<構造橋梁部>

構造研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要



橋梁における強風対策に関する研究

研究期間:平8〜平10
担当者 :佐藤弘史、大儀健一、松藤洋照

 強い横風は自動車の走行性を損ない事故を誘発し、一部道路及び橋梁においては強風により通行止めになることがあり、効果的な防風柵により走行安全性を確保する必要がある。本研究では、橋梁の耐風安定性に影響の少ない効果的な防風工を提案することを目的とする。
 10年度は逆台形型の断面を用いて、防風フェンスの形状が防風効果、耐風安定性に与える影響について検討した。その結果、防風フェンスを全面に設置するのではなく路面付近を開口することにより、耐風安定性は向上し、吹き抜け効果により路面付近の遮風性能は悪化するものの、車両に作用する風圧力を考慮し適切な位置および充実率で設置すれば良いことがわかった。


要求性能と品質レベルの相関性の検討(構造物の性能に与える品質の影響度)

研究期間:平9〜平12
担当者 :佐藤弘史、井上純三、大儀健一

 近年、建設コストの縮減、建築分野での国際的な性能規定化の動きに対し、国内の各土木構造物基準類においても性能規定化の研究が求められている。本課題は、一般土木鋼構造物の性能規定体系において必要な要求性能を整理するとともに、土木構造物に関する技術基準の一部を性能規定化して提案することを目的とする。
 10年度は、一般土木鋼構造物に関する各基準に対して性能に関する分類を行い、規定方法の特徴を調査した。また、分類結果をデータベースとしてまとめた。


次世代海上横断構造物の建設技術の開発

研究期間:平9〜平10
担当者 :佐藤弘史、楠原栄樹、間渕利明

 四方を海に囲まれ、多数の島嶼部を抱えている我が国において、地域間の連携、交流を図るためには、海上を横断する橋梁等の整備が不可欠である。本研究の目的は、海上を横断する橋梁等の構造物を対象として大幅なライフサイクルコストの縮減に資する新たな構造形式の検討を行い、提案された構造形式について実現可能性の調査を行い、その技術的課題を整理することである。
 10年度は、新たな構造形式として考えられる浮体橋、新形式吊橋、水中構造のうち、前年度の検討において最も経済化が図られ、実現の可能性が高いと判断された浮体橋について技術的な課題に関する検討を実施した。
 その結果、技術的な課題は残されているものの、国内沿岸域における浮体橋適用の可能性は比較的高いことが明らかとなった。


長大橋の耐風応答推定手法の開発に関する共同研究

研究期間:平10
担当者 :佐藤弘史、間渕利明

 本研究は、長大橋が風から受ける力(空気力)に関する実験結果を数値シミュレーション結果とを比較検討し、長大橋のより合理的な耐風応答の推定手法を開発するものである。
 10年度は矩形断面を対象とし、ワシントン大学で開発された、渦点法に基づいた数値シミュレーション手法を用いて、断面まわりの流れ、空気力について解析を実施した。解析結果と実験結果の比較検討を行った。その結果、流れのパターンに関しては定性的に一致するものの、抗力係数値などについてはさらに検討の余地があることが明らかとなった。


低次交通振動の評価と制振に関する試験調査(その2)

研究期間:平7〜平10
担当者 :佐藤弘史、井上純三、二川英夫

 道路交通振動に対する対策が求められている。10年度は、地盤内の低次交通振動対策として考えられる地中壁及び地盤改良工の効果を2次元動的FEM解析により調査した。また、自動車のサスペンション、高架道路のジョイント構造に関する研究資料を収集し、発生源対策としての可能性を調査した。
 今回の解析結果によると、地中壁が長い場合、地盤改良の範囲が広く、改良程度が大きい場合に、対策効果が大きくなる傾向にあることが分かった。また自動車のサスペンション、高架道路のジョイント構造が振動対策として可能性があることが分かった。


耐風性に優れた超長大橋の設計法に関する試験調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :佐藤弘史、楠原栄樹、大儀健一、松藤洋照

