<道路部>

トンネル研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


地山特性に応じた支保荷重の評価に関する研究

研究期間:平10〜平13
担当者 :真下英人、砂金伸治

 NATMにおいては地山の強度を積極的に利用し、掘削に伴う地山の挙動に合致した支保設計を行う必要があり、地山挙動の把握が不可欠である。地山の挙動は連続体と不連続体に分類できると考えられるが、現在の解析的手法による設計では連続体としての支保荷重の概念しか取り入れられておらず、地山の挙動に即した設計の確立が必要であると考えられる。
 10年度は、不連続体の挙動を示すと考えられる標準砂を用いた降下床実験および個別要素法による解析を行い、トンネルに作用する荷重についてTerzaghiによる理論荷重との比較を行った。その結果、不連続体の場合、支保に作用する荷重は土被りに応じてある一定の値で評価できると考えられることが分かった。また、解析値は材料物性の影響を受けやすいことが分かった。


都市トンネルの設計・施工の合理化に関する試験調査(その1)

研究期間:平8〜平11
担当者 :真下英人、石村利明、真弓英大

 既に供用中のトンネルの中には、建設時の旧い基準により建設されたため、現在の基準を満足するように、断面拡大が必要なトンネルがある。既設トンネルの断面拡大の施工技術に関しては、現状は従来技術の組み合わせにより対応しているものの、建設コストが高い、工期がかかるなどの問題がある。また、計画・設計に関しては、既設トンネルの断面形状・健全度に応じた合理的な拡大断面形状、トンネル構造の選定手法が確立されていないなどの課題がある。本調査は、供用中のトンネルを断面拡大する際の合理的な拡大断面形状・トンネル構造を選定する手法を確立するとともに、コスト縮減・工期短縮が可能な合理的な施工技術の開発を行うものである。
 10年度は、これまで実施された既設トンネルの改築の実績調査とともに、今後、開発すべき要素技術項目について検討を行った。


道路トンネルの新照明システムに関する試験調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :真下英人、石村利明、真弓英大

 トンネルは明かり部と異なり閉鎖された条件下となるため、自動車の運転手に心理的圧迫を与え、しばしば坑口付近で渋滞が発生することがある。本調査は、合理的な坑口形状の検討とともに、視線誘導性の高い連続照明方式について検討し、より高速な交通に対応できる安全で快適性に優れた新たな照明システムを提案することを目的とする。
 10年度は、コンピュータグラフィック(CG)による動画像を作成し、坑口形状によるトンネル進入時の走行性とトンネル内の照明器具配列による視線誘導性の関係についてアンケート調査を行った。その結果、坑口形状は面壁型よりも竹割り型のほうが緊張感を受けにくく、走行性が高いこと、断続的な照明器具設置よりも連続的な照明器具設置のほうが、視線誘導性が高いことが分かった。


都市トンネルの設計・施工の合理化に関する試験調査(その2)

研究期間:平8〜平11
担当者 :真下英人、石村利明、真弓英大

 都市部のトンネルにおいてはトンネル掘削による地盤の挙動の予測、近接構造物等に対する影響の把握、事前の対策工の検討が重要となる。本調査は、現在確立されていない地盤挙動の予測、対策工の必要性および評価、都市トンネルの施工法の選定基準を提案することを目的とする。
 10年度は、より実務的な地盤変状の予測手法の確立を目的とし、シールドトンネル施工時に実施された現場計測結果を対象とした有限要素法による数値解析を行い、解析領域の設定が解析結果に与える影響、応力解放率の適切な設定方法を検討した。その結果、応力解放率は、解析領域による影響を受けるとともに、地質および土被りによって異なる値を取る必要があることが明らかになり、適切な応力解放率を設定するためには解析条件を十分考慮する必要があることが分かった。


地山評価と支保設計に関する試験調査(その1)

