<構造橋梁部>

橋梁研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


ライフサイクルコスト概念に基づく道路橋の設計手法に関する研究

研究期間:平8〜平10
担当者 :西川和廣、村越 潤、上仙 靖、川間重一

 橋梁の高齢化による維持管理費の増大が、我が国の将来における社会資本の整備または維持管理の大きな障害となることが広く言われている。この深刻な状況を打開するためにも、維持管理費を大幅に低減し長寿命化を図った、いわゆるライフサイクルコストの小さい橋梁の整備が急務となっている。従って、設計段階から耐荷力だけでなく、鋼橋においては腐食劣化や疲労といった維持管理に関わる耐久性をも考慮に入れたLCCの評価法を確立していく必要がある。
 このような背景のもと、8年度は既設橋の架替実態調査を行い、架替理由、供用年数、架替費用等について分析を行った。さらに9年度、10年度において具体的なLCCの評価法に関しての研究を行い、ポイントによる鋼道路橋のLCCの概念に基づく簡易評価法を提案した。


要求性能と設計・材料・施工・維持管理の品質管理レベルの相関性の検討

研究期間:平9〜平12
担当者 :西川和廣、上仙 靖

 近年の経済の国際化や建設コスト縮減の動きに対し、競争力や透明性の確保、新技術の迅速な導入のためには、従来の仕様規定型の技術基準から性能規定型への移行が必要となってきている。本検討では、鋼道路橋について性能規定型基準としたときの要求性能の枠組みを作成し、性能規定型基準案を提案することを目標とする。
 10年度は、道路橋示方書について、性能規定の観点から分析を行い、性能規定型の基準を目標としたときに橋に要求される性能の枠組みについて整理を試みた。


鋼構造物の品質検査試験技術の開発

研究期間:平9〜平12
担当者 :西川和廣、村越 潤、上仙 靖、高橋 実、川間重一

 近年の経済の国際化や建設コスト縮減の動きに対し、競争力や透明性の確保、新技術の迅速な導入のためには、従来の仕様規定型の技術基準から性能規定型への移行が必要となってきている。本検討では、鋼道路橋について性能規定型基準としたときの要求性能の枠組みを作成し、性能規定型基準案を提案することを目標とする。
 10年度は、性能規定型の基準を目標とした場合の道路橋示方書における溶接継手に要求される性能を明らかにするため、極厚鋼板の溶接継手部に各種の溶接内部欠陥を挿入した試験体に対する高サイクル疲労試験を行った。その成果として、内部欠陥の寸法と疲労強度の関係を明らかにし、ある程度の大きさならば内部欠陥を有していても疲労強度が期待できることが確認された。


地震力を受ける鋼製部材の耐震性に関する調査

研究期間:平10〜平13
担当者 :西川和廣、村越 潤、小野 潔、高橋 実

 一本柱のコンクリートを充填しない鋼製橋脚(以下、「鋼製橋脚」という。)の設計に関しては、道路橋示方書・同解説X耐震設計編等に、水平荷重−水平変位関係の復元力モデル設定の考え方が示されている。ただし、実務設計を踏まえると、汎用性のあるM−Φ関係に基づく鋼製橋脚の復元力モデル設定法についても検討する必要がある。
 10年度は、鋼製橋脚の正負交番繰返し載荷実験結果に基づき、非線形動的解析に用いる鋼製橋脚のM−Φ関係の算定とそれに影響を与えるパラメーターについて検討を行った。さらに、ハイブリッド地震応答実験結果と本検討結果を基に設定したM−Φ関係を用いた非線形動的解析結果との比較を行い、今回比較したケースでは両者が良く対応していることがわかった。


鋼道路橋の疲労設計法に関する試験調査

研究期間:平9〜平11
担当者 :西川和廣、村越 潤、上仙 靖

 鋼道路橋の疲労については、これまで損傷事例の報告されている局部変形や二次応力に関する細部構造の疲労を対象に、主に構造面での対処法について検討が行われている。これらの調査研究成果や活荷重実態調査結果を踏まえ、疲労設計法の体系化を図り、疲労設計の基準の原案を作成するものである。
 10年度は、疲労設計に用いる各種係数の妥当性および疲労設計による現行設計への影響を調べるために疲労設計法の試案に基づき試設計を行った。


