、および水道用水の供給である。そのうち洪水調節は自然調節方式により、ダム地点における計画高水流量1,150m3/sのうち、750m3/sをカットして400m3/sに低減する計画である。
 11年度は、灰塚ダムの全体模型(縮尺1/40)の製作を行い、洪水吐きの水理機能調査を実施するとともに、実験原案の妥当性の確認と今後必要な改良の方向性を検討した。


殿ダム水理模型実験

研究期間:平11
担当者 : 柏井条介、箱石憲昭、塚原千明

 殿ダムは、千代川水系袋川に建設が計画されている堤高73.0m、堤頂長277.0m、堤体積2,040,000m3、集水面積38.1km2、湛水面積0.64km2、総貯水容量12,400,000m3のロックフィルダムであり、洪水調節、流水の正常な機能の維持、発電、水道用水の安定的供給及び工業用水の確保を目的として建設が予定されている。殿ダムの洪水調節計画は自然調節方式で、設計洪水位EL.197.0mにおいて常用洪水吐きと非常用洪水吐きからの放流を併せてダム設計洪水流量1,100m3/sを放流可能できるように計画されている。
 本調査は、殿ダムの洪水吐き案について、水理模型実験により水理機能調査を実施し、本形状の妥当性を検討するものである。


ダム貯水池堆砂形態に関する調査

研究期間:平8〜平11
担当者 : 柏井条介、櫻井寿之

 立野ダムは、熊本県白川水系白川に建設される堤高92mの曲線重力式コンクリートダムであり、自然調節方式による洪水調節を目的とした治水専用ダムである。本ダムは、常時には水を貯留していない状態にあり、洪水の度に貯水池内の水位変動とともに堆砂・排砂現象が繰り返される。
 11年度は、貯水池内に保存が検討されている鋼アーチ橋への出水時の流れの影響を把握するために、出水時の貯水池内の流れについて3次元数値シミュレーションを行った。その結果、貯水池内の流況の概要を把握することができた。