研究期間:平8〜平10
担当者 :真下英人、砂金伸治、鈴木正彦

 山岳トンネルの工事費縮減のためには地山を適正に評価し、それらの特性に応じた合理的で経済的な支保設計を行うとともに、新材料・新工法を活用し支保工の軽減化を図っていく必要がある。
 10年度は、主に経験と実績により設計および施工が行われているトンネル覆工材料に、既基準に基づくプレーンコンクリートおよび新材料として鋼繊維補強コンクリートを適用した場合の力学的特性を、実大載荷実験を実施することにより検証した。その結果、鋼繊維補強コンクリートを用いた覆工ではひび割れが分散して発生することが分かった。また、ひび割れの中にはトンネル構造の耐力に重大な影響を与えないものもあることが分かった。


トンネル坑口部の設計に関する試験調査(その2)

研究期間:平9〜平10
担当者 :真下英人、砂金伸治、鈴木正彦

 トンネルの坑口部は、地質が悪いことが多く、また地山への進入方向や斜面との離隔といった地形的な要因、さらには何らかの外的な影響による地山内部への新たな亀裂の発生、既存の亀裂の進展等によりトンネル本体に偏土圧等が発生することが考えられる。
 本調査では、地山に亀裂等が卓越した場合のトンネル坑口付近の安定性について、亀裂および地山の要素個々の挙動を解析できる2次元の個別要素法を用いて、亀裂がトンネルの挙動に及ぼす影響を解析した。その結果、流れ盤では斜面角度や亀裂の傾斜角度の影響がトンネルの安定性に顕著に表れ、受け盤ではトンネルに及ぼす影響は小さいことが分かった。


換気の合理的制御に関する調査

研究期間:平8〜平10
担当者 :真下英人、石村利明、真弓英大

 煤煙の設計濃度は、ある照明条件下で運転者が道路前方の障害物を発見し、安全に停止できる限界の濃度として定められているので、照明の明るさを変えれば設計濃度の許容値も変わる。よって換気および照明レベルをうまく組み合わせることで、全体としての設備規模を合理化することができると考えられる。また、換気制御方式をトンネル諸条件に応じて適切に選択することで維持管理コストの縮減を図ることが可能となる。
 10年度は、縦流換気方式の対面交通トンネルの諸条件に応じた経済的・合理的な換気制御方式を選定するため、シミュレーション解析により供用中のトンネルの実績値との比較およびトンネル延長、交通量、換気制御方式をパラメータとしたケーススタディを実施した。
 その結果、換気制御方式では、プログラム制御に比べて、フィードバック制御、ファジィ制御の方が、電気料、15年間のトータルコストともに経済的である上に、自然風が発生した場合でもトンネル内環境が良好に保たれる点で合理的であることが分かった。


シールドトンネル工法の開発に関する調査

研究期間:平10
担当者 :真下英人、石村利明、真弓英大

 シールド工法は、都市内のトンネル掘削工法として採用されることが多いが、山岳工法や開削工法による工事に比べ地盤条件、立地条件の厳しさもあり工事費が高くなっている。本研究は、シールド工事の合理化によりコスト縮減を図ることを目的としている。
 10年度は、シールド工事費に占める割合の高いセグメントを対象として設計法の合理化、製作の合理化、施工の合理化によるコストダウンの可能性について検討した。
 その結果、検討条件下で、現状の工事費に比べて約6から30%のコストダウンの可能性があることが分かった。


小型車専用道路の導入に関する調査

研究期間:平9〜平10
担当者 :真下英人、砂金伸治

 小型車専用道路の導入に当たり、トンネルに関して、構造、付属施設、経済性、走行性といった課題について検討する必要がある。
 10年度は、小断面トンネルの海外事例の調査、構造の検討、および換気施設の検討を行い適用可能性や課題についてとりまとめた。
 その結果、構造の検討では建築限界が低くなるにつれて、特に上下二層形式のトンネルが断面積の縮減効果が最も大きいことが分かった。また換気施設の規模については、急勾配および渋滞時の換気を考慮すると、小断面化に伴う換気規模の縮小といった長所が生かしにくくなる場合があることが分かった。