鋼げた橋の合理化と品質管理手法に関する試験調査

研究期間:平6〜平12
担当者 :西川和廣、村越 潤、上仙 靖、高橋 実、川間重一

 平成6年12月に「公共工事の建設費のコスト縮減に関する行動計画」が発表され、縮減策の一つとして省力化の推進が挙げられている。本調査では、鋼桁橋において、設計、製作、施工の省力化を重視した桁および床版構造について検討を行っている。
 10年度は、極厚鋼板の溶接継手部における溶接欠陥の種類や位置や寸法の違いが疲労強度に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、各種の溶接内部欠陥を挿入した試験体に対する高サイクル疲労試験を行った。その成果として、内部欠陥の寸法と疲労強度の関係を明らかにし、ある程度の大きさならば内部欠陥を有していても一定水準以上の疲労強度が期待できることが確認された。


超長大橋の上部構造の設計・施工に関する試験調査

研究期間:平6〜平10
担当者 :西川和廣、村越 潤、小野 潔、高橋 実

 国土の均等ある発展を目指し、経済の健全な進展と地域の活性化を図るため、全国各地で海峡を横断する道路プロジェクトが構想されており、既往の実績を上回る超長大橋の適用可能性についても検討されている。本調査では、工期及び工事費の削減を目指した超長大橋の設計方法について検討するものである。
 10年度は、低速走行を想定した活荷重シミュレーションにより最大断面力を求め、現行設計活荷重(等価L荷重)による断面力と数値的に比較することにより、より合理的な設計活荷重の提案の可能性を述べた。


外ケーブル工法を適用したPC橋の合理化に関する試験調査

研究期間:平10〜平12
担当者 :西川和廣、内田賢一、廣松 新、宮崎和彦

 PC橋における外ケーブル工法は、上部工の軽量化が可能なこと、プレキャストセグメント工法との併用により施工の省力化が期待できること等の長所がある。しかし、外ケーブル方式のPCげたの終局時の挙動に関して不明な点が残されており、また、国内の規準類も十分には整備されていない。本調査は、外ケーブル工法の設計・施工指針を作成することを目標に、同工法を適用したPC橋の設計・施工の合理化に関する検討を行うものである。
 10年度では、外ケーブル方式PCげたの曲げ破壊実験を行い、内外ケーブル比率やプレキャストセグメント工法の併用等が、曲げ破壊性状に与える影響を確認した。また、現在提案されているアンボンドPCげた曲げ耐力算定式を利用し、計算値と実験値との比較を行った。


コンクリート部材の補修・補強に関する試験調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :西川和廣、内田賢一、廣松 新、宮崎和彦

 本試験調査は、既設コンクリート道路橋の疲労耐久性および耐荷力の向上を目的として、炭素繊維補修・補強工法技術研究会と共同で、炭素繊維シート接着工法による補修・補強効果の検討を行うものであり、これらの検討結果を基に炭素繊維シート接着工法の設計・施工指針(案)を作成することを目標としている。
 10年度は、RC床版およびけたに炭素繊維シートを接着し、床版は疲労耐久性の把握を目的に輪荷重走行試験、けたについては、PCげたの曲げ補強効果およびけたのせん断補強効果の把握を目的に各種試験を実施した。


床版補修補強工法の検討調査

研究期間:平10
担当者 :西川和廣、内田賢一

 わが国では、現在66万橋以上(支間2m以上)の道路橋が供用されており、こうした膨大な数の道路橋を適切に維持管理することが重要な課題となっている。特に、道路橋床版においては、交通量の増大や車両の大型化の影響により一層、苛酷な状況が生じると予想される。このため床版の破壊メカニズムの解明を行い、損傷状態に応じた効果的な補修・補強工法を検討することが急務となっている。
 そこで本調査では、床版の破壊メカニズムの解明のために一般的に鋼橋床版、コンクリート橋床版で行われる鉄筋の配置方法を考慮して製作された鉄筋コンクリート床版(RC床板)を対象に疲労耐久性の把握を目的に輪荷重走行試験を実施した。試験の結果、RC床版に配置される圧縮側鉄筋の配置方法により床版の疲労耐久性になんらかの影響を与えることが確認された。


小型車専用道路の導入に関する調査

研究期間:平9〜平10
担当者 :西川和廣、村越 潤、小野 潔、川間重一

 都市内及び都市近郊において、交通需要の増大に対応した道路構造が求められる中、コスト縮減、環境保全、道路空間の有効活用等の諸課題を解決する一つの方策として小型車専用道路の導入が提案されている。本研究では小型車専用道路のうち橋梁構造(以下、「小型車専用橋梁」という。)について技術的検討を行い、コスト縮減効果及び省スペース化(橋脚幅の縮小)の観点から従来橋との比較を行い、小型車専用橋梁の導入効果について試算を行った。
 10年度は、車両重量3tfの乗用車を設計車両とした小型車専用橋梁の検討を行い、従来橋に比べコスト縮減及び省スペース化の可能性があることがわかった。