<道路部>

舗装研究室 平成10年度に実施した調査・試験・研究の成果概要


アスファルト混合物の耐流動性評価手法の改善に関する研究

研究期間:平9〜平12
担当者 :池田拓哉、久保和幸、小森谷 一志

 日本国内におけるアスファルト舗装の破損は、流動によるわだち掘れがほとんどである。現行の耐流動性の評価指標は、ホイールトラッキング試験(以下、WTTという)の動的安定度(以下、DSという)であるが、耐流動性の高いアスファルト混合物の測定においては変形量が微少となるために試験誤差が生じる。そこで、アメリカ合衆国で行われたSHRP(Strategic Highway Research Program:新道路研究計画)において開発されたSUPERPAVEせん断試験機(SUPERPAVE Shear Tester以下、SSTという)の耐流動性評価試験機としての利用を検討した。


ごみ焼却灰溶融固化物の舗装への利用に関する研究

研究期間:平10
担当者 :池田拓哉、木村 慎

 循環形社会の形成により資源の有効利用を図ることは、最終処分場のひっ迫などにより社会的急務となっている。そうした状況において、建設副産物についてはアスファルトコンクリート発生材や建設発生土等のリサイクルを推進してきたが、一方で建設産業以外から発生した副産物を、大量の資材を使用する公共事業において再利用してほしいという要望も多い。
 本研究では、可燃ごみの焼却による減量処理後に発生する焼却残査(焼却灰)を1,200℃以上で溶融して固形化(スラグ化)・無害化したものを、アスファルト混合物用骨材として利用する場合の適用性および安全性について検討した結果、天然骨材に対する混入割合が少なければ適用できる可能性があることを確認できた。


道路舗装用骨材資源の有効利用に関する基礎的研究

研究期間:平9〜平10
担当者 :池田拓哉、久保和幸

 近年、道路舗装用骨材用の良質な砕石や天然砂の確保が困難になりつつあり、社会基盤としての道路舗装の施工には低品位骨材の有効活用が求められている。
 本研究は、アスファルト舗装要綱に示されている目標値を満足しないとして廃棄されていた低品位骨材について、その骨材性状を確認し、これを用いたアスファルト混合物試験ならびに路盤材の性状試験を実施することにより、舗装用材料としての利用価値を再検証したものである。
 その結果、低品位骨材を使用したアスファルト混合物ならびに路盤材は、混合物ならびに路盤材としての規格をほぼ満足し、規格を満足する骨材のみを用いたものと比較してもほとんど遜色ない性状を示した。


AHSに向けた舗装構造に関する試験調査

研究期間:平10〜平11
担当者 :池田拓哉、久保和幸、池田雄一

 走行支援道路システム(AHS)では、路面に磁気ネイル等のマーカーを埋設し車両の走行位置を制御するが、このマーカーの舗装供用性への影響の把握を目的として試走路における破損実態調査ならびに舗装走行実験場における促進載荷試験により路面性状の追跡調査を実施した。その結果、試走路の一部にレーンマーカーの影響と推測されるクラックが見られたものの荷重車による4万周の促進載荷試験では特にレーンマーカーが舗装路面の破損を促進するという傾向は確認されなかった。


長寿命化舗装の耐久性評価に関する試験調査(その2)

研究期間:平6〜平10
担当者 :池田拓哉、谷口 聡

 補修工事の軽減、ライフサイクルコストの低減のためには舗装の長寿命化が求められている。コンポジット舗装はアスファルト舗装の良好な表面機能とコンクリート舗装の構造耐久性を併せ持つ舗装であり、長寿命化舗装の1つとして注目されている。
 10年度はこれまでのコンポジット舗装の研究成果をとりまとめるとともに、9年度に供用を開始した国道52号身延バイパスにおいて試験舗装の追跡調査を実施した。その結果、コンポジット舗装の設計は構造設計をセメントコンクリート舗装として扱えばよいこと、リフレクションクラック対策には誘導目地が適当であることがわかった。


現道上における試験道路に関する試験調査

研究期間:平10〜平19
担当者 :池田拓哉、久保和幸、谷口 聡、東嶋 奈緒子、木村 慎、小森谷 一志、池田雄一

 安全で快適な舗装を提供するためには、高度の耐久性、付加機能を有する舗装の開発や地域特性に応じた合理的な設計が望まれる。そのためには、気象・土質・交通条件の多様性を考慮していく必要がある。
 10年度は、新基準調査のたわみ測定結果の逆解析を行って舗装各層の弾性係数を求めて構造評価を行うとともに、アスファルト混合物層の弾性係数の温度補正式や路床の弾性係数とたわみの関連性等について検討を行った。その結果、現行のアスファルト混合物層の弾性係数の温度補正式は妥当であること、たわみデータから路床の弾性係数を推定することが可能であることが確認された。