 各地で計画されている海峡横断プロジェクトでは、明石海峡大橋を超える規模の超長大橋が必要とされており、その耐風安定性の確保は重要な課題となっている。10年度は9年度に引き続き、開口部をグレーティングで覆い、その上を車道として利用することを前提とした二箱桁断面についてバネ支持実験等を実施し、耐風安定性を調査した。
 10年度は、センターバリアの形状と大迎角時の非定常空気力係数に着目して調査を進めた。その結果、センターバリアを橋軸方向に水平に設置した断面も、これまで検討を行ってきた断面と同様に良好なフラッター特性を示すことがあきらかとなった。また、このような二箱桁断面の非定常空気力は迎角の影響を大きく受け、負迎角時にフラッター特性が悪化する可能性があることがわかった。


落石防災対策の合理化に関する試験調査(その2)

研究期間:平7〜平10
担当者 :佐藤弘史、間渕利明、二川英夫

 RC製およびPC製ロックシェッドの両者の長所を兼ね備えた靭性を高めたPC製ロックシェッドを開発しその設計法を確立するため、これまでに主梁のPC鋼材量と鉄筋量のバランスに関する検討、主梁の靭性改善に関する検討、各接合部に関する検討などを行ってきた。
 10年度は、構造物の吸収エネルギーを推定するために、静的骨組弾塑性解析プログラムを作成した。また、これまでに行ってきた静的・衝撃実験結果をもとに、エネルギー法によりロックシェッドの耐衝撃性を推定することの妥当性を検討した。


数値流体解析による風況推定に関する調査

研究期間:平9〜平11
担当者 :佐藤弘史、大儀健一、松藤洋照

 道路橋耐風設計便覧では、設計基本風速の設定は、気象官署の風観測データに基づく基本風速マップを用いている。しかし、局所的な強風が吹き抜ける地形条件においては、特別な補正が必要で、長期の風観測や風洞実験等により風況を推定しているが、時間的・経済的に実施が困難な場合もある。本課題は、従来法よりも簡便な手法として、数値流体解析により風況を推定する手法を提案するものである。
 10年度は、地表面境界条件が解析結果に与える影響を検討するため、地表面粗度モデルを考慮したプログラムを作成し、平板上に形成される境界層乱流の解析および独立峰周りの流れ解析に適用し、従来の境界条件との比較を行った。


耐風設計エキスパートシステムの開発に関する調査

研究期間:平7〜平10
担当者 :佐藤弘史、間渕利明、松藤洋照

 耐風設計が必要とされる橋梁の設計を大きく簡略化する技術として、耐風設計に関するエキスパートシステムの開発が求められている。本研究では、道路橋の動的耐風設計の進め方や経験的なノウハウ、判断方法、事例データの参照などをシステムに組み込んだ、道路橋耐風設計エキスパートシステムの構築を目標とする。
 10年度は、主塔の耐風安定性について、過去に主塔の三次元弾性模型風洞実験を行ったケースについて、9年度に引き続いてバネ支持実験を実施し、2次元と3次元模型による耐風安定性をより詳細に比較検討した。また、9年度までに作成されたエキスパートシステムのプロトタイプに、耐風設計に必要となる重要な用語の解説を追加するとともに、英語による表現も可能となるようなシステムの機能向上を図り、エキスパートシステムを構築した。


環境アセスメント技術に関する検討(振動に関するマニュアル検討)

研究期間:平10
担当者 :佐藤弘史、井上純三、二川英夫

 平成9年6月に公布された環境影響評価法公布を受けて、建設省では平成10年6月に環境影響評価の手法及び環境保全措置に関する省令を制定公布した。
 本調査では自動車走行時の振動の予測式について、作成手法を見直すとともに最近のデータを追加した検討を行い、新しい道路交通振動予測式(案)を得た。さらに振動の調査、予測、評価、環境保全の手法について検討を行い、道路環境アセスメントマニュアルの素案を作成した。


道路交通振動の基準に関する調査

研究期間:平10
担当者 :佐藤弘史、井上純三、二川英夫

 環境庁において振動規制法見直しの動きがあり、道路交通振動の測定方法、要請限度が将来変更される可能性がある。本調査は直轄国道における道路交通振動データの収集と分析を行い、測定方法の変更が測定値へ及ぼす影響、及び要請限度値の変更が基準達成率に及ぼす影響や対策の可能性について調査した。
 振動のピーク値や時間変動を考慮した場合は現行法より測定値が大きくなること、要請限度が厳しくなると基準達成率が低下し、既往の対策での対応が難しいことがわかった。