舗装マネージメントシステムに関する試験調査

研究期間:平9〜平12
担当者 :池田拓哉、東嶋 奈緒子、谷口 聡、小森谷 一志

 舗装を合理的に管理するには、舗装の状況を総合的に評価し、効率的な予算配分を行う補修計画支援システムである舗装マネージメントシステム(以下、PMS)が必要である。本課題は、従来の道路管理者の立場で構築されたPMSに、道路利用者、沿道環境の評価を付加するものであり、路面性状と各種影響要因の関係を明らかにし、道路利用者および沿道環境にかかる費用の定量化を図る。
 10年度は、道路利用者、沿道環境の評価手法を提案することを目的に、乗心地、燃費、騒音と平坦性(以下、σ3m)の関係を調査した。その結果、乗心地と燃費はσ3mの影響を受けるが、騒音についてはσ3mとの関係はあまり見られなかった。


経済性に優れた新しい橋梁の走行面に関する試験調査(その1)

研究期間:平10〜平12
担当者 :池田 拓哉、久保 和幸、池田雄一

 橋梁建設のコスト縮減のために構造物全体の死荷重を軽減させるとともに、25トン車対応等による床版の上面増厚の際の建築限界の問題等を解決する方策として橋面上の舗装の薄層化を検討する必要がある。従来の橋面舗装の機能を保持した上で舗装厚を薄くする技術として砕石マトリックスアスファルト(SMA)による一層施工を取り上げ、グースアスファルトや密粒度アスファルト混合物などの既存の混合物と物性の比較を行い、SMAの橋面舗装技術としての妥当性を検証した。


改質アスファルトの再生利用に関する試験調査(その1)
 (1)アスファルト混合物の促進劣化手法の検討

研究期間:平10〜平14
担当者 :池田拓哉、木村 慎

 現在、室内実験において再生混合物を作製する方法としては次のような方法が用いられている。
 1)混合物を作製し、乾燥炉などで加熱劣化する。
 2)バインダ単体を劣化した後に供試体を作製する。(RTFOT、TFOT、PAV)
 しかし、1)では供用中の劣化の主要因と考えられる酸素との化学反応を再現することが困難である。2)の方法では繰返し再生においてバインダの変質が懸念されるとともに、改質アスファルトの完全な回収が困難である。
 本研究では、3)大型の加圧容器を用いてアスファルト混合物の加圧促進劣化(以下、混合物PAV)を行い、劣化後のバインダの性状と現場採取コアから回収したバインダの性状との比較を行った。その結果、混合物PAVは現場での劣化状況をほぼ再現できることを確認できた。


コンクリート舗装の設計施工の合理化に関する試験調査(その2)

研究期間:平7〜平10
担当者 :池田拓哉、木村 慎、小森谷 一志

 セメントコンクリート舗装(以下、コンクリート舗装)は、アスファルト舗装より高い耐久性を有すると考えられているが、施工後数日間の養生を要すること、鋼材(鉄網およびダウエルバー等)の設置作業を要すること等の短所があるため、アスファルト舗装ほど広く普及していないというのが現状である。しかし、コンクリート舗装は舗装の長寿命化を図るために必要な構造の要素であるため、1)輪荷重応力、2)温度応力、3)疲労曲線、4)走行頻度分布、5)ダウエルバー設置条件等について検討を行い、現行設計法の妥当性を確認するとともに、合理化への一つの方策を提案した。


舗装データバンクシステム改良に関する調査

研究期間:平10
担当者 :池田拓哉、東嶋 奈緒子

 7年度に構築された舗装データバンクシステムは、舗装の維持管理を合理的かつ効果的に行うために構築されたシステムであり、これまでの舗装データ管理に用いていた舗装データバンク検索システム、補修の需要予測、投資効果の算定等を行う長期補修計画システム、補修箇所、工法の選定を行う短期補修計画システムを統合し、道路管理者を支援することを目的としている。また、システムの構築にともない「舗装データバンクシステム管理・運用委員会」が設置され、システムの改善方針や管理・運用方法等が検討された。
 本課題では、この委員会の中で検討されたシステム改善方針に従い、舗装データバンクシステムの操作性向上を主目的に、舗装データバンクシステムの機能改良を行った。